【画像】「生物的にレベルが違う」オーディションで華麗な足技を見せる江畑秀範【5点】
ゴリゴリの競技者である江畑は、なぜBreaking Downへの出場を決めたのか? オーディション時には「さらなる刺激を求めて」と語っていたが、改めて本人を直撃したところ、さらに踏み込んで舞台裏を解説してくれた。
「直接のきっかけとしては、東京オリンピックが終わったことが大きかったです。アマチュア競技の選手というのは、企業の支援があるから練習に没頭できる環境が作れるものなんですね。ところが五輪後もコロナの影響が続いたこともあり、スポンサー離れが加速化していった。
ぶっちゃけた話をすると、テコンドーはマイナー競技であるだけでなく、慢性的にお金が不足しているんですよ。選手は競技を続けたくても続けられないという現実があるんです」
テコンドーでは中軽量級の選手層が圧倒的に厚い。80キロ級と87キロ級を主戦場にしていた江畑は、世界大会で実績を残さないと日本代表に選ばれることもなかった。しかし、海外遠征には1回につき30~50万円ほどの経費が必要となる。
それでもコロナ前は企業のスポンサードによって年5回ほど出場していたそうだが、状況は激変。
「この閉塞した状況を崩すためには、結局、テコンドーをメジャー化させていくしかないんですよ。スター選手を輩出して、世間の注目を集めないと、国からも助成金が出ないですし。僕はそこに対してすごく危機感を覚えているから、今回は影響力のあるBreaking Downへの参戦を決めました。これはもう自分に与えられた使命。競技を背負って闘うつもりです」
2020年11月、江畑はRIZINでキックルールのデビューを果たす(結果は判定負け)。その後も巌流島では場外に投げられるTKO負け、MMAルールで参戦したDEEPでは1勝1敗の成績を収めている。もちろん本人は結果に納得していない。プロの洗礼を浴びる中、忸怩たる思いを抱えたようだ。
「最初は完全にプロ転向するつもりだったんですけど、考えが甘かったですね。同じコンタクトスポーツとはいえ、テコンドーとは完全に別物でした。蹴り技ひとつ取っても、距離感や効かせ方がまったく違うなと。
顔面パンチやスタミナ面の対応もあるし、MMAともなると組技や寝技も学ばなくちゃいけないわけですから」
そんな中で目に留まったのが、Breaking Downの存在だった。何よりも江畑にとって大きかったのは、試合時間が1分間というルール。ここならテコンドーの技術でアジャストできると考えたのである。
「テコンドーというのは足技を中心とした競技。他の打撃系格闘技との大きな違いは、圧倒的に疲れるということなんです。足だけでの攻撃って、手も使えるときの3倍体力を消費すると言われていますから。一般的にキックボクシングは3分3ラウンド、MMAだと5分3ラウンドや5ラウンドが多いですよね。
蹴りだけで3分とか5分攻撃し続けるのって絶対に持たないんですよ。でもこれが1分だけだったら、キックでずっと攻められる」
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