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そんななかで、今作「君と世界が終わるまで」シリーズは、シーズン1は地上波で放送され、シーズン2以降はHulu配信ドラマとして継続。ついには劇場版が制作されるほどまで拡張された。さらにシーズン5も制作中と、近年の日本テレビのドラマ作品としては、かなり力が入った展開のさせ方となっている。
人気を維持できるほどの魅力は実際にある作品で、シーズンを増すごとに、いつしか腐れ縁感も芽生え、まんまと続きが気になる構造となっている。今作を観たいがためにHuluに加入する人も少なくないはずで、Huluにとっては、今や目玉タイトルのひとつでもある。
それでいて和製「ウォーキング・デッド」ともいえる作品としてのおもしろさがある。ネットなどでも指摘されている通り、「ウォーキング・デッド」オマージュなのか、パロディなのかが、ふんだんに張り巡らされているが、逆にそれを利点として受け入れると清々しくも感じられ、より楽しめるようになるのだ。
「ウォーキング・デッド」自体が長く続き過ぎているし、スピンオフもいくつか制作されているため、どうしてもゾンビやディストピアを舞台とした人間ドラマを描こうとすると、内容がかぶってくるのは避けられないのかもしれないが、そうだとしても直接的な描写もいくつかあって、はっきりと意識しているのが伝わってくる。
日本だけに限らず世界的に「ウォーキング・デッド」をこっそりと意識したドラマや映画、漫画が大量にあるなかで、ここまで思い切っている部分は評価に値するのではないだろうか。
特にシーズン2以降は、配信作品ということもあり、ゴア描写も多くなり、女性や子どもも容赦なく餌食になるし、レギュラーメンバーでさえも、いつ命を落とすかわからない緊張感が地上波版よりも圧倒的増したことで、よりコアなファンを獲得していった。
そして今回の劇場版では、ついにひとつの物語が終焉をむかえる。それは竹内涼真演じる主人公間宮響の物語だ。
シーズン4まで観ている人にとっては、同時並行で別の物語が展開されており、そちら側のキャラクターたちと運命が分岐した物語としてシーズン5に繋がっていくことがわかるため、ファイナルでないと思うかもしれないが、あくまで響の物語はファイナルということになる。
さすがにシーズン1から観ていると、響が経験してきた悲惨すぎる出来事の数々が脳裏によぎるため、結末を見届けなければならないという義務感のようなものが働く。しかし、劇場版が初見となると、一応ダイジェスト的なものがあって、大筋は理解できるものの、なかなか映画1本だけでは感情移入が難しい作品とはいえるだろう。
ひとりを犠牲にして世界を救うか、それとも世界を犠牲にしてひとりを救うか……といった、映画やドラマにおいての王道中の王道的テーマを描いているため、プロット的にはそこまで珍しいものはないが、極限の状況下で親になった響が、親とは何か、自分が親として何ができるのかを考え、葛藤しながら、見えない未来よりも、ただそこにあって見える小さな未来である娘をとにかく助けたいという一心で突き進んでいる部分に感情移入することで、より深い楽しみ方ができるはず。
結論として、今作を本当に楽しもうとするなら、全シーズン観ていないと駄目だということだ。
【ストーリー】
希望の塔ユートピア。しかしそこは、人間の欲望が生み出した絶望の塔だった。
ユートピアではこの世界を救い出す唯一の方法、ゴーレムと呼ばれる化け物に対するワクチンを研究していた。特殊な抗体を持つ一人の少女を研究材料にして――。少女の名前はミライ。間宮響の娘。響はユートピアに集った5人の男たちと共にミライを救い出す決心をする。
それぞれ譲れないものを抱え反発もあったが、次第に響の信念に共鳴し、共に戦う決心をする。しかしそこにはタワーの罠と、様々な裏切りが待ち受けていた。父親として覚悟を決めた響は、自らの命よりも大切な子供への想いを胸に、襲い掛かるゴーレムたち、そしてワクチン開発のためには手段を選ばない残酷な人間たちと戦い続ける。そして響には――最期が迫っていた。
【クレジット】
■タイトル:『劇場版 #君と世界が終わる日に FINAL』
■出演:竹内涼真、高橋文哉、堀田真由、板垣李光人、窪塚愛流、橘優輝、吉柳咲良、須賀健太、味方良介、黒羽麻璃央、吉田鋼太郎ほか
■監督:菅原伸太郎
■脚本:丑尾健太郎
■主題歌:#菅田将暉「谺する」(Sony Music Labels Inc.)
■配給:東宝
(C)2024「君と世界が終わる日に」製作委員会
■公開日:2024年1月26日(金)
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