全編モノクロの長編デビュー作『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(2014)が注目され、2作目『マッドタウン』(2016)でもジム・キャリーやキアヌ・リーブスなどが出演し話題となった、アナ・リリ・アミリプールの最新作にして長編第3作『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』が11月17日より公開されている。

【写真】『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』場面写真【11点】

『レギオン』『キャッスルロック』などのドラマのエピソード監督やクリスティーナ・アギレラのミュージックビデオなど、幅広いフィールドで映像センスを見せ続けることから各界で魅了されているアナ・リリ・アミリプール。


『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』では、演技力が高く評価されるチョン・ジョンソを主演にむかえ、ケイト・ハドソンやエド・スクラインといった俳優陣が脇を固めているが、やはり注目すべきはチョン・ジョンソの圧倒的な存在感。ストーリーが割とシンプルだからこそ、ジョンソの演技力ありきで構築された作品ともいえるだろう。

今作の主人公モナ・リザは、目を見た相手を操る特殊能力の持主であり、ある日その能力が覚醒。しかし10歳の頃から精神病院に入れられていたことから、あまり外の世界を知らず、見るもの全てが斬新で刺激的に感じる。そんな、あどけなくもどこか未知なる危険性も含めたキャラクターを見事に演じているのだ。

人は出会った人物や環境によって、その後の人生が左右されるものだが、モナ・リザが出会う人々を通じて、どう変化していくのか。
モナ・リザはヒーローになるのか、それともヴィランになるのか……といったグラグラした精神状態をさまよう様をチョン・ジョンソが体現し、そこにアミリプールの映像センスが融合することで、90~2000年代前半のインディペンデント系作品のような、どこか得体のしれない魅力に満ち溢れた作品となっている。

そんなジョンソといえば、村上春樹原作の短編を韓国で映画化した『バーニング 劇場版』(2018)で才能を見出されて以降、『ザ・コール』(2020)では猟奇的な役を演じたかと思えば、『恋愛の抜けたロマンス』(2021)では韓国の等身大女性を演じ、日本でも10月からNetflixで配信が開始された『バレリーナ』ではスタイリッシュなアクションシーンにも挑戦している。

また同じくNetflix配信ドラマ『ペーパーハウス』の韓国リメイク版『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』では、メインキャラクターを演じているなど、ドラマと映画のどちらにも爪痕を残し続けているカメレオン女優ともいえる。

例えばNetflixインディアでは、タープシー・パンヌやアーリヤ・バットといった女優を世界に向けて売り出そうとしているように、Netflixでは、それぞれの国が世界に売り出したい俳優を激推しする傾向にある。

Netflixコリアの場合は、まさにジョンソが今売り出したい女優なのだ。

今作でハリウッドデビューを果たしたことも重なり、今後更なるグローバル俳優として、世界での活躍が期待できるだろうし、次はどんな役を演じてくれるかが楽しみになる女優であることは、今作を観れば何となく理解できるはずだ。


【ストーリー】
少女の名前は、モナ・リザ。だけど、決して微笑まない。12年もの間、精神病院に隔離されていたが、赤い満月の夜、突如“他人を操る”特殊能力に目覚める。自由と冒険を求めて施設から逃げ出したモナ・リザが辿り着いたのは、サイケデリックな音楽が鳴り響く、刺激と快楽の街ニューオーリンズ。そこでワケありすぎる人生を送ってきた様々な人々と出会ったモナ・リザは、自らのパワーを発揮し始める。いったい彼女は何者なのか。
まるで月に導かれるように、モナ・リザが切り開く新たな世界とは──?

【クレジット】
監督・脚本:アナ・リリ・アミリプール
ケイト・ハドソン、チョン・ジョンソ、クレイグ・ロビンソン、エド・スクライン、エヴァン・ウィッテンほか
2022年/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/5.1ch
原題:Mona Lisa and the Blood Moon
字幕翻訳:高山舞子 
提供:木下グループ 
配給:キノフィルムズ 
(C) Institution of Production, LLC
公式サイト:monalisa-movie.jp
11月17日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて公開

【あわせて読む】『マーベルズ』ついに公開、宇宙を舞台にオフビートなユルさで展開されるガールズトーク