『ゴジラ-1.0』がシリーズ最高の好スタートを決める中、同じ最新映画として大健闘を見せている作品が存在する。それが『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』だ。


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興行通信社が発表した2023年11月3日~5日付の国内映画ランキングによると、『ゴジラ-1.0』に次いで『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』が初登場2位にランクイン。動員数・興行成績ともに好調で、アニメ映画としては同ランキングの1位に輝いていた。

とはいえ同作は、近年話題の「週刊少年ジャンプ」作品を原作とするアニメでもなければ、『ドラえもん』や『名探偵コナン』のような長寿アニメでもない。にもかかわらず、なぜここまで人気を博しているのだろうか。あ

そもそも『すみっコぐらし』とは何かというと、たれぱんだやリラックマで知られる「サンエックス株式会社」が2012年に発表したキャラクター群。“すみっこ”に居ることを好む「すみっコ」たちの愛らしさが話題を集め、2019年には関連商品の年間売上額が約200億円へ。同年に発表された「日本キャラクター大賞」では、見事グランプリを受賞していた。

ちなみに「日本キャラクター大賞」は、過去に『ポケットモンスター』や『妖怪ウォッチ』が選出されたこともある賞で、2020年と2021年には『鬼滅の刃』、2022年は『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』が同グランプリを獲得。つまり『すみっコぐらし』は、それらと肩を並べる人気コンテンツ……と言ってもいいのかもしれない。

ではいったい「すみっコ」たちの何が人々を惹きつけるのだろうか。もちろん理由の一つには見た目のかわいらしさもあるだろうが、魅力はそれだけに留まらない。

たとえば「とんかつ」というキャラクターは、“おにく1%、しぼう99%”でできた端っこのとんかつ。
「あぶらっぽいから」という理由で残されてしまい、同じく「かたいから」と食べ残された「えびふらいのしっぽ」とは心を通わせた仲らしい。

一方「とかげ」と名乗るキャラクターは、実は恐竜の生き残り。しかし正体が恐竜だとバレると捕まってしまうため、とかげのふりをしているという。他にも自分の正体に自信がない「ぺんぎん?」や自分の体型に自信がない「ねこ」、ミルクティーだけ先に飲まれて残された「たぴおか」など、ゆるい見た目に反してやたらと哀愁を漂わせたキャラクター設定が特徴的だ。

そんなかわいらしさの狭間から垣間見えるネガティブなギャップが、ファンを惹きつけてやまないのだろう。

もともと人気コンテンツではあったが、さらにその人気に拍車をかけたのが、2019年11月に公開された『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』だ。

同作の舞台となるのは、喫茶店の地下室で見つけた“絵本の世界”。ひょんなことから絵本の世界に吸い込まれた「すみっコ」たちは、その先で迷子の「ひよこ?」と出会い、新しい仲間のおうちを探すための旅へ出る。

……と、なんともかわいらしいあらすじなのだが、実際はただかわいいだけの物語ではなかった。物語後半にファンシーな世界観からは想像もつかない展開が待ち受けており、油断していた大人たちがこぞって涙腺を崩壊させたというのは今や有名な話だろう。

ある意味、『すみっコぐらし』らしいネガティブな要素が垣間見えたわけだが、そうとは知らない人たちからは良い意味で「逆詐欺映画」などと呼ばれていた。

2021年11月には劇場版第2弾となる『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』が公開され、前作対比177%となる好スタートを記録。
そして現在公開中の『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』は、シリーズ最高となる初日の動員数8万9,508人を記録するなど、その勢いはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

ちなみにネット上では最高傑作との呼び声も高く、Filmarksの初日満足度ランキングは、『ゴジラ-1.0』を抑えて1位を獲得している。「すみっコ」たちのまったく“すみ”に置けない快進撃は、これからもまだまだ続きそうだ。

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