二宮和也や神尾楓珠ら複数の俳優が7月クールの連続ドラマに引き続き、10月クールもドラマで活躍を見せている。今回は、二宮や神尾のほか、萩原利久、鈴鹿央士、上杉柊平について、前ドラマとのキャラクターの違いや演じ分けを考えたい。


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前クールでもっとも話題を呼んだといって良いだろう連続ドラマ『VIVANT』(TBS)に、物語の鍵を握る重要な役で出演していた二宮和也。広大なモンゴルの土地で、馬に乗りながら颯爽と登場するシーンは今でも目に浮かぶほど印象的だった。二宮が演じたノコルの登場シーンのために、2ヶ月以上も乗馬を練習したというのだから、その気合たるや想像以上だろう。

しかし、10月スタートの『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ)では一転、記憶を失った逃亡犯に扮している。『VIVANT』で披露した乗馬やモンゴル語、ロシア語のように特殊な技術への準備こそ必要ないかもしれないが、これほど走り続けている二宮を見るのも珍しい。

二宮の俳優としてのキャリアを振り返ると、ドラマや映画で影のある暗めの役柄を演じていることも多く、バラエティやラジオ、Youtubeで見せる明るく飄々とした姿とはギャップのある演技に魅了されてきた。
『ONE DAY』は改めてその魅力に気付かされる作品となっている。

そして、前クールの”月9”『真夏のシンデレラ』(フジテレビ)に出演していた神尾楓珠、萩原利久にも注目したい。今期、神尾は『いちばんすきな花』(フジテレビ)、萩原は『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ)に、いずれも主演で出演している。

前作の“月9”で神尾が演じた主人公・夏海の幼馴染の役は、決して言葉数が多い方ではなく、突発的な発言で周りを驚かせることも多かった。今期の『いちばんすきな花』では、モノローグを含め、会話を中心とした役に挑戦している。『silent』のスタッフ陣が制作するドラマの雰囲気に沿う好青年を、さっぱりと、しかしセリフに嘘がないよう丁寧に演じている印象だ。


一方萩原は、前作は優秀ながらも人の気持ちがわからず人間関係につまずく研修医を演じていた。今回は堀田真由とのW主演で本格ラブストーリーに挑戦しているほか、劇中では関西弁も話す。記憶障害を抱えて、急に自分や周囲の人間がわからなくなる演技は見ている以上の難しさがあるだろう。記憶が途切れるなかで堀田演じる美璃と心を通わせていく細やかな演技にも注目したい。

ほかにも、『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日)に出演している鈴鹿央士、『ワンルームエンジェル』(MBS)に出演中の上杉柊平はいずれも前クール『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS)にレギュラー出演していた。

今期、鈴鹿は同性である男性を恋愛対象とする超クールなイケメンを演じている。
前作『18/40』(TBS)でも見せた、好きな人への献身的な姿勢と愛情表現は今期も引き継いでいる。大学生らしい幼い一面を見せていた前作とは違い、繊細で伏し目がち。人と距離を置くタイプへと見事に切り替えた。

最後に、今期もっともシュールなキャラクターを演じているのが上杉だろう。コンビニでのアルバイトもクビになってしまうほど運も気力もない男で、『18/40』で深田恭子演じる主人公のパートナーとして、精神面でどっしりと支えていた俳優だとは思えない。それほど前作では好青年を演じきったと言える。
今期の無気力な雰囲気も作品によく馴染んでいる。

ドラマの出演が途切れないのは、今注目の俳優であり、名実ともに人気があるからだといえる。しかし出演が続き、出演作が増えるほど演じ分けの難しさも倍増するはずだ。ここで紹介した5人の俳優は、前作もさることながら、今期のドラマも大いに盛り上げている存在。その根底には見る人を飽きさせない演技力が基盤にあるということの証左だろう。前クールの作品を見ていた人は、演じ分けにも注目してみるとより面白さが増すかもしれない。


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