【写真】BreakingDownについて語る瓜田純士【8点】
「“最弱” 10人ニキが“おでんツンツン男”に奇跡の初勝利」「“バカの救済”を標榜する東大相撲部主将が壮絶KO負け」「名物男・こめおをRIZINファイター・YUSHIが担架送りに」「疑惑の判定に“ミスター・アウトサイダー”啓之輔の怒り爆発」「元K-1王者の安保瑠輝也がK-1レジェンドのシリル・アビディを圧倒」など、今大会でも多くのドラマが誕生。新社長に就任した朝倉未来は海外展開も示唆するなど、さらなる飛躍を誓っている。
今や熱心な格闘技ファンだけでなく、小中学生からOLまでもが熱狂するBreakingDown。社会現象と呼べるブームは、一体、なぜ生まれたのか? 自身もBreakingDown7でバン仲村との10年越しの因縁対決を制し、観客や視聴者に大いなる感動を与えた“アウトローのカリスマ”瓜田純士が徹底解説してくれた。
「このブームは複数の要因によって成り立っている。その中で一番大きなキーワードは“メジャー感”になります。今はBreakingDownが流行っているものだから、触発されてケンカバトルロワイヤルやバトルミリオネアといった似たような大会が出てきているじゃないですか。でも正直、どこも苦戦すると思いますね。THE OUTSIDERで地下格闘技ブームが起こったときも、他の団体が出てきたけれど結局はTHE OUTSIDERの独走状態でしたし。
これはなぜかと言うと、不良は一軍志向が強いから。こぼれ組みたいなところでトップに立っても満足できないんですよ。しかも運営しているのが前田日明や朝倉未来というアイコニックな存在である点も説得力に繋がっている。
さすがにアウトロー界隈きっての論客と呼ばれるだけあって、理路整然と人気の秘密を分析する瓜田。ならばと、さらに踏み込んで不良が注目される背景についても語ってもらった。近年、実社会では暴対法とコンプライアンスによって暴力団が締め出されている。不良カルチャー自体が、若者にとって憧れの対象ではなくなっているようにも思えるのだが……。
「『東京卍リベンジャーズ』(著・和久井健/講談社)のヒットを見てもわかるように、ヤンキーカルチャーというのは何周だって回ってくるもの。そのループに運よく重なった部分はあるかもしれません。ただしBreakingDownが本当に不良の大会なのか、そこに関しては個人的に少し疑問符を持っています」
たしかに出場選手は刑務所帰りのアウトローなどだけでなく、炎上YouTuber、ストリート系ラッパー、経営者、キャバクラ嬢、元セクシー女優など多岐に渡っている。一癖も二癖もある連中であることには違いないが、一括りに「不良」と切り捨てるのは暴論かもしれない。
「前々回のBreakingDown6ではBreakingDown軍団とTHE OUTSIDER軍団の対抗戦が行われました。10年以上前にTHE OUTSIDERに出ていた奴らだって、すでに今は家族を持っていたり、マイホームの住宅ローンを払っていたりしてもおかしくない年齢。俺自身、完全に落ち着いちゃっていますしね。
とかく危険なイメージが付きまとうBreakingDownだが、大会に出場できる時点で運営サイドの身体検査は済ませたという見方はできる。地上波放送ほどではないにせよ、ABEMAの人気コンテンツである以上、関係者が慎重になるのは当然の話だ。
「スポンサーや銀行筋の意向も働くだろうし、各種反社勢力の大運動会みたいな真似は絶対にできない。たまに出場者でトラブルを起こす奴もいるけど、そんなのは問題レベルとしては微々たるもの。昔の地下格とかに比べたら絶対的な安全圏にいますから。『こいつら、どうせ何かしら問題を起こして消滅する』とかよく言われますが、意外にその点は心配することないんじゃないかと」
そんなことよりもBreakingDownが大ブレイクした過程において、見落とされがちだが重要なのは“ルール問題”だと瓜田は指摘する。基本は1分間で、立ち技のキックボクシングルール。このことが血気盛んな若者の闘志に火をつけたというのである。
「誓ってもいいけど、もし3分間だったらこんなに人気は出なかった。それは観る側が退屈するからではなくて、出る側のモチベーションの話です。ろくに格闘技経験のない連中にとって、3分ずっと動き続けるって拷問ですからね。でも『60秒なら、俺でもいけるんじゃね?』ということで、応募が殺到したのでしょう。
同様に組技・寝技がないことも追い風になった。実際の街のケンカって、殴り合いよりは組み合いの中で勝負が決まるものなんですよ。それはケンカ慣れしている奴なら常識。たとえば居酒屋とかで誰かと揉めたとき、酒が入っていたら相手がボクシング経験者であっても『上等じゃ、オラ!』って殴りかかるかもしれない。だけど相手の耳がカリフラワー状態に湧いていたり、柔道で国体に行ったとかいう話が出てくると、急激に酔いも醒めるはずです」
さて、今後のBreakingDownはどこまで大きくなるのだろうか? その勢いはとどまることを知らず、我が世の春を謳歌しているようにも感じるが、瓜田は意外にも「運営は難しい舵取りを迫られている」と見ている。
「海外に活路を見出そうとしているようだけど、相手が韓国人とか中国人だと見た目が似ていて“国別対抗戦”という色合いが薄くなる。プロ選手も参戦し始めたけど、競技化が進むと、オーディションの丁々発止を含めたBreakingDown本来の面白さが損なわれる。『ガチンコファイトクラブ』でいえば、今のBreakingDownは4期生の段階。梅宮(哲)のキャラに魅力があったから引っ張ることができたけど、このまま同じことをやってもダメじゃないかという感じはしますね」
仕掛人が朝倉未来でABEMA放送されるというメジャー感、昔から日本に深く息づくヤンキー文化、「1分決着の立ち技ルール」という敷居の低さ……様々なファクターが重なってBreakingDownは人気爆発した。最近は話題作りを目的とするインフルエンサーの出場も増えてきたが、瓜田自身はこうした傾向に警鐘を鳴らす。
「結局、大事なのは緊張感。『あいつ、ちょっとマジなんじゃないの?』と視聴者に思わせることが求められるわけです。
味わったら忘れられないBreakingDownという名の劇薬。その危険な香りに日本はますます浸食されていきそうだ。
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