【関連写真】初回放送に反響続々、原田泰造主演ドラマ『おっパン』場面カット
2話のラスト、高校2年生で現在引きこもり状態の息子・翔(城桧吏)が、女性的なファッションをして家の中にいる姿を見かけた誠。そのことが気になって仕方のない誠は「爪を塗ってみたり、女の子みたいな服装を好むということは、翔はその…女性になりたいんだろうか」と大地に相談する。これに大地は「誠さんは『翔くんがトランスジェンダーだ』と思ってるんですか?」と聞くと、「やっぱり翔はその…トランスジェンダーなのかな」と返す。
ただ、大地はすかさず「いえ、そんな簡単なものじゃないんですよね」とキッパリ。続けて、「女性的な服装がしたいけど心は男性で、女性を好きになる人もいます」「誠さんみたいに男性の体で生まれて小さいころから、自分でも『男だ』という自覚があって、好きになった相手が全て女性って人には想像しにくいかもしれませんけど」という。
さらには、「そういう大多数の人と違う人生を生きる人は、一つ一つ『自分って何だろう?』『本当はどう感じてるんだろう?』って確かめながら前に進んでるんです」「もしかしたら翔くん自身もまだ悩んでいて、『自分がどうありたいのか?』『周りにどう接してほしいのか?』、まだ決まってないのかもしれません。時間をかけてコミュニケーションをとっていくのが良いと思います」と語った。
大地の言葉を聞くと、他人のセクシャルを決めつけることの危険性を感じずにはいられなかった。トランスジェンダーをはじめ、レズビアンやバイセクシャルなど、言葉自体は広がりを見せており、他人のセクシャリティを理解しようという機運は高まっている。とはいえ、誠のように「女性的なファッションを好む男性であればトランスジェンダーなのかもしれない」と考える様子を見ると本当の意味で理解が進んでいるとは言い難い。
結局は“男らしく”や“女らしく”というテンプレートに“トランスジェンダーらしく”といった枠が増えただけに過ぎない。
加えて、女性的なファッションが好みだけど恋愛対象は女性の男性もいるなど、セクシャルマイノリティと一括りにして理解した気になることも避けなければいけない。翔が仮にトランスジェンダーだったとしても、翔には翔なりの好みや考え方がある。それはセクシャルマイノリティに限らず、全ての人に言えることである。その人を理解するには知識も必要ではあるが、コミュニケーションを重ねていく以外にないのではないだろうか。
もちろん、その人を理解するために時間を費やせるほど、時間やメンタルに余裕のない人は少なくない。どうしても枠に当てはめるほうが楽であることは間違いない。それでも、理解しようとコミュニケーションを取れなくても、セクシャリティだけではなく何かを押し付けずに「そういう人もいるんだな~」くらいの感覚を持つだけでも、その人の負担を減らせるように思う。『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』という突飛なタイトルではあるが、自分の言動を改めたいと思わせてくれる作品だ。
【あわせて読む】田中圭演じる春田と牧のW不倫の行方は?“おっさん”を奪い合う恋愛劇『おっさんずラブ-リターンズ-』