デビュー当時、“岡山の奇跡”と称され、数多くのCMに出演。瞬く間にお茶の間の人気者となった桜井日奈子
2016年に俳優デビューを果たすと、数多くのドラマや映画で主演を務め、2023年も数々の作品に出演している。6月16日(金)より公開の最新作『魔女の香水』で、香水の力で懸命に未来を切り開いていく女性を力強く演じた彼女に、これまでのキャリアや、本作の出演で得たものなどを語ってもらった。

【写真】『魔女の香水』で恵麻役を演じた桜井日奈子 撮り下ろし写真【6点】

──桜井さんは2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」で美少女グランプリを受賞して芸能界入りしましたが、もともと俳優志望ではなかったんですよね。

桜井 アナウンサーになりたいという夢はあったんですけど、漠然としていて。他にもキャビンアテンダントになりたいと言ってみたり、パン屋をやりたいと言ってみたり、目標が定まっていなかったんです。芸能活動も面白そうだから、とりあえずやってみるかみたいな感じで、深く考えていなかったから飛び込めたんでしょうね。

──俳優デビューは2016年に出演した舞台「それいゆ」ですが、いきなり舞台ってハードルが高いように思うんですが。

桜井 だいぶスパルタなマネージャーさんだったと思います(笑)。でも、お芝居が始まってしまうと、自分でストップをかけられない、やり直しがきかないという状況が良かったんでしょうね。一か月ぐらいかけて本を読み込んで毎日同じことをやって。映像よりも舞台のほうが役と深く向き合えますし、俳優デビューが舞台というのは正解だったと思います。初舞台でお芝居の面白さに気づいて、ラッキーなことにデビュー当時から良いお仕事をたくさんいただいて、いい作品にたくさん出会って、いろんな人たちとお芝居をして。
自分でチャンスを掴み取りに行ったというよりは、すごくラッキーが舞い込んできたみたいな、そういう感覚でした。

──最初からお芝居に抵抗感がなかったんですね。

桜井 もちろん最初は自分にできるんだろうかっていう大きな不安はあったんですけど、面白そうという気持ちも大きくて。バラエティーに出演するのも大好きなんですけど、何でも楽しいと思えるのが私の良いところかも知れないです。

──明確に、「この世界でやっていこう」と思ったタイミングってありますか?

桜井 このタイミングっていうのがないんですよね。お芝居を始めて何年か経っても、どこかでやらされてる感じみたいなものがあって。「やりたい!」という気持よりも先に作品が決まっていくというか、運が良すぎてしまったというか。でも、いつからかお芝居が自分のやりたいことに変わっていました。本当にやっていくうちになんですけど、がむしゃら感が出たのは最近のことだと思います。

──やらされている感がなくなって、お芝居への向き合い方も変わりましたか?

桜井 だいぶ楽になりました。たとえば自分が思っていたような評価を得られなかった時に、やらされている感覚があるとすごく辛いんですよ。自分が納得してやってるなら、どうすればよかったんだろうって、いろいろ考えられるんですけど、最初はそうじゃなかったからだいぶしんどかった。
常にどこかで辞めたいっていう感覚があったような気がします。今は、「こういうパターンもあるんです」「これもできるんです」って、ちょっと強気な自分がいるというか。そういう心持ちで今回の映画『魔女の香水』にも挑みました。宮武由衣監督も提案を受け入れてくださる方だったので、現場でも自分の意見を、どんどん言わせていただきました。

──初めて『魔女の香水』の脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?

桜井 私が演じる若林恵麻が、香水の力で人生を切り開き、どんどん逞しくなって成長していくストーリーにわくわくしました。実年齢よりも上の役を演じることが初めてだったので、大丈夫かなっていう不安もありつつ、その振り幅をどう演じようかと考えながら脚本を読んでいきました。

──桜井さんは恵麻のどういうところに共感しましたか。

桜井 前半に「自分の足で立って生きていける人になりたい」というセリフが出てくるんですけど、不安でどうしていいか分からないながらも、その言葉が恵麻を突き動かしていたと思うんです。私も何も持ってない状態から、何かになりたいという思いだけで、この業界に飛び込んだから一緒だなって感じましたし、デビュー当時の私と重なったところもありました。

──恵麻は、「魔女さん」と呼ばれる香水商・白石弥生に導かれて、未来を切り開いていきますが、桜井さん自身、過去に魔女さんのような存在はいましたか?

桜井 デビュー当時のマネージャーさんですね。10代で社会経験がない私に対して、業界でどうやってやっていけばいいのかを教えてくださって、厳しい言葉をたくさん言ってくださいました。オブラートに包まずに、ストレートに言うタイプのマネージャーさんだったので、たまに辛い時もありましたけど(笑)。
そのマネージャーさんがついていなかったら今の私は確実にないから、自分を導いてくれる人が身近にいると強いなって、この作品を通して改めて思いました。

──厳しい言葉を素直に受け止めていたんですか?

桜井 言われた時は「キーッ!」ってなっても、後で考えるとその通りなんですよ。言葉がストレート過ぎて、耐え切れなくなって、ひたすら泣くんですけど、落ち着いて考えると、ちゃんと理解できるんです。理不尽なことを言われている訳ではないから、乗り越えられるんですよね。母のようなマネージャーさんで特別な存在でした。

──そういう人と巡り合うにはどうすればいいと思いますか?

桜井 自分の足を引っ張る人とか、高め合えない人の側にはいるべきじゃないから、環境を変えるというのが大切なのかな。結局、誰かのせいにはできないし、自分で何がいいのかを判断していかないといけないじゃないですか。そのマネージャーさんが私についていてくださっていた時は、任せっきりだった面があるんですけど、担当が変わる時に、教えてもらったことを忘れないように、ちゃんとしなきゃと。ずっと私のことを見てくれているはずだから一人でも頑張らなきゃって、より責任を感じるようになりました。

【後編】桜井日奈子、共演して実感した黒木瞳の凄み「母性みたいなものを現場で感じるんです」

▽『魔女の香水』
6 月 16 日(金) TOHO シネマズ 日比谷 他
全国ロードショー
配給:アークエンタテインメント
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