バラエティ番組ではドッキリをかけまくられ、ネットではなにかと炎上……と今一番バズッてる芸人クロちゃんが、大好きな「アイドル文化」について、お題に沿って語ります。今回のテーマは「テレビのバラエティ」。
バラエティはクロちゃんの主戦場であるからこそ、アイドルがバラエティで笑いを取る必要性についての持論を展開する。
ちょうどこの雑誌が出る頃に放送されるはずですけど、『AKBINGO!』(日本テレビ系)でおもいっきり暴れてきました。あの番組、本当に久しぶりなんですよね。

スタッフに聞いた話だと、僕が出るのは実に10年ぶりらしいですから。その頃は番組名も『AKB1じ59ふん!』で、3期生までしかいなかったし、当然のように今回のメンバーとは1人も被らなかった。

何しろ10年前のAKB48は、何もないところでメンバーが必死にもがいていましたからね。その後、グループが国民的な存在になってからオーディションを受けた今のメンバーは、温室育ちなんじゃないかと僕は思っていたんですよ。

で、蓋を開けてみると、確かにひ弱なところはあったんですけど、つついてみると10年前と同じく熱い気持ちを丸出しにする場面も目立った。僕、ちょっと感動しましたもん。「最近のAKB48は、初期に比べてメンバーがギラギラしていないからダメ」とか考えている古参の方は、ぜひ番組を観ていただきたいですね。若手メンバーの意識を僕が変えてやりましたよ! 少なくても一石を投じたことは間違いないです(ニヤリ)。

前置きが長くなりました。
今回はアイドルとバラエティの関係に踏み込んでいきたいんですけど、やっぱりこのジャンルではさしこ(指原莉乃)の存在が圧倒的なんですよ。彼女はアイドルとテレビの垣根をブチ壊したバケモノだと思う。

彼女の何がすごいかというと、まず物怖じしないところ。松本(人志)さん相手でもズケズケいけるあの勢い、他のアイドルで誰が真似できますか。それから自分のキャラが一切ブレないところも立派。アイドル村の住民だけじゃなく、広く世間に発信できる才能とセンスは舌を巻くしかないですね。

さしこはアイドルのあり方を根本的に変えちゃったんですよ。つまり歌やダンスでアイドルファンに支持されるより、大きく世の中を巻き込んで自己発信していくことがアイドルに求められる条件になった。たとえば松本伊代さんとか早見優さんが活躍した時代は、アイドルに面白さとかセルフプロデュース力なんて求められなかったはずなんです。

本来、アイドルって全員があみみ(菊地亜美)やももち(嗣永桃子)を目指すのも違う気もするんです。でも、ああいう感じでグイグイ前に出ないと目立つことができない。その結果、今のアイドルちゃんは面白いこと、気の利いたことを言おうと躍起になっているんですよね。


根本的な話として、ファンの前で喜ばれる面白さとテレビで求められる面白さは違う。お笑いの世界でも同じで、劇場で受ける芸人がテレビではいまいちというのはよくある話なんです。だからバラエティに出るときは、アイドルもテレビ用にシフトチェンジしなくてはいけない。

ところが、そうなると別の問題が出てくるんですよ。テレビ出演で知名度は上がっても、それがライブの集客力に結びつかないというジレンマ。

なぁぽん(浅川梨奈)なんかもグラビアやドラマでこれだけ活躍しているのに、それがなかなかスパガ(SUPER☆GiRLS)の動員に結びつかないと悩んでいたそうですから。そうすると、そもそも何のために外部仕事を頑張っているのか分からなくなりますよね。漠然とテレビに出たところで意味がないんですよ。

それでも有名になりたいというなら、自分たちのできることとできないことを見極めることが大事ですね。だってBiSHやBABYMETALがテレビでお笑い的なことをやったところで、本来のロック的な世界観が壊れちゃうだけですから。

それに今は世間にアピールする方法がテレビだけではない。たとえばYouTubeやインスタを使って美容のことを同性にアピールするとか、いくらでも可能性はあるわけです。


おかげさまで最近は僕もいろんな番組で呼んでもらえるようになりました。たまに取材で「成功の秘訣は?」とか聞かれるんですけど、やっていること自体は10年前から何ひとつ変わらないんですよ。でも、結果的にはブレなかったのがよかったのかもしれないな。もしくは社会が僕の魅力にようやく気がついたとか……。佐山サトル(※)と同じで、10年先を行く天才なのかも(笑)!?

(『月刊エンタメ』2019年9月号掲載)
※初代タイガーマスクとしてプロレス界で一世を風靡するも、あっさりその名誉を捨て、新しい格闘技・シューティング(現・修斗)をイチから立ち上げる。当時はなかなか周囲に理解されなかったものの、そのルールは現在のUFCの礎となっており、「10年先を行く天才」と呼ばれている。
クロちゃんの「このアイドルに注目!」
FES☆TIVE
「指原莉乃はアイドルのあり方を根本的に変えた」クロちゃんの考えるアイドルバラエティ論

「お祭りアイドルユニット」を標榜するくらいだから、とにかく元気いっぱいのパフォーマンスが一番のウリ。だけど最近はキラキラの王道アイドル風衣装も身につけて、胸キュン要素も増しているんですよ。彼女たちの曲を聴くと、日常の悩みも吹き飛びますね。……えっ? お前に悩みなんてあるのかって? 失礼な、僕だって悩むことくらいあります! たとえばアイドルの握手会に並び、緊張のあまり話せなくなったときとか(苦笑)。
▽クロちゃん
1976年12月10日生まれ、広島県出身。お笑いトリオ安田大サーカスの一員。
大のアイドル好きで、忙しい合間をぬって アイドルライブへと足を運ぶ。ドッキリ、炎上などのイメージが強いが、アイドルへの思いはピュア。
Twitter:@kurochan96wawa
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