先週6月28日、BABYMETALが横浜アリーナ公演で単独ライブを開催。YUIMETAL脱退後、2人+サポートダンサーを加えた新体制で活動していた彼女たちが、3人でステージに登場した。
その3人目はなんと元モーニング娘。で、SU-METALと広島アクターズスクールでしのぎを削った仲間・鞘師里保。突如現れ、各方面のアイドルファンをざわつかせた彼女は何者なのか? あまり知らない方のために、改めて鞘師里保のことを5つのキーワードとともに紹介する。

◆モーニング娘。久しぶりの新メンバー

鞘師がモーニング娘。に加入したのは2011年1月2日。当時はAKB48ももいろクローバーの登場でアイドル界が盛り上がっていたものの、モーニング娘。らハロプログループのメディアへの露出は減っていた。しかしコンスタントにライブを続け、圧倒的なパフォーマンス集団へと成長。それまでに比べて歌・ダンスともに難易度の高い楽曲が増えていた(ファンはこの時期を“プラチナ期”と呼んでいる)。

そこに約4年ぶりの新メンバーとして加入したのが、鞘師を含めた9期メンバーの4人。
このオーディションの模様はテレビ番組で放映されており、すでにそこで彼女は高いダンス力を見せていたため、ファンも納得のメンバー入りだった。

とはいえ、その頃の鞘師は小学6年生。当時のリーダー高橋愛とは10歳以上離れており、誰もがグループがどう変化していくのか、不安と期待が入り混じった思いで見守っていた。しかし、この加入がモーニング娘。を確実に変えていくのだった。

モーニング娘。9期メンバー加入後初のシングル『まじですかスカ!』(2011年4月6日発売)

◆グループを変容させたパフォーマンス力

度肝を抜かれたのは、加入して最初のライブツアーだった。現在も人気の楽曲「Moonlight night ~月夜の晩だよ~」を、鞘師は大先輩の高橋、新垣里沙と3人でパフォーマンス。幼さはあるものの、プラチナ期を牽引した2人と並び立ち、引けを取らない歌とダンスを堂々と披露。特にダンスでは、先輩たちを自分が引っ張ってやろうという気概すら感じた。これが新しい時代の幕開けだった。(このパフォーマンスはDVD&Blu-ray『モーニング娘。
コンサートツアー2011春 新創世記 ファンタジーDX ~9期メンを迎えて~』に収録)。

その後、2012年にリリースされた「恋愛ハンター」からはEDM路線の楽曲が増え、2013年の「Help me!!」からはフォーメーションダンスが話題に。ハロプロの要とも言える歌はもちろん、ダンスにも力を入れたパフォーマンスへとシフトしたことは、確実に鞘師の加入が大きい。彼女がグループに入ったことがその空気感だけでなく、楽曲のテイストまでをも変えていったのだった。

モーニング娘。52ndシングル『Help me!!』(2013年1月23日)この曲で3年8カ月ぶりにオリコンウィークリーランキング1位を獲得した。

◆絶対的エースへの成長

9期が加入した2011年から高橋、新垣、光井愛佳と卒業が続き、同時に10期メンバー4人が加入。1年ほどで、モーニング娘。はガラリと表情を変えた。2012年に道重さゆみがリーダーになった新体制では、田中れいなと鞘師がパフォーマンスを牽引する存在に。翌年の田中卒業後には、10期の石田亜佑美や11期・小田さくらとグループを支える、絶対的エースへと成長。当時、モーニング娘。
のパフォーマンスの中心には常に彼女がいたと言っても過言ではない。新しい時代へ大きな期待を背負わされたプレッシャーは、私たちが想像するよりも遥かに大きかっただろう。しかしキレのある動き、圧倒的なリズム感、そしてグループを広く知らしめたいという熱い想いでストイックに努力を続け、他を追随させない力をつけていった。

2012年から道重が卒業した2014年にかけて、モーニング娘。自体が改めて注目され、テレビ出演も増えていく。「ミュージックステーション」や「めちゃ×2 イケてるッ!」など、黄金期には当たり前に出演できていた番組へ久しぶりに出ることができたり、シングルの歴代1位獲得数の記録を伸ばしたりと、嬉しいトピックが続いていた。また、マツコ・デラックス松岡茉優ユースケ・サンタマリアなど著名人がモー娘。ファンを公言することが増えたのもこの頃だった。当時のリーダー・道重の功績も大きく讃えられ、彼女の卒業公演が4年ぶりに横浜アリーナで開催されたことも話題になった。

モーニング娘。54thシングル『愛の軍団』(2013年8月28日発売)

◆ステージとは裏腹な、普段の彼女

ステージ上での高いパフォーマンス力で評価される一方で、普段の彼女はメンバーからもファンからも“ポンコツ”と称されることが多い。
よくコケる、忘れ物が多い、食べものはこぼす、育てていたミントにカビを生やす、集合時間に遅刻して飛行機代5万円を自腹で払う……などなど、エピソードは尽きない。そして先輩はもちろん後輩にも人見知りを発揮し、なかなかありのままの自分を出せないこともあった。

しかし徐々に素の彼女が顔を出し、同期の譜久村聖の二の腕や後輩・石田の唇を愛するというちょっぴり変態な一面も見えてくる(モーニング娘。の公式Twitterにアップされた譜久村の写真集やポスターに頬をスリスリする写真では、鞘師の生き生きとした表情が見られる)。そんな等身大の彼女とエースとしてのギャップも、多くの人を惹きつける魅力のひとつだろう。

『冷たい風と片思い』(2015年12月29日)もともと鞘師のソロ曲として書き下ろされグループ全員で歌唱することになった曲。鞘師卒業シングルに収録。

◆3年3ヶ月ぶりの復活

加入当初からグループを引っ張ってきた鞘師は、英語とダンスの留学をするため、2015年10月29日に卒業を発表。約2ヶ月後の12月31日に、モーニング娘。から卒業した。その後、ときおりメンバーから彼女の名前を聞くことはあっても、姿を見ることはできなかった。彼女からのメッセージが久しぶりに届いたのはその3年後。
しかしそれは、事務所であるアップフロントプロモーションとの契約を終了した、という知らせ。果たして彼女がステージに立つ姿はいつ見られるのか、ファンはただただ待つしかなかった。

しかし今年1月、ハロー!プロジェクトが毎年行っているイベント・ひなフェスの3月30日公演に、辻希美加護亜依、新垣、道重と並んで、鞘師が出演することが発表された。公演当日、緊張と期待の入り混じった空気でみなが鞘師の登場を待つ。「Only you」のイントロで真っ赤な照明の中に彼女を見つけた瞬間、割れんばかりの歓声が上がった。その日3曲を披露したが、今後の活動について触れられることはなかった。

そして、6月28日。鞘師の名前が3ヶ月ぶりに話題になる。約4年ぶりに立った横浜アリーナのステージで、しかもBABYMETALのサポートダンサーとして。続けて、イギリス・グラストンベリーフェスティバルとブリクストンでの単独ライブにも出演。これまでのBABYMETALの系譜とは少し違うかもしれないが、鞘師らしい力強くアツいパフォーマンスを見せてくれた。

今後、3人のサポートダンサーから誰が選ばれるのかは分からないが、新たなステージでの活躍が見られたことはファンにとって喜ばしいこと。
BABYMETALファンにとって彼女の存在はまだ受け入れがたいかもしれないが、SU-METALにとってかつてのライバル、MOAMETALが愛する鈴木愛理と同じ元ハロプロメンバーということで、暖かく見守ってもらえたら嬉しい。

『ENDLESS SKY』(2015年12月29日)こちらも鞘師卒業シングル収録曲。鞘師を連想させる詞が切ない。
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