【写真】体重150キロ、韓国ヘビー級からの刺客キム・ジェフン
選手や関係者の中からは「BreakingDownを格闘技だとは認めたくない」といった否定的な声が聞こえてくることもあるが、なぜ秋山は運営とタッグを組むことにしたのか? そこには韓国格闘技の置かれた状況を踏まえつつ、「スポーツで日韓の架け橋になりたい」という韓国をルーツに持つ男ならではの考えがあった。
──BreakingDownで韓国軍を率いることになった経緯から教えてください。
秋山 最初はBreakingDown7に特別審査員ということで呼ばれたんですよ。実際に試合を観て可能性も感じましたし、韓国人選手が参加したら面白いんじゃないかということも提案しました。ちょうど朝倉未来くん自身も海外進出を考えているタイミングだったので、そのまま話を詰めていったんですね。僕が言ったのは「どうせやるなら1人~2人ではなく、団体対抗の日韓戦をやったほうが盛り上がるんじゃないですか」ということでした。
──話としては、秋山選手のほうから持ち掛けた格好?
秋山 そうなりますね。だけど未来くんたち運営サイドは韓国選手側のルートがないということで、「秋山さん、もしよかったら韓国人選手を繋ぐ役割をお願いできませんか?」という話になったんです。
──でも、それって骨の折れる作業じゃないんですか? BreakingDownが浸透していない国で、複数のジムに掛け合うということになりますよね。
秋山 おっしゃる通りです。たとえばロードFCなど、ひとつの団体を窓口にすれば、手っ取り早い話ではあるんですよ。
──BreakingDownは競技者としての強さだけでなく、キャラの濃さも求められますよね。
秋山 そこも重要なんです。バカみたいに強い選手を連れてきたところで、逆に盛り下がってしまう恐れもありますし。エンタメ枠の中に入っても存在感が出せる……要するに華がある選手ですよね。頭の回転がよくて、トークも立つ選手を用意しないといけなかった。
──ところで韓国の格闘技シーンって、現在はどれくらい盛り上がっているんですか?
秋山 韓国で最初に格闘技が大きく盛り上がったのは、チェ・ホンマン選手がK-1に出ていた頃なんです。だいぶ前の話ですよね。そのあとはUFCがブームになったんですけど、途中からテレビの放送がPPVに変わりまして。
──何があったんですか?
秋山 これは私見なんですけど、あまりにもエンタメ要素を入れすぎた。それで大会の頻度も徐々に減っていったんですよ。それで韓国人選手の多くは、UFCなりONEなり海外の大会を目指すようになっていきました。その中ではUFCで活躍するジョン・チャンソン選手が、韓国だとコナー・マクレガーみたいなカリスマ的人気を誇っています。もともと韓国人も格闘技自体は好きなんですよ。ただ気軽に観ることのできる環境がないものだから、どうしてもマニアックなジャンルにとどまっていた。もっとも最近はUFCが再び無料で観られるようなったり、BLACK COMBATという新興団体が出てきたり、少しずつ状況は改善されつつありますが……。
──日本を目指すという選手は?
秋山 RIZINを目指しているトップ選手はほぼ皆無だと思いますね。ビッグ・マネーを稼ぐつもりなら、やっぱりアメリカの大会かONEということになるので。
──会見のとき、秋山選手は「韓国人ファイターは徴兵を経験しているのでタフ」とコメントもしていました。
秋山 僕自身は兵役を経験しているわけではないのですが、やっぱり死ぬほど苦しい場所であるのは間違いないんです。「2年ばかり学校に行って卒業しました」という話とは全然違う。いまだに韓国は休戦状態ですからね。戦争が終わっていない中、紛争地帯の最前線でどうやって相手を倒すかということを具体的に教わるわけで。生半可な気持ちでは絶対に乗り切れないし、フィジカル面はもちろんだけど、メンタルも根本から鍛えられることになります。だから戻ってくるときは、やっぱり全員がビシッとカッコよくなっていますからね。一本筋が通っているというか。
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