8月31日からNetflixで配信されている実写版『ONE PIECE』が、漫画やアニメの実写化ドラマとしては異例とも言える人気を博している。すでに続編の制作も決まった同作だが、日本国内でも受け入れられている理由は、アニメ版と同じ吹き替えキャスト陣の“演じ分け”にあるのかもしれない。


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『ONE PIECE』の登場人物、特に“麦わらの一味”の面々は、今や日本で国民的なキャラクターとして認知されている。また1999年から長年放送されているアニメ版の影響も大きく、ルフィやゾロ、サンジといったキャラクターを思い浮かべる時、“あの声”で脳内再生される人がほとんどだろう。

そして実写版『ONE PIECE』の吹き替えキャスト陣は、そんな日本人の耳に慣れ親しんだアニメ版の声優が起用されている。田中真弓、中井和哉、岡村明美山口勝平平田広明といずれもアニメ版で長年キャラクターを演じてきた人たちだ。

とはいえいくらベテランの声優陣とは言っても、アニメ版そのままの演技で役を演じてしまうと、どうしても無理が出てきてしまうのが実写化の難しいところ。当たり前のことだが、実写版では実在の人間が役を演じるため、どうしても作品のリアリティレベルが上がってしまうからだ。

しかし実写版『ONE PIECE』の吹き替え声優陣は、アニメ版のルフィたちのニュアンスは残しつつ、より実写映像作品のリアリティに耐えうる演技に寄せることに成功している。アニメのキャラクターというよりは、洋画の吹き替えに近いと言えるだろう。

ゾロ役の中井がイベントなどで実写版『ONE PIECE』のゾロのことを「真剣佑ゾロ」と言っているように、声優陣は意図的に実写版ならではの演技に注力している様子。中でも物語の中心であるルフィ役の田中は、感情を抑えた演技を心がけているように見受けられる。ネット上では「原作初期のシリアスな台詞を言うルフィっぽくて格好良い」と評判だ。

実際にリアル寄りの演技をすることは、制作側も求めていることではあるのだろう。
アニメとのリアリティレベルの差で印象的だったのは、新聞配達をするカモメ「ニュース・クー」というキャラクター。

以前サンジ役の平田は、実写版『ONE PIECE』の制作に際してニュース・クー役のオーディションも受けたものの、落選してしまったことを明かしていた。ちなみにアニメ版では平田が兼ね役という形で、ニュース・クーなどの“鳥系”のキャラクターを演じている。

ただこれも完成したドラマを見てみれば納得で、実写版のニュース・クーは想像以上にリアルな鳥だった。そのため平田がニュース・クーを演じられなかったのは少しかわいそうだが、人間が演じる鳥の鳴き声では違和感がある、との判断があったのだろう。鳴き声の方もビジュアルに合せる形で、実写版ではよりリアルな鳥の鳴き声になっていた。

一方でバギーを演じる千葉繁のような、あえてアニメ版と同じような演技をするキャストがいるのも絶妙なバランス感覚。ルフィ役の田中も基本はアニメよりもシリアスな演技だが、「すっげぇ」といったルフィ特有の個性的なニュアンスを残すことで、ただの実写ドラマではない“ONE PIECE感”を醸し出している。

『ONE PIECE』という作品であることの最低限の要素は残しつつ、長年演じてきたキャラクターの喋り方を再構築したベテラン声優たちの匠の技。アニメ版との違いを比較してみるのも面白いかもしれない。

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