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先日、「ENTAME next」で公開された、ももいろクローバーZ・佐々木彩夏インタビューは大きな反響をいただいた。
このインタビューの基になっているのは、6月24日に発売された『OVERTURE 019』に掲載されたもの。誌面の都合上、入りきらなかった部分を大幅に加筆。さらに冒頭部分には佐々木彩夏による表紙の「セルフ解説」も追加した(ちなみに6月23日に横浜アリーナで開催された佐々木彩夏のソロコンサート『AYAKANATION2019』では、会場限定のスペシャル表紙バージョンが販売されたが、アッという間に完売。こちらの表紙についても、本人がしっかりと言及している)。会場でも販売するということで、本人が「ネタバレになるような話は載せないほうがいいよね?」と気を遣っていた部分も、このweb版ではそのまま掲載しているので、かなり誌面とは読後感が違うと思う。
じつはこのインタビューの前後に、僕は佐々木彩夏へのソロインタビューを4つの媒体で担当させてもらっている。1カ月で4本なので、ほぼ週1ペースで話を聴いてきたことになる。ソロコンや8月の明治座での座長公演など、彼女が主役になるイベントが控えていたのでインタビューのオファーが相次いだのだろうが、さすがにここまで短期間にこれだけ多くの媒体用にソロインタビューをした経験は、過去にもちょっと記憶にない。
そして、その流れの中で驚かされた。
インタビューをはじめる前に、これはどのような媒体に掲載され、読者層はこんな感じです、という説明をするのだが、佐々木彩夏は瞬時にそれを理解し、その媒体に合った受け答えをしてくれるのだ。
簡単なように見えて、なかなかできることではない。しかも、媒体が違うと言っても、話を聴いているのはすべて僕なわけで、そこで毎回、毎回、頭を切り替えて、言葉を紡ぎ出すという作業は相当、大変なこと。普段からしっかりと考えて活動しているからこそ、すぐに言語化できるのだろうし、彼女の脳内にはいくつもの引き出しがあるということもインタビューを通じて、ものすごく実感した。
明治座にお邪魔してのインタビューでは、背筋をシャンと伸ばし、ものすごく丁寧な言葉遣いで話してくれた。公式パンフレットなど、ほぼモノノフしか読まないような媒体では、ものすごくフランクに話してくれるのだが、事前に「これは明治座での公演に向けて、モノノフだけではなく、一般層にも広く読んでもらいたいインタビューです」と伝えたら、姿勢までが変わった。
これはつまり、誌面やwebの向こう側にいる読者の姿がしっかり見えていて、彼女は読者に直接、語りかけるように話している、ということなのだろう。
ちなみに『OVERTURE 019』では、佐々木彩夏は表紙と巻頭を飾っているが、次のページをめくれば、さまざまなアイドルたちが登場することもわかっている。もしかしたら、そういうアイドルのファンが、巻頭に掲載されるインタビューを読んでくれるかもしれない。そこを意識したからこそ、インタビューの核はかなり広い視野で見た『アイドル論』が展開されたのだと思う(こちらから内容を指定したわけではない)。
もっとも、この日の撮影はとても穏やかなムードで進み、空き時間やメイク中にもアイドルの話で盛りあがっていたので、多少、温まっていた部分はあったのだが、なるほど、ソロコンサートで横浜アリーナをフルハウスにしてしまうアイドルはここまで深いことを考えているんだな、ということがよくわかる内容となった。まだ読んでいない、という方はぜひ、この機会に目を通していただければ幸いだ。
もともと「インタビュー力」は非常に高かった佐々木彩夏だが、特にこの1年間でその力が大きく伸びたような気がする。そのあたりは8月7日に出版される『ももクロ青春録』(朝日新聞出版・刊)でも触れているのだが、彼女だけでなく、メンバーそれぞれが目に見えない部分で、もはや1年前とは別人といっても過言ではないほど成長を遂げている。
僕は毎年夏に、前年6月からの1年間の彼女たちの活動をライブ中心にまとめた本を出している。今回の『ももクロ青春録』でシリーズ6冊目となるのだが、今回は大きな軸として『ミュージカル』『47都道府県ツアー完全踏破』『セルフタイトルアルバム』の3本を立てて、それを中心に深掘りしていくスタイルをとった。
近年の本ではステージで起きたことよりも、リハーサルやバックステージでの出来事やメンバーの言葉にスポットを当ててきた(映像化されているライブに関しては、そちらを見てもらったほうが絶対にいいので)。今回はその傾向をさらに強くしたのだが、それでも完全に描ききれないな、と思ったので、この3本の軸に深く携わってきた関係者の方に「証言」をいただき、しっかりとページをとって掲載させていただいた。
インサイドレポートを長年、書かせていただいている僕ではあるけれども、すべてを見ているわけではない。そこで準備段階からがっつり関わっているスタッフからの証言を掲載することで、この1年間の活動をより深く、立体的に描写できるのではないか、という思いから提案した構成だが、結果、その狙いは当たったと思っている。なぜ、この1年間でメンバーの内面が飛躍的に成長したのか? この本を最初から読んでいただければ、ご理解いただけるんじゃないか、と思う。
そして本のラストはメンバー4人による座談会で締めくくらせていただいた。
4人が揃うと、当然、ワチャワチャがはじまってしまう。立ち会ったマネージャーさんから「いつまで経ってもはじまらないので、早く質問してください!」と言われてしまったが、そのワチャワチャ感が「いまのももクロ」をものすごく表しているな、と思い、しばらく眺めたあと、どれだけ空気感が伝わるかわからないけれど、そのワチャワチャから活字化することに決めた。
一般発売に先駆けて、8月3日、4日の西武ドーム大会で『MomocloMania2019』にて先行販売させていただくことになった。さすがに開演前にすべて読むのは難しいと思うが、会場で手に取っていただいた方には、ぜひ昨年の『MomocloMania2018』の項だけでも読んでいただければ、と思っている。
この1年でもっとも印象に残っている光景が、そのライブのリハーサルが終わった直後にバックステージで目撃したメンバーの姿だった。もう7年以上、密着取材をさせていただいているが、あそこまで追いこまれた4人の姿を見たのは、はじめてだったかもしれない。そして、そこで佐々木彩夏が発した言葉は、いまだに脳裏に焼きついている。その光景の詳細や、佐々木彩夏の言葉については、ぜひ『ももクロ青春録』でご確認いただきたい。佐々木彩夏の「インタビュー力」とメンバーの「人間力」は、おそらく、このあたりから想像を遥かに上回る次元で覚醒しはじめたのだ、と確信できると思う。
▽『ももクロ青春録 ももいろクローバーZ 公式記者インサイド・レポート2018-2019』
著者:小島和宏
出版社:朝日新聞出版
定価:本体1,482円+税
頁数:272ページ
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