▽相談
最近、マンションを購入したのですが、同じフロアの別の部屋が、いわゆる事故物件であることがわかってしまいました。インターネットで調べて発覚したのですが、自分の部屋ではないこともあり、不動産屋に問い合わせても「ネットの情報を鵜呑みにしないでください」と注意され、他の部屋のことを詳細には教えられないと言われました。今のところ霊現象などは起きていないのですが、とても気持ちが悪いです。まだローンがたくさん残っています。どうしたら平穏に暮らせるでしょうか?(37歳 女性 会社員)
事故物件といってもいろいろありますよね。それが殺人現場だったのか、事故死なのか、自殺なのか。それによっても気持ち悪さも変わってくると思います。
僕はわりと事故物件は平気なほうで、「そこら中で人は死んでるんだから」という考えなんですが、やっぱり自分の部屋が殺人でめった刺しされた現場とかだったら、心霊現象が起こらなくても、ちょっとイヤな気分になと思います。
そこで、まず観ていただきたい映画は、そのものズバリの『事故物件 怖い間取り』です。監督はJホラーの巨匠である中田秀夫さん、主演は亀梨和也くんです。
この映画は、実際に事故物件に住んでいた松原タニシさんが書いた本が原作になっています。
亀梨くんが演じるのは、売れない芸人の山野ヤマメ。
残されたヤマメに、テレビのプロデューサーが「事故物件に住む企画」を打診するんです。背に腹は変えられず、承諾したヤマメが最初に住むのが殺人事件が起きた部屋。案の定、オーブが舞ってたり、ヘンな影が映ったりと怖い現象がたくさん起きてしまう。奈緒さんが演じている、霊感の強いメイクさんも部屋に入った瞬間「この部屋、とんでもないよ」とつぶやいたりして、ホラー映画定番の展開になっていきます。
山野ヤマメは、さらにいろいろな事故物件に住むんですが、そのエピソードを披露していくうちに「事故物件住みます芸人」として大ブレイクしていきます。結果的に、事故物件のおかげで、めちゃくちゃ仕事が増えるんですね。
ここで言いたいのは、普通は事故物件に住むというのはマイナス要素が強いですけど、見方を変えればプラスになることもある、ということです。
この映画の中にも出てきますけど、通常の家賃より格安だったりするので、事故物件に優先して住みたい人もいます。何が得で何が損かは、人によって違うんですね。
相談者さんはローンが残ってるから引っ越せないといいますが、この機会に思い切って売ってみたら買ったときより高く売れるかもしれない。いまマンションの値段は上がってますからね。
事故物件とはいえ、考え方、捉え方次第なんですよね。
このような「視点を変える」という意味で参考になるのが『呪詛』という台湾製のホラー映画です。この作品はNetflixで配信されています。
『呪詛』は、一人称のカメラ目線で進んでいくP.O.V.形式で構成されています。それに、どこかで誰かが撮った映像を観るという、ファウンド・フッテージと呼ばれるジャンルが掛け合わされている。なので、まるでドキュメンタリーのようなリアルで生々しい映像になっているんです。
そして、奇妙な風習が残る村での儀式の映像と、呪われてしまった娘を持つ母親が経験するさまざまな怪異の映像が交互に展開していきます。
どの場面も禍々しく、嫌な感じの雰囲気が続いて、ちょっと危険なほど没入度が高いです。
映画ですから、観客はもちろんこれは嘘、作り話だってわかっている。でも、この作品はあまりにもよく出来ているので、もしかして本物じゃないのか、という気持ちにもなってくる。というより、むしろ本物と思ったほうが怖さを楽しめるんですね。
テーマパークのアトラクションに乗ると、設定があって「緊急事態! みんなで逃げましょう!」とか始まるじゃないですか。アレを最大限楽しむには、スカした態度を取らないで、
「ヤバい!緊急事態だ!」と乗っかったほうがより楽しめます。
そう考えると、心霊現象は自分が乗っかることで成立し得るエンターテインメントだと僕は思うんですよ。
相談者さんは、わざわざネットで調べて、自分のマンションが事故物件ということを知ったと思うんですけど、もうそこで何かに乗っかっている。そして、事故物件では何か不吉なことが起こるという“設定”にも乗っています。つまり、自分から怖がりに行って、怖いと言ってるんですね。具体的な障害やマイナスなことは何も起きてないのに、勝手に気味が悪いと感じている。
自分は何に対して怖がっているのか。それを改めて冷静に考えると、見えてくるものがあると思います。
映画というものは、さまざまな視点で成り立っています。それを意識しながら、改めて作品を鑑賞していただくと、自分の視点も変わるキッカケになると思います。
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