今年1月の『FRIDAY』(講談社)に掲載された撮り下ろしグラビアをキッカケに、芸能界デビューを果した莉乃。16歳で単身京都へ向かい、20歳まで舞妓として活動してきた彼女が、なぜ芸能界という未知の世界へ転身すると決めたのか? 彼女の半生について聞いた。


【写真】元舞妓という経歴で話題、莉乃の撮りおろしカット【8点】

──おばあ様の影響で伝統芸能へ憧れを抱くようになったそうですね。

莉乃 祖母は着物が好きで、よく展示会にでかけていて。そこに好き勝手について行くうちに、着物や和の文化への興味が湧くようになっていました。小学生の頃から三味線を習い始めたりもしましたね。ほかにも進学塾、ピアノ、書道、水泳……覚えてないぐらいに習いごとに通っていました。

──では、舞妓になろう!と思ったのは何がキッカケだったんです?

莉乃 中学1年のとき、図書室を使い興味のある職業について調べる授業があって。当時、将来の夢が何もなく何事にも興味が湧かない人間だったので、何も思いつかずボーッとしていたんです。それで、ふと後ろの棚に目をやると舞妓さんについての本を発見したんです。「へえ、舞妓さんって仕事なんだ」と気になり読んでみたところ、すごく面白そうだなと惹かれました。

──それで本格的に舞妓への道へ進もうと。

莉乃 いえ。両親に「いいかも」と話すことはありましたが、それ以上の感情が浮かぶことはありませんでした。
その後、普通に高校に進学するのですが、その学校が肌に合わず1年経たずに退学してしまい、その後も別の学校に通えずただただ家で過ごしていたんです。そうしたらある日、親が毎日通う地元の温泉でたまたま舞妓さんのドキュメンタリーを見たらしく、「以前舞妓さんになりたいって言っていたよね、挑戦してみれば?」と言われて。その道があったか……と、頭を過ったときには、すでに京都に向かっていました。

──超行動派ですね(笑)!

莉乃 積極的に行動しないと、全くその先動けない人間なんです(笑)。

──花街の文化について疎いので基礎的な話を聞きますが、置屋(仕込み・舞妓が所属して生活する場所)へ入るには、どのような手順を踏むのですか?

莉乃 知人からの紹介じゃないと入れないなど形は様々ですが、私はインターネットで色々と舞妓・芸妓の世界を調べる中で、すごくキレイな方々がいらっしゃる置屋さんを見つけて。そこへ連絡したところ、「○○日に面接しますのでご両親と来てください」と言われ、面接を受けて、合格の通知をいただき……という流れでした。

──合格し、16歳で仕込み・舞妓としての生活が始まります。入ってすぐにお座敷にまつわる芸事は習うのですか?

莉乃 いえ。私もそうだと思っていたのですが、私がいた置屋さんでは「自分が今何をすべきか」を、ひたすら自分で考えることからすべてが始まりました。お座敷では、周りの方への気配りが重要なので、「今、お母さん(置屋における女将さん)と、姉さん(置屋における先輩)が、こう動いたから、私はこう動いて、あれを持って、あそこで待たないと……」と、周囲の動きを見ながら先回りすることが必要で。朝起きてから寝るまで、常に考えて動くことを叩き込まれていました。

──まるで社会人一年目のような生活ですね。


莉乃 本当にそうでしたね。みなさん舞妓=華やかな世界とイメージされると思いますが、お座敷の外以外は、とにかく地味なことの積み重ね。正直、学生生活ではそこまで周囲に目を向ける経験がなく、注意されっぱなしで一日を終える生活を半年は続けていました。

──そうした気の休まらない日々の中、楽しかったことは?

莉乃 仕込みの時代は、お稽古事の時間と一週間に一度だけ髪を解く日以外は外出できなかったので、外に出る瞬間が楽しかったです。普段から自分が食べたいものは食べられないので、外に出たら必ずコンビニに行って、スイーツやカップ麺と、とにかく今自分が食べたいものを大量に買っていました。この時だけは年相応の自分に戻っていたと思います。あと、漫画好きの姉さんと仲良くなり、寝る前に一緒に好きな漫画について話しているのが心休まる一瞬でした。

──話に聞くには、携帯電話は所持してはいけないとか。思春期の時分で世間と離れた生活に、色々心細くなったりは?

莉乃 これは置屋さんによってまちまちだと思いますが、私は持っていませんでした。一般的なニュースはお客さんからお話を聞いたり、姉さんがテレビをつけているのを横で見ていたのである程度は知っていましたが、世間では何が流行っているかは全く知りませんでした。とはいえ買い物の際には、お母さんと連絡する用の携帯を持たせてもらっていて、そこでこっそりインスタを見ていたんです(笑)。そこで友だちが髪の毛を染めたり、車を運転する姿を見て、「私、一人世間から取り残されているな」と、少し寂しく感じていましたね。


──20歳を迎え芸妓の道へと進まず地元に戻ると選択されましたが、次はどのような道を歩もうと?

莉乃 とりあえず大検は取得していたので、東京の大学に行こうとバイトを始めました。ただ正直一般社会で必要な経験も知識もない上に、何を学ぶにも興味が湧かないため、考えなしにただ大学に通うだけなら時間をムダにしてしまうかなと。そんな私を見かねた親が都内の美容系専門学校を勧めてくれて、そこに通うことにしました。ただ、自主的に選んだものではないので、結局興味が湧かないまま全く身に付きませんでした(苦笑)。そんなとき、在学中に友人を介して今の事務所にスカウトしていただいたんです。

その瞬間は、「どういうこと!? これは詐欺じゃない?」って不安でした(笑)。ただ、本当に夢がないまま歳を重ねていく不安を感じていたタイミングだったので、一つの嬉しいご縁をいただいたなとお話を受けました。

──莉乃という名前はどのような意味を込めて付けられたのでしょう?

莉乃 事務所の偉い方々が、「古風な名前を」と色々と提案してくださって。相談しながら、一番ステキだなと思う名前を選びました。

──さて、芸能の世界に足を踏み入れたことで、きっと目標や夢が芽生え始めていると思います。この先どういう時間をこの世界で歩めていきたいですか?

莉乃 こうして、普通では体験できないことをさせてもらっている以上、今まで以上に知名度をつけて、多くの方に見ていただけるようグラビアで行けるところまで行ってみたいという目標ができました。あと、今事務所の方々と伝統芸能に関したお仕事に挑戦してみるのはどうだろう?という話をしていまして。
今まで培ってきたことを、活かせたらステキだなと考えています。

──それはいいですね! お座敷での経験が活きてくると。

莉乃 それが、実のところ歌も踊りも苦手で、正直に今のところ自分を最大限に発揮できるものは……ありません(笑)。私にしかない特技・特色を、この先のあらゆる活動を通じて見つけられたらいいなと考えています。何より芸能界という初めての世界を自分の目で見て触れて学んで、この先の未来を自分で作っていけたらいいなと思っています。

(取材・文/田口俊輔)
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