いよいよ終盤に差し掛かってきた『VIVANT』(TBS)。秘密のベールに隠されていたテントとは、いったいどのような組織なのか?彼らがテロ活動を行う目的とは?9月3日(日)に放送された第8話では、その謎の一端が明かされた。
(以下、これまで放送されたドラマのネタバレを含みます)

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遂に、実の父親ノゴーン・ベキ(役所広司)との対面を果たした乃木(堺雅人)。涙を流してお互いをハグする感動の再会…とはならないのが、この『VIVANT』。乃木の真意を確かめるべく、ベキはピストルを手渡して黒須(松坂桃李)を撃つように命じる。

乃木の射撃の腕前を目の当たりにしていたノコル(二宮和也)は、「フル装填したピストルを渡してしまったら、テントのメンバー全員が射殺されるかもしれない」と案じ、一発だけ銃弾の入ったピストルを渡す。結局乃木は一発目を外し、二発目は空砲として鳴り響くのだが、「本当に乃木は黒須を殺そうとしていたのか?」という疑問は拭えない。銃弾が一発しか込められていなかったことを、最初から知っていた可能性もある。

児童養護施設のシーンで、乃木は天才的な計算力を駆使し、「給食担当者が、配給されていたお米を中抜きしてロシアに売りさばいていた」ことを明らかにする。その事実を知るきっかけとなったのは、手に持った物の重さが正確に分かるという、特技によるもの。だとするならば、ピストルの重さで銃弾がフル装填されているか否かも分かるのでは?

となると、別班のメンバーを殺害してまでテントに潜り込んだ乃木だが、黒須を手にかけることだけは回避したかった、と考えられる。SNS界隈では、そもそも別班のメンバーは偽装死なのでは?という意見も上がっている。確かに、公安によって遺体が運び出されるシーンはあったものの、彼らが銃弾によって命を落とした決定的な場面は映し出されていない。

これは全て別班の計画だったのか?怒りに燃える黒須もまた芝居なのか?物語が進むにつれ、ひょっとしたら乃木と黒須との“命のやり取り”が行われるかもしれないが、現時点で筆者は「全ては別班の計画通り!」説を採りたい。


今回の第8話は、異色のエピソードといえる。「民間軍事会社を経営していた」、「孤児院の運営のためにテロ活動に手を染めていた」、と次々と明るみとなるテントの事実。あまりにもスピーディーな展開のため、普通の描写では説明が追いつかない。そこで制作側は、「乃木のモノローグをところどころにインサートする」という、今までになかった手法を取り入れた。要点を簡潔にまとめることで、視聴者を迷わせない親切設計。このあたりの計算は素晴らしいの一言だ。

知能テストで抜群の結果を出した乃木を、ノコルが“使える人材”であると判断し、裏帳簿を渡してコストカット案を出すように命じるシークエンスは、『半沢直樹』を彷彿させる。物語の序盤では、バルカで繰り広げられるノンストップ・アクションが視聴者の目を釘付けにしたが、ここに来てまさかの金融系エンターテインメントにも目配せするとは。なんとも欲張りなドラマである。

もう一つ第8話で特筆すべきは、<潜入捜査官モノ>としての面白さ。ジョニー・デップがFBIの囮捜査官を演じる『フェイク』(1997年)、レオナルド・ディカプリオが暗黒街に潜り込む『ディパーテッド』(2005年)、黒人警官がKKK(クー・クラックス・クラン)の潜入捜査する『ブラック・クランズマン』(2018年)など、このジャンルには傑作が多い。もちろん彼は別班を裏切っている訳だから、正確には<潜入捜査官モノ>ではないのだが、テントのメンバーとしての自分、日本国家を守るべき自分との間で引き裂かれる…という展開は、おおいにあり得る。


個人的に面白かったのが、自衛隊時代の乃木を演じる堺雅人が、CGによって若返っていたこと(現時点で公式サイトでは特に言及がないが、おそらくアレは別の役者ではないはず)。思えば『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023年)でも、若きインディを演じるハリソン・フォードがCGによって若返りを果たしていた。これからは国内ドラマでも、回想シーンはCGが主流になるかもしれない。

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