【写真】『カラーパープル』場面写真【10点】
では何かというと、アリス・ウォーカーの原作を舞台化したものの映画化である。
例えばジョン・ウォーターズのカルト映画『ヘアスプレー』(1988)をミュージカル舞台化して、さらにそれを映画化した『ヘアスプレー』(2007)や、現在アメリカで公開中の『ミーン・ガールズ』のように、逆輸入ミュージカルではないのだ。
さらに言えば、1985年版『カラーパープル』が公開された当時は、まだアカデミー会員の白人の割合が圧倒的に多く、それでいて会員数が極端に少なかった。アカデミー賞では評価されたものの、黒人のルーツや信仰心を描いた作品を、娯楽映画監督のスピルバーグが撮ったことに対する反発が多く、黒人ユーザーからは、かなり酷評された。
それもあって、作品の本質を改めて描こうとして制作されたのが舞台版なのだから、スピルバーグ版のリメイクという印象が付いてしまうのは、趣旨とズレてしまう。”舞台版の映画化”と改めて言ってもらいたい。
そして、ファンテイジア・バリーノにとってのセカンドドリーム映画として観ることで、さらに感動が増すはずだ。
今作で主演務めたファンテイジア・バリーノというアーティストは、グラミー賞受賞経験者であり、洋楽ファンであれば彼女のパワフルな歌声を聴くのは初めてではないと思うが、演技を観たという人はかなり少ないのではないだろうか。それもそのはず、劇場公開映画に出演したのは、今回が初めてなのだ。
もともとファンテイジアといえば、オーディション番組「アメリカン・アイドル」シーズン3の優勝者として知られているが、シーズン3に出場していたもうひとりのビッグアーティストがいる。それはジェニファー・ハドソン。
「アメリカン・アイドル」においては、ジェニファーはトップ7で敗退するものの、『ドリームガールズ』のオーディションではエフィ役を見事に獲得する。
実はそのオーディション、ファンテイジアも受けていたのだ。
ジェニファーはその後、アカデミー賞助演女優賞を受賞し、歌手としても成功していくが、ファンテイジアはスクリーンデビューを逃してしまったという経緯もあり、その後もなかなか映画出演には恵まれなかった。
ファンテイジアは、今作の舞台版にも出演しているが、初演キャストというわけではなく、2007~2008年のオフブロードウェイ版、2010年の全米セカンドツアー版のキャストである。ツアー版キャストというのは、ブロードウェイでの上演ではなく、ツアーとしてアメリカ各地を回るキャストのことである。
そのため舞台版では2015~2017年にかけてブロードウェイでリバイバル公演されていたシンシア・エリヴォとジェニファー・ハドソンの印象が強いかもしれないし、実際にサントラがリリースされたのも初演のラ・チェンズ版とシンシア&ジェニファー版のみとなっており、ファンテイジア版はリリースされていなかった。
つまり今作『カラーパープル』は、ファンテイジアにとって、劇場用映画初主演であり、長年「カラーパーブル」という作品に携わってきたきたことが再評価された、セカンドドリーム実現の記念すべき作品なのだ。
映画用に制作された新曲「SUPERPOWER (I)」も、そういった背景を知ってから聴くと、より味わい深い曲に感じられるはずだ。
そのほかにも同じくグラミーアーティストであるH.E.R.や実写版『リトル・マーメイド』でも美声を披露したヘイリー・ベイリー、2015年のリバイバル版にも出演していたダニエル・ブルックスなども集結し、新たな『カラーパープル』を誕生させたのだ!!
【ストーリー】
優しい母を亡くし横暴な父の言いなりとなったセリーは、父の決めた相手と結婚し、自由のない生活を送っていた。さらに、唯一の心の支えだった最愛の妹ネティとも生き別れてしまう。そんな中、セリーは自立した強い女性ソフィアと、歌手になる夢を叶えたシュグと出会う。彼女たちの生き方に心を動かされたセリーは、少しずつ自分を愛し未来を変えていこうとする。そして遂に、セリーは家を出る決意をし、運命が大きく動き出す……。
【クレジット】
製作:オプラ・ウィンフリー、スティーブン・スピルバーグ、スコット・サンダース、クインシー・ジョーンズ
監督:ブリッツ・バザウーレ
原作:アリス・ウォーカー
出演:ファンテイジア・バリーノ、タラジ・P・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ、H.E.R.、ハリー・ベイリーほか
原題:Color Purple
配給:ワーナー・ブラザース映画
上映時間:141 分
© 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式 HP:colorpurple.jp
2月9日(金)より全国公開
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