1歳から芸能活動を始め、『トットちゃん! 』や『大豆田とわ子と三人の元夫』など、話題の作品に多数出演。現在、高校1年生でNHK大河ドラマ『どうする家康』にも出演している豊嶋花
2月23日(木・祝)よりNetflix全世界配信&全国劇場にて公開される映画『ちひろさん』で、元風俗嬢であるちひろさん(有村架純)と出会い、少しずつ成長する女子高生を演じる彼女に話を伺った(前後編の前編)。

【写真】『ちひろさん』『どうする家康』出演で話題の豊嶋花、撮り下ろしカット【6点】

──最新出演映画『ちひろさん』はコミックが原作ですが、事前に原作を読まれたそうですね。

豊嶋 コミカルな絵柄なのに、内容はシリアスという印象で。ちひろさんに出会った周りの人たちが、心を開くことによって、徐々に変わっていく姿が素敵でした。今回、私が演じたオカジも、ちひろさんに影響を受けていきますが、学校ではちゃんと自分の芯を持っていて、周りに流されないところが魅力的なキャラクターだなと。初めて脚本を読んだ時も、漫画の世界観が見事に表現されていて、映像化が楽しみでした。

──普段からコミックは読むほうですか?

豊嶋 かなり読みます。中でも恋愛物が大好きで、今は『薫る花は凛と咲く』という作品にキュンキュンしすぎるぐらいハマっています。もしも実写化するならエキストラでもいいから出させていただきたいぐらい(笑)。ミステリーも大好きで、サイコパスが出てくる『十字架のろくにん』も良かったです。あと普段はスマホなどで読むことが多いんですが、『東京喰種トーキョーグール』は本で買わなきゃダメでしょう! という使命感に駆られて、全巻揃えました。

──『ちひろさん』はNetflix作品ですが、動画配信は観ます?

豊嶋 アニメも映画もドラマも観ますね。
最近は友達にお勧めされて韓国の映画やドラマを観るようになりました。特に映画『ビューティー・インサイド』は惹き込まれました。毎日、目が覚めるたびに体や見た目がコロコロ変わっちゃう男性を描いた恋愛ドラマなんですけど、上野樹里さんも出演しています。

──オカジ役は、どのようにオファーがあったのでしょうか。

豊嶋 一度、今泉力哉監督、プロデューサーの方とお会いして、すぐにオファーがありました。初めて今泉監督とお会いした時は、独特な雰囲気の不思議な方だなと思いましたが、話してみると優しかったです。2度目に会ったのは、オカジと仲良くなる小学生・マコトを決めるオーディションで、私が相手役を務めたんです。5人ぐらい候補がいた中で、(嶋田)鉄太君が、めっちゃマコトでした。そのオーディションで、今泉監督と「みんな違うマコトで面白いですね」という話をした覚えがあります。

──オカジとマコトのやり取りは、まるで姉妹のような空気感でしたが、豊嶋さん自身、お子さんと接するのはいかがですか?

豊嶋 ちっちゃい子が好きなので、得意なほうだと思います。鉄太君は、マコトと似ていたので、休憩中に一緒に遊んでて楽しかったですし、あそこまで素を演技に出せるってすごいなと感心しました。

──オカジを演じる上で、どんなことを意識しましたか。


豊嶋 底抜けに明るい訳でもないし、かといってめちゃめちゃ暗い訳でもないので、絶妙なラインを今泉監督と話し合って役作りをしました。

──オカジに共通する部分、共感する部分はありましたか?

豊嶋 私自身、良い影響は進んで受けよう、悪い影響はシャットアウト! みたいなところは似ているかもしれません。あと噂話ばかりしてる子が苦手で、自分もそういうことは言わないってところはオカジと一緒です。ただオカジは友達に本音を言えないけど、私は自分の思ったことは言うほうですし、クラスでも明るいタイプなので、そこは違いますね。

──ちひろさんを演じた有村架純さんと初めてお会いしたタイミングは?

豊嶋 クランクイン前に一度本読みがあったので、その時にお会いしました。最初はお話させていただく機会が少なかったので、ミステリアスな方なのかなという印象があったんですけど、有村さんから「普段何してるの?」みたいな感じで話しかけてくださって、気さくで素敵な方でした。それが、ちひろさんに似ていて、撮影が進むにつれて、有村さんがちひろさんにしか見えなくなって。ちひろさんは自由奔放なんだけど、かといって誰に迷惑をかけることもなく素敵な生き方をされていますが、それが有村さんそのものと思えてくるんです。それぐらい役にハマっていたんですよね。

──今泉監督の演出はいかがでしたか?

豊嶋 映像を撮るというよりも、リアルを映し出す、リアルを切り取るのが上手な監督さんで、本当にそこにちひろさんとオカジとマコトが存在していて、それをちょっとカメラで撮ってみた、みたいな。もちろん撮影現場は緊張感があるんですけど、作品はそう見えないので、さすがだなと思いました。今回はアドリブのシーンも多くて、だからこそリアルになるのかなと感じました。
あと今泉監督はモニターの前ではなくて、役者さんの近くにいて、何かあった時にすぐ駆け寄ってくださるんです。その時も指示というよりは、相談みたいな感じで。「こう演じてください」ではなく、「こういうシーンにしたいけどどう?」みたいな言い方なんです。そのためにどうするかは役者自身で考えるんですよね。

──アドリブも大変ですよね。

豊嶋 大変でしたね。でも鉄太君が素直な子なので、マコトとのシーンは自然と言葉が出てくるんです。ただ本番で何度か自分のことを「鉄」と言っちゃって、NGを出すことがありました(笑)。

──それぐらい自然な演技だったってことですね。今泉組の現場はどんな雰囲気でしたか?

豊嶋 和やかで普段から明るくて、みなさん優しかったです。特に印象に残っているのが、オカジが焼きそばを食べながら泣くシーンがあって。すぐに私が泣けなくて、もう一回本番をやることになったんです。
その時に助監督さんが「大丈夫だよ。みんなオカジの味方だからね」と言ってくれたんですよ。それでポンとプレッシャーから解放されて、すぐに泣くことができて。改めて、すごくいい現場に出会えたなと思いました。

──特に印象的なシーンを一つ挙げていただけますか。

豊嶋 ちひろさんとオカジが海で話すシーンです。あの日は風が強くて、私がクラゲに刺されたりもして(笑)。大変なシーンだったんですけど、有村さんのすごさを目の当たりにしました。同性でも惚れちゃうぐらい素敵なので、ぜひ注目してほしいですね。原作にもあるシーンですが、事前に原作を読み込んで、なるべく漫画の世界観に近づけるように演じました。

──改めて『ちひろさん』の見所をお聞かせください。

豊嶋 ちひろさんという一人の女性が、周りの人の成長を促します。
本当に存在するのかな? って思うようなキャラクターですけど、リアルというか。有村さんが演じると、いそうでいない、いなさそうでいるというラインが絶妙なんです。ちひろさんは誰にとっても勇気を与えてくれる存在なので、たとえば自分にオカジを当てはめるとか、それぞれの視点で観ていただくのも面白いと思います。

【後編はこちら】大河『どうする家康』出演で話題の高1女優・豊嶋花「目標は日本アカデミー賞の新人俳優賞」
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