歴史ある第44回ABCお笑いグランプリはダブルヒガシの元に輝いた。

【写真】ABCお笑いグランプリ決勝で三つ巴の戦いを繰り広げる漫才師三組【5点】

ABCお笑いグランプリは朝日放送テレビ(ABCテレビ)が主催する賞レースで、芸歴10年以内のプロ芸人が出場資格を持つ。
若手芸人の登竜門となっており、近年でも霜降り明星、オズワルド、カベポスターが優勝を果たし、テレビへと活躍の場を広げている。

とりわけ今大会はレベルの高さが際立った。

M-1グランプリキングオブコント、R-1グランプリなど全国ネットの賞レース決勝出場経験を持っていたのは、12組中ヨネダ2000(M-1)とこたけ正義感(R-1)の2組のみ。大半の人々にとって無名と言って差し支えない芸人たちがしのぎを削ったが、新鮮かつ新しい笑いを提供してくれた。

Aブロックからは素敵じゃないかが審査員6名中4名の1位評価を受けてファイナルステージへと進出。相方の話に対して、ものまねや車庫入れなど通常ならばありえない“何か”をしながら相談を聞くという内容で、マイムの巧みさで笑いを誘っていき、「想像させてしまう(矢野兵藤・兵藤)」新しい漫才の形だった。

Bブロックからは結成6年目とは思えない上手さを見せた令和ロマンがファイナルステージへ。審査員を務めたハイヒール・リンゴも「まるで師匠のよう」とその漫才技術の高さに舌を巻いた。だが、初出場の22歳のピン芸人・友田オレも世の中に出来事について「どうにかできたはず」と歌い上げ、小さくないインパクトを残した。これで現役の早稲田大学4年生というのだから、その才能は特筆に値するだろう。

Cブロックでは、居酒屋のキャッチという仕事に対して「職業に貴賤あり」という独自の角度をつけた漫才ネタで圧倒した、ダブルヒガシがファイナルステージへの切符をつかんだ。優勝候補の一角であったヨネダ2000もM-1グランプリ2021敗者復活戦、M-1グランプリ2022決勝で与えた衝撃はそのままに、大声教室に通うという新たなネタを披露。
何が起きていたかは説明するのは困難なのだが、それでも次々と笑いを引き起こし、ヨネダワールドここにありを示した。

くしくもファイナルステージは漫才師による三つ巴の決戦に。トップバッターの令和ロマンが恋愛バラエティショーにおじさんが出演するというネタで共感に伴う笑いを誘えば、2番手のダブルヒガシは「誰も聴いていないラジオ」を2人で演じる漫才で爆笑をさらった。最後の素敵じゃないかは「ボタンを押し続ける」という意味について言い合うネタを披露し、かまいたちの山内健司に「1本目と全く違うタイプで勝負する心意気がいい。好きなネタでした」と言わしめた。

かくして今大会を制したのはダブルヒガシ。令和ロマンと671点で並んだが、ファーストステージの点数で上回り、悲願の初優勝を飾った。ダブルヒガシは3月にもytv漫才新人賞決定戦で優勝し、今年早くも2冠目を達成している。M-1グランプリでは6年連続準々決勝の壁に阻まれているが、2023年がブレイクスルーの一年となるかもしれない。

惜しくも2年連続の準優勝となった令和ロマンだが、ネタ2本とも言葉選びのセンスで笑わせつつ、大きな動きも織り交ぜてらしさを炸裂させた。ツッコミ・松井けむりの「俺がおじさんなばっかりに」のキラーフレーズは筆者だけでなく、多くの視聴者の脳裏にも刻まれたはずだ。

素敵じゃないかにしても従来の王道の漫才からは外れた形を1本目で示し、2本目はオーソドックスなしゃべくり漫才でコンビとしての幅を見せた。


3組とも非常にレベルが高く、今大会のファイナルステージはM-1グランプリのそれと比べても決して見劣りはしないもの。これまでの長い歴史と同様、次代のスターがここから生まれることは間違いない。

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