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本作はただ単に事件が起きて犯人を捕まえる、という構成ではない。『古畑任三郎』(フジテレビ系)のように冒頭に犯人が事件を起こす様子が映されており、視聴者としては“犯人捜し”以外の謎解きを楽しむ仕様になっている。それも突きつけられる謎は各話で異なっており、2話では「佐柄美幸(宮澤エマ)はどのようにしてアリバイを作ったのか」、3話では「椎垣久仁臣(佐々木蔵之介)が毒殺した宇部祥宏(浅利陽介)の不振な行動」など多種多様。犯人捜しではない、それ以外の謎が解き明かされていく展開は、王道のミステリー作品とはまた違ったカタルシスを得られる。
また、ミステリー作品はどうしても複数の登場人物の言動に目を光らせる必要があり、謎も次から次へと出てくるため頭がこんがらがりやすい。だが、風間が「何が解くべき謎なのか?」を新人刑事、もとい視聴者に提示してくれるため、置いてけぼりになることもない。加えて、風間が新人刑事に「仕留められるか?」と確認するシーンを見ると、風間の低音と「仕留められるか?」という言葉の響きも相まって、視聴者としても推理しなければいけないような気持ちになり、作品の世界にどっぷりつかることができる。
犯人が序盤にわかる、というメリットは他にもある。それは犯人の日常にもスポットライトが当たるため、ミステリーだけではなくヒューマンドラマとしても楽しむことができる点だ。1話では妻をひき逃げして殺した男を銃殺した益野紳祐(市原隼人)、2話では息子が不登校になっていることに取り合ってくれない担任教師を撲殺した美幸など、各犯人の視点でも描かれている。
そのため、殺人は決して許されない行為ではあるが、やむにやまれぬ事情があっての犯行だったことが伝わり、犯人と自分を重ねることも可能。その一方で、各話の犯人は基本的に同情できる部分を持ているが、3話の椎垣久は自身の昇進のために宇部を殺す、という身勝手極まりないもの。
スポットライトが当たるのは犯人だけではなく新人刑事も同じ。1~2話は瓜原潤史(赤楚衛二)、3~4話は隼田聖子(新垣結衣)が新人刑事として風間とバディを組むことになるが、事件を通しながら、風間の厳しい指導を受けながら、それぞれの新人刑事が抱える過去と向き合い克服して成長する姿は心に響く。
特に4話で見せた聖子の吐露は印象的。聖子は犯人である萱場千寿留(生見愛瑠)が娘に虐待している可能性を追求することに躊躇していた理由として、「娘がうるさくて。朝だって早く起こそうとする。『疲れてる』っていうと泣き出す。泣かれると頭が痛くなって。『静かにしてくれるなら』って…」と元夫が娘を虐待していたにもかかわらず、見て見ぬふりをした過去を告白する。
3話では聖子と娘は仲良し親子に見えていただけにそのギャップだけでなく、「うるさくて」「泣かれると頭が痛くなって」というシンプルではありながらも鋭利な言葉に、新垣の演技力との相乗効果もあり、一気に聖子という存在を身近に感じられた。
だからこそ、4話ラストに風間が聖子に送った「子育てしながら警察で働く者として意見書をまとめてくれ。少年係に戻ったら君にはやることは山積みだ。
そして、5話ではついに遠野章宏(北村匠海)が登場する。遠野と風間に待ち受ける未来は『教場II』のラストシーンで描かれており、それ思うと苦しさがこみあげてくるが、ミステリーだけでなくヒューマンドラマとしてもここから一気にギアがあるだろう。ますます楽しみに放送を待ちたい。
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