8月16日の宮城公演を紐きりに、神奈川、大阪、福岡、そして東京を駆け抜けた欅坂46。9月30日発売の「月刊エンタメ」11月号ではそんな全国ツアーを特集する。
今回は特集内のライブレポート前半を先行公開! 宮城、神奈川、大阪、福岡の地方公演の様子をメンバーたちの声とともに紹介。多くの謎に包まれたライブの真実に迫る。
8月7日深夜0時、欅坂46の公式サイトに突如、謎の暗号が掲載された。それは5月の「欅坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE 武道館公演」でお披露目された“欅文字”と言われるオリジナル文字による暗号であり、解読すると「918 919」「35 42 21 139 45 7」という数字が浮かび上がる。

「918 919」は日付、そして「35 42 21 139 45 7」は緯度経度であり、示された場所は東京ドーム。一体何が起きるのかファンがざわめく中、8日、「欅坂46 夏の全国アリーナツアー2019」追加公演として9月18日と19日の東京ドーム2days公演が発表された。

全国ツアー開催前のサプライズ発表。だが、初日・宮城公演前日にはセンターである平手友梨奈が怪我による出演見送りを発表。まさに、期待と不安の中、今年の全国ツアーはスタートした。だが、この夏、欅坂46にとって大きな変化が起きることをそのとき我々はまだ知らなかった。

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宮城から始まり、神奈川、大阪、福岡と回った今回のツアー。公演の内容は、これまで以上にストーリー性が強く、欅坂46のクールな世界観を色濃く表したステージであった。


開演前、ステージに置かれたラジカセから流れるBGMにノイズがかかると、突如、音と照明がシャットダウン。聞き馴染みのあるOVERTUREが流れ、ライブが始まった。モニターに映し出された映像には2期生の顔ぶれや、欅共和国(7月5日~7日)で活動再開した原田葵の姿もあり、欅坂46の新時代の幕開けを彷彿させる。OVERTUREが終わると、暗闇の中、モニターには無機質で不気味な文字が浮かぶ。

「キミタチニデグチハアルノカナ? コノセカイハオモテガウラデ ウラガオモテ サイゴノヒトリニナラナイヨウニネ」

謎のメッセージに困惑する中、ステージが明転すると、そこには衝撃的な光景が。大きな檻が現れ、その中にメンバーたちが閉じ込められていたのだ。

不安げに立ちすくむ者や、脱出を試みようとする者、手鏡をのぞく者など様々な様子のメンバーたちが檻の中を彷徨っている。観客たちもどよめく中、鈴本美愉が立ち上がり金網を掴むと『アンビバレント』がスタート。普段、ステージ全体を使いパフォーマンスする欅坂46が狭い檻の中で踊り出した。しかし、窮屈な空間だからこそ、その迫力も増しているように思えた。

続く『風に吹かれても』では小林由依がセンターを担当。8月22日の神奈川公演からは曲中、小林が金網を乗り越えようと手を伸ばすパフォーマンスが追加され、自由を求める彼女たちの思いがダイレクトに伝わってきた。


曲の最後にはみんなの輪から織田奈那が外れ、1人佇む。小林が駆け寄るも、その不穏な空気を表すかのようにノイズのような音楽が会場に鳴り響く。恐怖でメンバーたちが困惑する中、『語るなら未来を…』が流れ、土生瑞穂がセンターへ立った。ダンスの振りやパフォーマンス、メンバーの様子がいつもとはどこか違うこの“あべこべな世界”。我々も彼女たちが無事に脱出できる未来を願うことしかできなかった。

続くパートでは、赤い夕日がステージに映し出され、佐藤詩織が1人で踊り始める。このダンスはフリーダンスであり、公演ごとに佐藤の感情によって変わっていた。毎回、TAKAHIRO先生に相談しながら作り上げられたそのしなやかで美しい舞いは、観ていた者全員の心を掴んだはずだ。

佐藤によるダンスが終わると、メンバーたちがなぜか後ろ歩きで現れ、全員によるダンストラックがスタート。欅坂46らしいダイナミックなパフォーマンスだが、BGMを含め、どこか違和感を感じる。実はこのダンス、曲を含め逆再生で作られたダンスなのだ。一見、普通のダンスに見えるが、映像を逆再生させると、より迫力のあるダンスを踊っている。


「今までのライブに来て下さった方は気づいたかもしれないんですけど、武道館公演でのダンストラックを逆再生していたり、その武道館にあったオブジェが今回のツアーでもステージ上に置かれていたりとか、時の流れを感じさせつつ、繋がっているんです」(菅井)

「実はセットリストも武道館公演を逆にやっているんです。逆再生ダンスはダンサーさんと踊った映像を巻き戻しながら振りを確認していて。いつものダンスとは違う独特の音の取り方で苦戦しました」(石森)

ダンスパート後、大きなデジタル時計が上空から降りてきて『Student Dance』が始まる。MVでは、タイマーの時間が増えて行く演出の『Student Dance』だが、今回ではカウントダウンのように時間が減っていく。『東京タワーはどこから見える?』では東京タワーの映像が逆さまに映し出されるなど、これもまた“あべこべ”な世界の影響である。

ラジカセがステージに再び現れ、物語は急変する。そのラジカセから流れてきた言葉なのか、スクリーンには意味深なメッセージが流れた。

「ヒトリヘヤカラデタミタイダネ アノコハキミタチノナカマカナ?」

その意味を理解できないうちにスタートした『君をもう探さない』。中盤に上村莉菜がメンバーとは離れた位置から1人扉を開けて出てくる。そう、彼女こそがメッセージが意味する部屋から出た子だったのだ。

上部ステージで踊るメンバーたちと、下部ステージで1人踊る上村。最後には大きなシャボン玉が降ってきて上村が手を伸ばす。
その光景は儚くも、どこか美しさを感じさせていた。

『もう森へ帰ろうか?』でも上村の物語が続く。外の世界のベンチで1人本を読んでいた彼女だったが、ふいに立ち上がり、鈴本に導かれるかのようにメンバーの元へ戻る。1人脱出したかに思われた上村だが、違う異世界に迷い込んだだけなのか、それとも仲間たち全員で脱出することを選んだのか。答えは分からないままだが、彼女が“仲間”であることは間違いない。その後パフォーマンスされた『キミガイナイ』も、いなくなってしまった上村への悲しみと、戻ってきた喜びを歌っているかのように思えた。

MCが終わると、松田里奈を筆頭に2期生メンバーが登場。松田が指揮者のようにタクトを振り、他のメンバーをマリオネットのように操っているかと思えば、いつの間にか松田が操られている。さらに、メガネをかけた松田が先生のように生徒たち(メンバー)を指導していたはずなのに、気がつけば立場が逆転しているなど“あべこべな世界”の影響を受けたコミカルなダンスパートを披露した。

「あのダンスは2期生みんな大苦戦して、仙台公演ではすごく怒られました。簡単な振りなんですけど、簡単だからこそ揃っていないと粗が目立つんです。リハ後もダンサーさんたちに付き合っていただき、何度も練習しました」(田村)

2期生ダンスパートの終盤では、1期生メンバーもステージに登場。
最後に全員が並ぶと、松田がおもむろに土生へと近づき、彼女の手を上げる。そして、メンバーを土生の元へ呼び出し、彼女の手に全員が手を重ねる。その姿はまるでの欅の木のようであり、客席からは喜びの歓声が上がる。そう、それは『二人セゾン』の始まりを意味するポーズであった。

「『二人セゾン』のとき、イヤモニをしているんですけど、それを通り越して客席からザワザワしている感じが伝わるんです」(尾関)

『二人セゾン』で会場をしっとりと包み込むと、『Nobody』ではショーケースのような場所で1期生たちが色気あふれるダンスを披露。しなやかな踊りに観客たちは魅了された。

「『Nobody』は踊る場所が合わせ鏡になっていて面白かったです。でも、こちらからステージを観てもお客さんではなく、ずっと反射している自分が写っていて(笑)。ステージに立っているのに何だか不思議な感覚でした」(菅井)

スポットライトに照らされた電話機から鳴り響く呼び出し音。菅井友香が不審そうに受話器を取ると、またしてもメッセージが現れる。

「キミタチハアイヲシンジテイナイノカイ?」

意味深な言葉の後に流れたのは『I’m out』。「欅共和国」など笑顔で楽しそうなメンバーたちの写真が画面に映し出されるが、どれもノイズが入ったり、歪んでいく。
さらに最後には全員が元いた檻の中に戻ってしまう。その光景に、彼女たちが全員で無事に脱出できるのか不安になってしまう。

そんな中、マントのような衣装にチェンジして『エキセントリック』がスタート。ステージにはたくさんの扉があり、そこからメンバーたちとタイポグラフィーによる歌詞が縦横無尽に出入りする。そもそもこの世界に出口なんてあるのか? それでも彼女たちはひたすら出口を探す。そして、ステージ前方の扉から出てきたのはグループ最年少・山崎天(※「崎」の右は「立」が正式表記)。他のメンバーとの年齢差を感じさせない堂々としたパフォーマンスは、欅坂46、そして出口の見つからないこの世界の希望のようにも思えた。

その後、突如として電車の発車音が鳴る。それは、『月曜日の朝、スカートを切られた』の始まりの合図であった。ステージは映像によって電車へと変わり、その中でパフォーマンスするメンバーたち。そして、センターを務めた守屋茜の魂のこもった叫びが観客たちの心を貫いていく。巨大な遮断機が降りてきて曲が終わると、またしてメッセージが流れる。

「デグチハミツカッタカナ? ソレハキミノスグソバニアル イマハミエナイダケ」

物語はゴールへ向かって加速を始める。衣装のマントが脱ぎさられ、戦闘服のような服装へと変化し、『大人は信じてくれない』へ。火柱が立ち上がるステージでキャプテン菅井がセンターに立ち、鬼気迫るパフォーマンスを披露。普段の彼女からは想像のつかない迫力に観客たちも圧倒されていた。

そして、会場にの音が鳴り響くとさらなるメッセージが映し出された。

「コノカミナリガキミタチニトッテサイゴノチャンス ミズカラヌケダシテミロ」

大きな落雷音とともに『避雷針』が流れる。この『避雷針』は8月27日の大阪公演からステージに変化が起きていた。そこにはどこか見覚えのある後ろ姿があり、その彼女が振り向くと客席から震えるような歓声が上がる。怪我で不参加を発表していた平手友梨奈がステージに立っていたのだ。

「平手さんが参加するというのは大阪公演の前日に聞きました。ファンの方も喜んで下さると思ったし、ツアーに全員で参加できたってことがすごくうれしかったです」(田村)

佇んでいるだけなのに目を奪われ、彼女の動き1つひとつに心奪われる。この後、一体何が起こるのかとワクワクしてしまうほど、『避雷針』のパフォーマンスが短くも長く感じた。怪我のため、この曲だけの参加となるが、その1曲だけで平手は大きな爪痕を残したのだ。

またしても鳴り響く落雷。その雷が檻を管理していた電気系統に影響を与えたのか、出口と思われる扉の鍵が「LOCK」から「UNLOCK」へと切り替わる。

「トビラノムコウニハ ウツクシクモヘイボンナヒビ」

メッセージとともに、メンバーたちは歓喜の声をあげ、ついに檻から脱出をする。様々な困難を乗り越え、彼女たちはこの世界から見事逃げ出したのだ! と思われた……。

「コノセカイハタノシンデモラエタカナ? ダケドキミタチニハ モウイチドサイショカラ ヤリナオシテモラウヨ」

これまでのライブ映像が高速で巻き戻り、聞き覚えのあるOVERTUREが逆再生で流れる。あまりにもステージに夢中になり忘れてしまっていた。この世界が“あべこべ”で“逆転”する世界だったということを。

再び照らされたステージには最初と同じように檻が置かれていた。しかし、そこにいるのはメンバー全員ではなく、たった1人だけ。最初に手鏡を持っていたメンバーであった。

「最初に手鏡を持っている子がこの世界の謎に気付いちゃうんですよ。鏡を見ていて自分の正面の顔じゃなくて、後頭部が見えてしまう裏返しの世界だって。そこからみんなと一緒にいるけど1人だけ違う世界に飛んじゃっていて脱出できない。最初のその話を聞いたときはゾッとして鳥肌が立ちました」(菅井)

静かな空間の中、取り残された者の表情が映し出され、「END」の文字とともにライブは終了する。公演ごとに替わる、取り残されるメンバーの表情は不安な顔もあれば、立ち向かうかのような顔もあった。もしかすると、この物語の終わり方はBAD ENDなのかもしれない。しかし、たった1人でもこの世界に立ち向かう新たな物語にも思えた。これまでどんな困難が起きようと乗り越えてきた彼女たちならきっと脱出できる、そう感じさせられた。

映画を観ているかのような重厚で複雑な世界観で展開された今回のツアー公演。東京ドーム公演への期待が高まる中、急遽、欅坂46にとって大きな変化が訪れた。福岡公演翌日には坂道研究生がお披露目され、今後、乃木坂46、欅坂46、日向坂46に配属されるという。さらに、9月8日には9thシングルの発売が発表されるとともに、これまで全員選抜を行ってきたグループにとって初の選抜制度が導入されたのだ。

ツアー開幕時と同じように期待と不安が立ち込める中、東京ドーム公演へと時計の針は進む。そして、9月18日、19日、いよいよ伝説のライブとなるその時を迎えた──。

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後編の東京ドーム公演レポートは9月30日(月)発売の「月刊エンタメ」11月号に掲載。キャプテン・菅井友香が表紙を務め、ツアー、そして選抜発表について語る。さらに、全国ツアーで公演を行った5大都市を舞台に、出身メンバーをグラビア撮影。東京・菅井友香、宮城・石森虹花、神奈川・尾関梨香、大阪・田村保乃、福岡・森田ひかるの計5人による大ボリュームグラビアとインタビューが掲載されます。グループにとって大きな変化が訪れたこの夏。彼女たちの軌跡を追う。

▽欅坂46 夏の全国アリーナツアー2019セットリスト
1.アンビバレント
2.風に吹かれても
3.語るなら未来を…
4.Student Dance
5.東京タワーはどこから見える?
6.君をもう探さない
7.もう森へ帰ろうか?
8.キミガイナイ
9.二人セゾン
10.Nobody
11.I’m out
12.エキセントリック
13.月曜日の朝、スカートを切られた
14.大人は信じてくれない
15.避雷針
EN.危なっかしい計画

▽「月刊エンタメ」11月号
「欅坂46 夏の全国アリーナツアー2019」大特集号
9月30日(月)発売

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