いよいよ10月2日からNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の放送がスタートする。ヒロインの花田鈴子を演じる趣里といえば、今でこそドラマや映画などで主演を務める人気女優だが、その裏では数々の脇役を演じて異彩を放ってきたことも忘れてはならない。


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まず、多くの人が“女優・趣里”を知るきっかけになった役柄といえば、日曜劇場『ブラックペアン』(TBS系)の「ねこちゃん」こと猫田麻里役だろう。

彼女は天才外科医・渡海征司郎(二宮和也)を阿吽の呼吸でサポートする主任看護師で、“オペ室の悪魔”と呼ばれる渡海とは一緒に仮眠室で昼寝するほど仲が良い。無口な性格ゆえ作中ではほとんど喋らなかったものの、それでも圧倒的な存在感を放っていたのは、趣里の“目の芝居”が大きく影響しているのかもしれない。

というのも趣里は登場回数やセリフが少ないことを考慮して、その分表情や行動、目の動きで意思を示す演技を意識していたそうだ。特にオペ中はマスクをしていることから、目の芝居がより重要な意味を持つ。

出番が少ない中、独自の方法で存在感を示した趣里は、多くの人から絶賛され、2018年開催の第12回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」では見事“新人賞”に輝いていた。


趣里の圧倒的な存在感は、ドラマの単発ゲストでも健在だ。2019年放送のドラマ『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)第5話で彼女が演じたのは、新人刑事・彩雲真空(吉岡里帆)の“親友”である夏歩。普段は無邪気でかわいらしいイマドキ女子なのだが、その背景にはお笑い芸人の父親を殺された悲しき過去を持つ。

夏歩はその容疑者として相方の栗原くりごはん(鈴木もぐら)を疑っており、彼の話になると態度が一変する。鬼の形相で犯人に接する、狂気じみた一面を見せていた。

その一方で、物語の最後では父の遺品を大切そうに手に持ち、涙を流しながら無理やり笑みを作るという繊細な部分も覗かせている。
彼女の不安定な情緒から来る百面相ぶりは、多くの視聴者に強烈なインパクトを残したに違いない。

『ブラックペアン』のクールな看護師、『時効警察はじめました』の二面性を持つ人物役など、ひと癖もふた癖もある役柄を演じることの多い趣里だが、過去には朝ドラヒロインに負けず劣らずのはつらつとしたヒロインを演じたこともある。それがドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日系)の一途なヒロイン・すず芽だ。

彼女は“猪突猛進”という言葉が似合う、内側から常にパワーがみなぎっている明るい女の子。主人公の高円寺達也(相葉雅紀)を幼い頃から慕い続け、昼夜問わず彼の自宅を訪れてはまっすぐな思いをぶつけていく。そのため趣里もいつも以上にテンションを上げて撮影に臨んでいたそうで、番組のインタビューでは「ドラマでこんなに大きな声を出したのは初めて」と語っていた。


ちなみにすず芽は神楽坂の芸者という設定で、第5話では白塗りの芸者姿を披露している。普段の天真爛漫なすず芽とはひと味違う、艶やかな芸者姿に思わず息を呑んだ人も多いのではないだろうか……。

一方、2021年1月期のドラマ『レッドアイズ 監視捜査班』(日本テレビ系)では、KSBC(神奈川県警捜査分析センター)に所属する優秀な情報分析官・長篠文香を熱演。「SixTONES松村北斗演じる天才ハッカー・小牧要とはよく衝突する間柄なのだが、これが視聴者から「かわいい」「癒される」と好評を博し、“ながこまコンビ”の愛称で親しまれていた。

普段はライバルのような立ち位置にありながらも、どちらかがピンチのときは真剣にその身を案じる。そんな“ながこまコンビ”の絆が、視聴者の目に尊く映ったのだろう。
ドラマ放送終了後、SNS上にロスを嘆く声も少なくなかった。

ちなみにドラマではないが、趣里を語るうえで小田急電鉄のTVCM「世界に一つの日々と[3人の日々篇]」も外せない。当時はまだ今ほどの知名度がなく、「水谷豊の娘が出ているCMがかわいい」として話題になっていたが、彼女の演技力はその頃からすでに頭角を現していた。

特にCM終盤、友達との別れ際に涙を溜めながら笑顔で手を振る姿は、セリフもないのに心にグッとくるものがある。わずか1分ほどのCMながら、そこで初めて“水谷豊の娘”ではなく“女優・趣里”として認知した人も多いはずだ。

たとえ脇役でも全力で役柄と向き合い、異彩を放ってきた趣里。
そんな彼女が10月から放送の『ブギウギ』でどのような朝ドラヒロインを演じるのか、もはや期待しかないだろう。

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