現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』(総合・月曜~土曜8時ほか)。物語は第15週を終え、幼かった鈴子もすっかり大人の”スズ子”へと成長した。
今後に注目が集まる中、今回は『ブギウギ』に登場してきた”家族”にフォーカス。スズ子がこれからどんな家族を作るのか想像を巡らしながら、物語の中で描かれた様々な家族の形を振り返ってみる。

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まずは、主人公・スズ子の家族を見てみよう。花田家の長女として父、母、弟と共に育ったスズ子。だが、両親の実家・香川で自分は花田家の子ではないと知らされる。生みの親・キヌ(中越典子)は既に新たな家庭を築いており、複雑そうなスズ子の表情を覚えている視聴者も多いだろう。
『ブギウギ』では、主人公であるスズ子がいわゆる”普通”ではないと捉えられがちな環境で立派に育ち、成長している姿が描かれている。それが、すなわち「血のつながりは家族の絆に影響しない」ことの証明となっているのだ。

そしてスズ子が自分の生い立ちを知るずっと前から、自身の生い立ちに悩んでいたのが親友・タイ子(清水胡桃/藤間爽子)だ。タイ子は芸者である母の妾の子として生まれ、そのことをたびたび同級生にからかわれていた。のちにタイ子は自分自身も芸者となり、妊娠を報告。「スズちゃんとこみたいな、賑やかな家庭を作りたいわ」と話していた。
だが、子どもの父親と籍を入れているのかどうかは明らかになっておらず、タイ子が理想の家庭を作れているのか、少し心配になる点である。

長らく出生も本名も不明だった謎の男・ゴンベエ(宇野祥平)は、第40回でようやく正体が明らかに。はな湯を訪ねてきた光子(本上まなみ)から、両親を亡くし、若旦那として呉服屋を経営するも借金を抱えていたことが語られたのだ。ゴンベエ自身は記憶をなくしたままだが、光子と結婚してはな湯を継ぐことを決断。”はな湯”という一つの大きな家族を背負うことになった。

また、第53回ではな湯の常連客・アホのおっちゃん(岡部たかし)とアサ(楠見薫)が結婚したことは記憶に新しいだろう。
まさかこのタイミングでこの二人が?と驚いたが、「何歳になっても家族を作ることはできる」というメッセージが込められていたように思える。

USKに入団したスズ子は、ここでも様々な家族の形を知ることになる。同期であるリリー白川(清水くるみ)は自他共に認めるお金持ち。だが、父親にUSKでの活動を反対されていることに悩んでいた。反対に、同じく同期の桜庭和希(片山友希)は家の仕事を手伝いながら稽古に参加する日々。一時は、USKを辞めることも視野に入れるまでに追い詰められていた。


そして、USKの先輩・大和礼子(蒼井優)については、親と縁を切りUSKに入団した経緯が描かれた。ストライキ中、劇団員の家族が山寺に訪れたときに一人寂しげな表情を見せていたのが印象的だ。退団後は、ピアニスト・股野(森永悠希)と結婚し子どもを授かったが、その後すぐに病死してしまう。礼子がどんな家族の形を思い描いていたのか気になるが、礼子の思いの分も、股野がアタフタしながら愛を込めて子育てをしているに違いない。

スズ子が上京してからの東京編で印象的だったのは、下宿を営むチズ(ふせえり)と吾郎(隈本晃俊)夫婦。二人は子どもを授からなかったと話しており、スズ子と秋山美月(伊原六花)を本当の娘のように可愛がった。
東京で目まぐるしい生活を送る二人にとって、チズと吾郎との食事の時間は、心安らぐ瞬間だったはず。ここでも、血のつながり云々がなくても作れる”家族の形”について考えさせられた。

さらに、登場するたびに”良いコンビ”と話題になるのが、善一(草彅剛)&麻里(市川実和子)の羽鳥夫婦。二人のテンポの良い掛け合いや和気あいあいとした雰囲気は、どこか花田家を思い起こさせる。スズ子も居心地がよいのか、たびたび夕飯をごちそうになり、すっかり羽鳥家に馴染んでいる。第57回では、麻里が3人目の子どもを妊娠。
さらに賑やかになるであろう羽鳥一家が物語の楽しみの一つとなっている視聴者も多いはずだ。

また、スズ子の初恋の相手・松永(新納慎也)が、スズ子の告白を「アメリカにパートナーがいる」と断わっていたのを覚えているだろうか。パートナーの性別や国籍は明らかになっていないが、アメリカナイズの松永から出た「パートナー」という言葉は、令和の時代に”家族の形”を考える上で、もっと普遍的になっていくべき言葉と言えるだろう。

他にも、スズ子の付き人となった小夜(富田望生)は「親に捨てられた」と話し、おでん屋の伝蔵(坂田聡)は妻に逃げられ独り身に。マネージャー・五木(村上新悟)は元々遊び人だったが、夫を亡くした女性とその子どもと一緒になることを決意する。

このように『ブギウギ』では、主役級のキャラクターはもちろん、脇役の家族の存在も丁寧に描かれている。人の分だけ家族の形があり、その縁はどこまでもつながっていくのだ。それは血縁関係だけではなく、ホッと落ち着ける場所や気を許せる相手がいるならば、それはもはや家族同等の存在なのではないだろうか。

そして”家族”とは、常に一緒にいなければいけないわけでも、嫌いになってはいけない存在でもない。無理に家族をつくる必要もない。家族の存在を明らかにしてもしなくてもいい。『ブギウギ』はそんな当たり前の、でも現実ではなかなか当たり前と認識されていない、家族に対する多様な価値観がしっかりと存在している世界のように思う。

スズ子は現在、村山興行のお坊ちゃま・愛助と交際中。女手一つで大切に育てられてきた愛助と、もはや家族の一員でもあったはな湯の常連客と賑やかに育ったスズ子。違う家庭で育った二人は、これからどんな家族を作っていくのだろうか。

常に強い”スズ子愛”を語る愛助は、きっとこれから先”福来スズ子”の一番のファンであり、”花田鈴子”の最高の家族となってくれるだろう。第1回で放送され話題となった「赤子を抱くスズ子と茨田りつ子(菊地凛子)」のシーンにどうつながっていくのか。新たな家族の誕生をじっくりと見守りたいと思う。

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