フィクションにおいて様々な描かれ方をされてきた武将・織田信長。モチーフとして極めて魅力的な武将で、一向一揆を焼き討ちで解決したような残虐性や、海外にも目を向ける柔軟な思想、「楽市・楽座」をはじめとする革新的な政策、鉄砲隊の運用、謎に満ちた最期など、脚本家がどこにスポットを当てるかによって多様なストーリーを構築できる。
現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』では、“ドSな信長”が描かれているようだ。

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同作で信長を演じるのは、元V6の俳優・岡田准一。主人公の徳川家康(松本潤)に無理難題を押し付けてくる役どころで、ワイルドなパワハラ上司といった印象だ。

序盤で視聴者を湧かせたのは、なんと言っても家康を「俺の白兎」と呼ぶシーンだろう。ほかにも幼少期の家康に「食ってやろうか」と言い放ったり、浅井討伐を躊躇する家康に「耳カプ」をしたりと、まるで乙女ゲームに出てくるドSキャラのような振る舞いが話題を呼んでいた。

同ドラマの脚本家・古沢良太氏が手掛けた信長といえば、今年1月に公開された映画『レジェンド&バタフライ』の信長も印象的。
こちらは木村拓哉が演じる信長で、妻の濃姫(綾瀬はるか)から見た「大うつけ」な一面にスポットが当てられている。

映画の中で描かれていたのは、飲めない酒を飲んで吐いたり、弱音を吐いたり、濃姫を討とうとしたら返り討ちに遭ったりする“格好ばかりの信長”。岡田信長と方向性がずいぶん違うが、キムタク信長もこれまでの“信長像”とは一風変わったキャラクターだった。

明智光秀を描いた大河ドラマ麒麟がくる』(NHK、以下同)にも、当然信長は登場する。演じたのは俳優・染谷将太で、「認められたい」「みんなから褒められたい」といった承認欲求で天下統一を目指す、“承認欲求モンスター”と言えるような人物像だった。歴代の信長と比べても、『麒麟がくる』の信長が一番現代的かもしれない。


他にも2002年の大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語』で反町隆史が演じた「で、あるか」が口癖の信長や、2017年の『おんな城主 直虎』で市川海老蔵が演じた魔王っぽさ全開の信長など、作品や演者によっても個性は色々。

こうして見ると「誰の目線で語られる物語か」によっても、信長像は変わってくるのだろう。例えば『どうする家康』は家康目線の物語なので、信長があれほどドSパワハラ上司に見えるというだけで……。

さらによりファンタジー寄りの漫画・アニメ作品などにも目を向けると、平野耕太氏の『ドリフターズ』には常識的な苦労人ポジションと残虐な一面を併せ持つ信長の姿が描かれている。また、山田芳裕氏による『へうげもの』の信長は、圧倒的なカリスマとして描かれ、ピアスも付けていた。

ただ漫画やアニメ、ゲーム作品の信長となってくると、女体化したり犬になって転生したりとなんでもあり。
フィクションとはいえあまりにも便利に使われているため、信長のことを「フリー素材」と呼ぶ人もいるようだ。

一体どの信長が“実際の信長”に近いのだろうか。さすがに美少女ではないと思うのだが……。

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