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二宮和也主演の『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)、大人気シリーズの『相棒season22』(テレビ朝日系)、劇場版も制作された『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)、鈴木亮平主演の日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)などなど、錚々たる秋ドラマがひしめくなかで筆者的には最注目のドラマである。
広告代理店で働く常盤廻(吉岡里帆)は、仕事の“辻褄合わせ”は得意だが、恋愛となるとからっきしなアラサー女子。そんな彼女の元に、未来からやってきたタイムパトロール隊員の井浦翔(永山瑛太)が現れ、やがて2人は時空を超えた恋に落ちていく…という、SFラブコメディ。という訳で本稿では、『時をかけるな、恋人たち』の魅力について迫ってみたい。
筆者がこのドラマに注目した最大の理由は、劇団ヨーロッパ企画主宰の上田誠が脚本を手がけていること。同志社大学の演劇サークルとして旗揚げされたこの劇団は、それまでも知る人ぞ知る存在だったが、第8回公演として初演された『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)が『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督によって映像化されてたことで、一躍映画ファンからも注目されるようになった。
その後も、『曲がれ!スプーン』(2009年)、『ドロステのはてで僕ら』(2020年)、『リバー、流れないでよ』(2023年)と劇場用長編映画を制作する一方で、『あいつが上手で下手が僕で』(2021年)、『魔法のリノベ』(2022年)とTVドラマも意欲的に発表。湯浅政明監督のTVアニメ『四畳半神話大系』(2010年)では、シリーズ構成と脚本も手がけている。
上田誠の真骨頂といえば、“時間もの”。過去に戻って部室エアコンのリモコンを取りに行く『サマータイムマシン・ブルース』といい、テレビに2分後の未来が映し出される『ドロステのはてで僕ら』といい、タイムリープから抜け出せなくなった『リバー、流れないでよ』といい、時間を巧みに操作することで極上のドタバタコメディが生み出される。
時空を超えたSFラブコメディ『時をかけるな、恋人たち』は、まさに上田誠の得意技が唸りを上げる作品なのだ。吉岡里帆演じる主人公の名前は常盤廻(ときわ・めぐ)で、永山瑛太演じるタイムパトロール隊員の名前が井浦翔(いうら・かける)。時が廻り、時を翔ける物語であることを、名前が暗示している。
個人的には、吉岡里帆と永山瑛太以外のキャスティングもツボ。タイムパトロール隊隊長の和井内を演じる石田剛太はヨーロッパ企画の看板俳優で、ファンにはお馴染みの顔。メカニック担当の八丁堀は、お笑いコンビ・シソンヌのじろう。そして冷静沈着なオペレーター天野りおんを演じるのは、伊藤万理華!乃木坂46の元メンバーというよりも、傑作青春映画『サマーフィルムにのって』(2021年)で時代劇と勝新太郎をこよなく愛する高校生ハダシを演じ、映画ファンの心をさらったことが記憶に新しい。
このドラマの監督を務めているのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやチャットモンチーなど数々のMVを手がけている一方、前田敦子主演の映画『もっと超越した所へ。』でも知られる山岸聖太。この作品には金髪ギャル役で伊藤万理華も出演していたから、その縁もあるのかもしれない。
音楽繋がりでいうと第1話は、未来からやってきた青年が、現代の路上ミュージシャンに心を奪われてしまい、マネージャー役を買って出て二人三脚で頑張るも、タイムパトロール隊に見つかってしまい記憶を消去されてしまうという、何だか『エターナル・サンシャイン』(2004年)を思わせるストーリーだった。そして、その路上ミュージシャンを演じているのが、まさかのシンガーソングライター吉澤嘉代子!そりゃ未来人も感激するわ。
彼女の楽曲「刺繍」のMV演出を務めているのは、山岸聖太監督。そして吉岡里帆の主演映画『アイスクリームフィーバー』(2023年)では、主題歌「氷菓子」を楽曲提供していたりする。このサプライズ出演には、そんな繋がりがあるのかも。
タイムパトロール隊の正式名称が「時空管理局パトロール部令和5年世田谷基地」という馬鹿馬鹿しさ、廻がタイムパトロールを手伝うのは副業扱いでもOKというユルさ(いや、働き方改革を反映したものか?)、記憶を消去する機械の見た目がほとんど美容室のローラーボールというレトロっぽさ(しかも名称がフォゲッターだ!)。第1話から、ヨーロッパ企画らしさが爆発している。
第2話以降の<恋の超展開>に超期待であります!
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