12月14日より、Netflixオリジナルドラマ『幽☆遊☆白書』の配信が開始された。北村匠海主演、志尊淳本郷奏多上杉柊平が主要キャストを務める。
冨樫義博の同名漫画が原作で、1992年からはTVアニメ化もされている日本が誇る名作のひとつだ。

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制作期間は約5年、日米グローバルチームで制作された実写ドラマで、原作にアレンジを加えながらキャラクターの魅力を活かし、さらに実写ならではのアクションシーンを豊富に取り入れている。

物語の構成、役者によるキャラクターの再現度、VFXをはじめ映像技術の活用など語りだしたらキリがないが、今回は、主要4キャストのアクションシーンを中心に、演技に注目したい。

まずは主人公・浦飯幽助を演じた北村匠海。連続ドラマに映画と出演作の途切れない、今もっとも勢いのある俳優が壮大な配信オリジナルドラマに挑戦した。北村は細かい表現や切なく儚いキャラクターなども得意な役者だが、今回は、大きく大胆に見せることに集中。アクションシーンでは倒れても何度も立ち上がり躍動し、主人公らしい立ち振る舞いに心のなかで応援しながら観た視聴者も多いはずだ。

アクションが派手さを極める一方、セリフの言い回しや表情は冷静に、抑えた印象を受ける。見た目にインパクトのあるアクションに頼り切らず、幽助の感情をしっかりと伝えた形だ。

蔵馬を演じたのは志尊淳。本作は、リングハーネスを使ったアクションシーンを撮影した日本初の作品らしいが、その結果として鴉(清水尋也)とのバトルシーンは何度でも繰り返し見たい場面に仕上がっている。

蔵馬は妖狐でありながら、南野秀一という人間としての一面も持つことから、人間の母親を慕い、高校生として生活している部分と、妖狐として冷酷に戦うふたつの顔がどちらも堪能できる。
幽助と飛影(本郷)の仲をつなぐ役割も担っていて、4人の輪を保つ重要なキャラクターだ。

志尊が演じたことで、漫画原作らしいビジュアルの確立、可憐さのある妖狐と人間の一面との両立が叶った。今作から蔵馬のファンを獲得することもあるだろう。

本郷奏多が演じたのは、目的のためには手段を選ばない非情さを持ちながら、妹思いな妖怪・飛影。実写化作品に本郷奏多あり、といえるほど漫画原作の映画やドラマに数多く出演してきた。その分、映像技術を想定したシーンやアクションも数多く経験してきたはずだが、終盤、武威(荒井敦史)と戦うシーンの難易度の高さは過去作の比ではないだろう。

無理な動きにも丁寧に感情を乗せ、表情や行動を合わせたのはさすがの技術。何作品見ても飽きない本郷の演技力の高さを、今作でも存分に発揮した。

上杉柊平演じる桑原和真は、体格の良さや威勢の良い行動とは裏腹に、心情の変化は泥臭く人間らしい。幽助のライバル的存在でありながら、いつも負けが続く桑原は、ある時を境に強くなることを決意。鍛錬するなかで桑原の粘り強さが幽助の闘争心を掻き立てるまでに成長する。

上杉は出演作も豊富で実力のある俳優のひとりだが、他の3人と比べたときに主演作が少ないのも事実。
今回の4キャストのなかでは、最も「世界に見つかった」存在になるだろう。

漫画原作の実写化作品に出演するのは、日本で活動する俳優の目標のひとつだろうが、一方で避けて通れないジャンルでもある。原作と比較して物語の構成やキャストは非難の的にもなり得る。漫画だからこそのビジュアルや表現を、どのように実写化するのか。

とくに今作は全5話と、視聴者にとって一気見しやすい尺ながら、ストーリー展開は王道で一見淡白さもある。その分アクションシーンが際立っており、一つひとつを思い返すと、壮大な時間の積み重ねを思わずにはいられない。

ビジュアルのための体作りや、アクションのための練習は相当なものだろうが、視覚効果や技術との融合も相まって、役者の血の滲むような努力は見事に映像に昇華されている。これは漫画原作の実写作品としてひとつの成功例になるのではないだろうか。

ただ純粋に楽しむ、その世界に浸る、これ以上ないエンターテインメント作品に仕上がっている。

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