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「キャスティングは本当に難しかったです。これまで菊地凛子さんとはお仕事をしたことはなかったんですが、ぜひ一緒に仕事ができればと思っていました。菊地さんの過去の出演作を見て、菊地さんがりつ子に合うんじゃないかと思ったんです」
淡谷のり子と言えば、ムーディーにしっとりと歌い上げるステージが魅力の一つだ。菊地はどのようにして、独特な雰囲気とそれに負けない歌唱力を習得したのだろうか。
「淡谷のり子さんの『別れのブルース』と『雨のブルース』が、とても難しい歌なんです。この歌をしっかり歌っていただくために、菊地さんには物凄い回数の歌の練習をしていただきました。菊地さんはすごく明るく真面目な方なので、淡谷さんのお墓参りに行ったり、何度もレコーディングをしたり、熱心に役作りをしてくれました。そのおかげで、りつ子は魅力的かつチャーミングな役になったんじゃないかなと思います」
一見怖そうに見えるが、実は人情深く、スズ子のことを信頼しているりつ子。福岡チーフプロデューサーは、スズ子とりつ子の情熱の違いをこう表現した。
「僕の中のイメージは、スズ子は赤く燃える炎で、りつ子が青く燃える炎でした。どちらも温度は高いんですが、見え方が違うキャラクターを目指していました」
確かにスズ子は自分の持つエネルギーをバンッと舞台にぶつけるタイプだが、りつ子は胸の内に秘めた静かなる思いを淡々と、それでいて質量を持って放出しているように見える。
「台本を読んだ感じでは、りつ子はピリッとした怖いイメージだったんですが、菊地さんがピリッとした台詞の中にチャーミングを感じる演技をしてくれて、それがとても良かったです。りつ子というキャラクターは複雑なところもあったと思うんですが、口ではそういうものの…という内面の部分もしっかりお芝居していただいて、深みのあるりつ子になったのではないかなと思いました。歌の場面もとても素敵に仕上がったと思っています」
りつ子の可愛らしさや人間らしさが伝わり、視聴者に愛されるキャラクターになったのは、菊地の演技力があってこそ。福岡氏は、菊地と趣里が仲を深めたからこそ生まれた“伏線回収シーン”の秘話も語ってくれた。
「『第1回の『東京ブギウギ』を披露する前の楽屋のシーンは、比較的早い時期に撮影したものなんです。ですが、第91回に放送された同じシーンは新しく取り直したものです。第1回に撮影したときよりも二人の仲がより深まって関係性が出来上がってから撮影したので、お互いに柔らかさがあったと思います。菊地さんの優しい眼差しも印象的でした」
映像を見返してみると福岡氏の言葉通り、第91回の方が二人の顔つきや視線、空気感にふんわりと暖かな物を感じる。
「菊地さんと趣里さんは、撮影を通してとても仲良くなっていて、りつ子とスズ子のやりとりをすごく楽しんでくれていました。りつ子とスズ子の『思ったことは何でもいいあえる仲』をしっかり描きたいと思っていたので良かったです。
良きライバルであり、先輩・後輩であり、同志であるスズ子とりつ子。二人の関係性やお互いに対する気持ちの変化にも着目すると、また、違った角度で『ブギウギ』を楽しめる。第1回を改めて見返してみても面白いかもしれない。
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