少し前の話ですけど、NegiccoのNAO☆ちゃんが結婚を発表しましたね。しかも結婚後もアイドルは続けると言っている。最初にニュースで見たとき、僕は「大丈夫か?」って思ったんです。だってAKB48や乃木坂46でも、恋愛がバレて解雇になったりペナルティを受けたり散々してきたじゃないですか。ところがNAO☆ちゃんの場合、蓋を開けてみたら祝福の声ばかり。この件がアイドル界に一石を投じたことは間違いないでしょうね。
で、そうなると「須藤凜々花ちゃんとの差は何?」という話になる。一方は戦犯扱い、一方は祝福の嵐。いろいろ考えさせられますよ。
そもそも48グループとNegiccoでは立ち位置が違いすぎますからね。夜の仕事でたとえると、AKB48は歌舞伎町のキャバクラ。
Negicco以外だと、解散したけどPASSPO☆も恋愛が許されたと思う。だけど同じくらいのキャリアであるスパガ(SUPER☆GiRLS)は絶対ダメ。AKB48の中でも、たなみん(田名部生来)は許されても、ゆきりん(柏木由紀)はダメ(笑)。たぶん年齢の問題じゃないんだろうなぁ。
「もし自分がプロデューサーや経営者の立場だったら……」と考えると、間違いなく恋愛禁止にするでしょうね。少なくてもデビュー後3年は恋愛NGを徹底させます。だって、その子は自分でなりたいと手を挙げてアイドルを始めたわけじゃないですか。
もしその子が「疑似恋愛に代わるキャッチーなこと」をファンに提供できるのなら、話は変わってくるんです。それこそNegiccoがいい例ですけどね。Negiccoは楽曲だったり、キャラだったり、生き様でファンを引き付けているわけですから。
なにも恋愛・結婚・出産を一生するなっていう話じゃないんですよ。一生するなっていうのは、確かにいびつです。人間として健全じゃない。抑えつけたところで、どこかで気持ちが溢れてきちゃうでしょうし。でも寿命が短いとされる女性アイドルだからこそ、何年間か我慢するのはアリだと僕は思うんです。
そもそも恋愛禁止に関しては、功罪の「功」の部分がおざなりにされすぎているんですよ。
たとえば役者の世界では、本当の狂人には狂人役が務まらないと言われています。怒りの演技も同様で、いつもブチ切れているサイコパスは逆に演技に説得力がなくなる。それよりは「どうしたら観る人が怖がるか?」「どうしたらイッちゃっているように映るか?」と熟考したうえで、あえて目線を外してから、ギロリと睨んでみる……とかね。そのとき初めて演技が現実を超えるんです。想像力や妄想力が、演技という表現を一段上の段階に持っていくんです。
いいですか? アイドルは自分が恋愛できないにもかかわらず、「あなたが好き」みたいな歌詞に感情を込めて歌っていますよね。そこには妄想力とか情念が必ず作用してくる。だからこそ、ファンの胸にも響くものができてくるんです。
親から放課後は「毎日、5時間勉強しなさい」と言われたら、残された1時間でどうやって遊ぼうか、誰だって必死で工夫するはず。そこで濃密な1時間の遊び時間が生まれる。親だって子供を愛するからこそ、「ゲームは1時間までよ」とか言うわけでね。決して意地悪したいわけじゃない。僕があえてアイドルちゃんに恋愛禁止を言い渡すのは、彼女たちの成長を促したいからなんですよォ! ……えっ、綺麗事すぎますかね?
(『月刊エンタメ』2019年6月号掲載)
クロちゃんの「このアイドルに注目!」
アップアップガールズ(仮)
ももクロ(ももいろクローバーZ)がドカーンとブレイクしたとき、似ていると思ったのがCheeky Paradeとアプガでした。チキパは近未来的な雰囲気で華もあったけど、アプガはどこまでも泥臭くてねぇ(笑)。でも、ももクロって泥臭い要素が強いですから。スターダストのどのグループより、アプガがももクロのイムズを体現している。今はメンバーが2人減ったけど、そのことで持ち前の負けん気がさらに剥き出しになった気がします。
▽クロちゃん
お笑いトリオ安田大サーカスの一員。1976年12月10日生まれ。 広島県出身。