実に年間200日以上もロケに出る、隠れた超売れっ子芸人であるWエンジンのチャンカワイ初の著書「神様が惚れてまう48のポイント~幸せの見つけ方はロケと神社が教えてくれました~」(ぴあ)が発売中だ。かつてはコンプレックスの塊だったというチャンが半生を振り返り、本書のテーマである「幸せ」の掴み方を語ったところ、そこには誰もが実践できる「気づき」があった。
(前後編の前編)

僕は本当に学生時代はモジモジ男で。女の人とは奥手で話もできませんでした。でも心の奥ではキャーキャー言われてる人がうらやましくて、そういう立場になりたかった。「どうすればいいんだ?」と思っていた時に出会ったのがお笑いの世界でした。

ちょうど千原兄弟さんやケンドーコバヤシさんたちが心斎橋二丁目劇場っていうところで大暴れしていた時期です。自分のコンプレックスすらも舞台でさらけ出して、ガンガン笑いを取っていた。「こんなことができるんや!」って思いましたね。それで僕も芸人になりたい、と。実際になってみると「人前に立って笑ってもらうのはこんなに気持ちいいんだ」と思いましたね。でも結局、芸人の世界でもモテるのはかっこいい人だけ(苦笑)。誰もがモテるわけじゃないことを知りました。

もっと売れたら、世間に認知されたら変わるかもしれない。
そう思って頑張りながらも人気は全然出ませんでした。あの「進ぬ!電波少年」(日本テレビ系)にも、「電波少年的インターポール」と「電波少年的アンコールワットへの道の舗装」という企画でガッツリ出させてもらったんですけど、それでも生活は全く変わりません。東京に出て来て8年間ぐらいは、芸人としての出じろはライブだけで、出待ちも1人もいない。そんな感じでしたね。

ひとつの大きなきっかけは、事務所の先輩のネプチューン名倉潤さんやTIMさんたちが、鳴かず飛ばずだった僕らを、寄ってたかってネタから何から改造してくれたことでした。コンビ名も「宴人(えんじん)」から「Wエンジン」に改名。そしたらほぼ同時期に「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)の話が来て、たまたま番宣で出演されていた佐藤浩市さんが、僕らの「惚れてまうやろー!」のネタをレッドカーペット賞に選んでくださった。そこから一気に仕事が増えて、芸人としてご飯が食べられるようになりました。自分たちのこだわりを持ち続けることも大事ですけど、誰かのアドバイスに従うこともこんなに素敵な結果を招くんやな、と気づかされましたね。

芸人としてやっと認められた、そんな感覚になったのも、「レッドカーペット」の放送後でした。街行く人に「チャンさん、ありがとうございます!」って握手を求められたんです。相手の人は太っていてメガネをかけて、僕とそっくりな男性でした。
なんでしょう、僕がその人にとって、まるで尾崎豊であるかのように接してくれるんです(笑)。おそらく僕と同じくモテないタイプで、「惚れてまうやろー!」がめっちゃ刺さったんですよね。「同じ境遇の人がいるんや。頑張らなあかんな」って、使命感みたいなものを背負わせてくれた感じがしました。そういう風に、お笑いに関わることが、僕のガチガチのコンプレックスを、少しずつ溶かしていってくれた感じはあります。

海外ロケで、火山の噴火口でドロドロと吹き出るマグマを見た経験も、僕の人生観を変えてくれました。圧倒的な大自然の驚異を見ると、自分の悩みなんてめちゃめちゃちっぽけなものに感じるんですよ。例えば本でも書かせてもらいましたが、僕は神社仏閣がすごく好きで。でも昔の神社仏閣って、雷が落ちたことで焼けてなくなってしまったものって結構あるんです。

「人間が自然に負けることはめっちゃ多くない?」と。モテない恨みつらみだとか、自分が太っていることとか、そんなことよりも「人間って自然の中で生きることで精いっぱいだよな? 見た目のような小さいことでモジモジするのって必要ないんだな」という風な気持ちになっていきました。

何かに巡り合っていくことで見方が変わって、そうすれば悩んでいたことも解決したりする。
僕がお仕事としてやっている「ロケ」は、そういうモノや場所、考え方なんかを伝えていけるというか、僕が伝道師的な役割なのかもしれないな、という風に今は思っていますね。

【後編はこちらから】チャンカワイが語る晩婚のススメ「出会った瞬間に結婚を意識。辛い時代が長いほど幸せが大きい」
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