年末が近づき、2024年1月期に放送される冬ドラマの情報が続々と解禁されている。なにわ男子の道枝駿佑が主演を務める『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系)や、山田裕貴永野芽郁による月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)など、さまざまな作品がラインナップされている中、“おっさん”のドラマがひときわアツい。


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たとえばテレビ朝日の金曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』は、言わずと知れた人気シリーズ。春田創一(田中圭)に想いを寄せる上司・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)を中心とした、男性同士の恋模様がテーマとなっており、近年の実写ドラマにおけるボーイズラブブームを巻き起こすきっかけにもなった。

また、お笑いトリオ・ネプチューン原田泰造が主演を務める『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)、通称『おっパン』も、タイトルの通り“おっさん”にフォーカスを当てたドラマだ。

彼が演じる沖田誠は「男は男らしくあるべき!」という古い価値観を持っているのだが、そんな固定観念が原因で家族から敬遠されている。しかし、とある青年との出会いと、個性豊かな登場人物たちとの触れ合いによって、これまでの“自分の常識”をアップデートしていく。

そして主演・阿部サダヲ、監督・宮藤官九郎による『不適切にもほどがある!』(TBS系)は、昭和のダメおやじを主人公に据えた意識低い系タイムスリップコメディ。ひょんなことから令和にタイムスリップした主人公が、不適切な発言を連発させながらもコンプライアンスに縛られた現代の人々に“考えるきっかけ”を与えていく作品だ。

いずれの作品も物語の中心にいるのは中年男性。イケメン俳優でも人気女優でもなく、“おっさん”なのだ。

振り返ってみると近年の実写ドラマにおいて、“おっさん”は一種のトレンドだった。2016年に『おっさんずラブ』の単発ドラマが始まると、これが瞬く間に話題となり、2018年に連続ドラマ化。日本中に“おっさん旋風”を巻き起こし、劇場版まで制作された。


一方、翌2019年には西島秀俊内野聖陽のW主演ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)が人気を集め、こちらも2021年秋に映画化を果たしている。さらに今年10月クールのドラマとして『きのう何食べた? season2』が絶賛放送中だ。

いずれもおっさん同士の恋模様を描いた作品だが、2020年には、おじさん家政夫・鴫野ナギサ(大森南朋)と20代の独身キャリアウーマン・相原メイ(多部未華子)による“ちょっと変わった恋愛”を描いた『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)が大ヒット。癒し系で周りの面倒を見てくれるナギサは働く女性にとって理想の存在であり、包容力のある大森の演技も相まって視聴者の支持を集めた。

思い返せば、空前の“おじさんブーム”は2012年から続く『孤独のグルメ』(テレビ東京系)から始まっていたようにも思える。同作は、言ってしまえば松重豊扮する井之頭五郎がひたすらご飯を食べるだけの作品なのだが、普通に考えれば映えない絵面が「逆に癒される」として、人気を博す要因となった。

一般に“おっさん”というワードには、どちらかと言うとマイナスなイメージが付きまとっている印象。そんな概念がなぜブームとなるのか、それは彼らが秘める「ギャップ萌え」が関係しているのかもしれない。

『おっさんずラブ』を例に挙げると、一見コワモテの黒澤武蔵が「はるたん……」と意中の相手に想いを寄せている様子はシュール以外の何ものでもない。社内の人間に片想いするという構図はこれまでのドラマでも挙げたらキリがないほど描かれてきたが、恋しているのが“おじさん”というだけで今までにないギャップが生まれる。

現実社会では、年齢を重ねた男性ほど世間体のために“武装”して生きているものだが、そんな人物が無防備にピュアな内面をさらけ出してくれる姿から、萌えと癒しが生まれるのではないだろうか。

『私の家政夫ナギサさん』に登場したナギサも、おじさんでありながら優男で家事までこなせる完璧ぶりが目を引く役柄だった。
その一方で、メイとの恋愛になると照れてしまったり一歩踏み出せなかったり……。そんな様子に尊さを感じるファンも多かったはずだ。

もはや実写ドラマにおいて、“おっさん”はキラーコンテンツなのかもしれない。今年放送される冬ドラマの“おっさん”たちにも期待しよう。

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