【写真】マーベル初の本格ミステリーサスペンス、『マダム・ウェブ』場面写真【8点】
スパイダーマンの世界観で展開する新作『マダム・ウェブ』が公開されました。「マーベル初の本格ミステリーサスペンス」という売り文句の通り、アメコミ映画としては新たな方向性を打ち出した作品になっています。
ただ、映画業界ではいま「スーパーヒーロー疲れ」ということがよく言われていて、数年前までは公開すれば大ヒットしていたアメコミ映画が、軒並みヒットしづらくなっているという状況になっています。
確かに、アメコミ映画は作品の本数が増え続けていて、追いかけるのが大変。劇場公開作だけでも膨大な数があるし、さらに配信サイトではドラマシリーズが何シーズン分もあったりする。
さらに複雑なのが、アメコミと映画業界についての権利関係で、これもある程度頭にいれておいたほうがいいんですね。
例えば『スパイダーマン』は、マーベルという出版社から出ているコミックが原作なので、映画化されると『マーベル・シネマティック・ユニバース』、通称MCUの世界に属しています。ただ、それとは別に『ソニーズ・スパイダーズ・ユニバース』、SSUというカテゴリーもあって、それの中心にスパイダーマンがいるんです。
MCUは、2008年に公開された『アイアンマン』から始まっています。しかし、スパイダーマンは、それ以前から実写映画化されていて、特に2002年公開のサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』は大ヒットしました。
スパイダーマンの映像化の権利はソニー・ピクチャーズが保有していて、その後も『アメイジング・スパイダーマン』シリーズなど、独自に作品を作り続けていたわけです。
この権利問題がネックとなり、MCUにスパイダーマンは関われなかったんですが、シリーズが盛り上がってくるとMCUにもスパイダーマン登場を待望する声が大きくなってくる。
一方で、ソニーはソニーでスパイダーマンの世界観で繋がっている映画を作り続けていて、その作品群をSSUと呼んでいます。僕は、このSSUがけっこう好きで、ユニバースとしては後発なんだけど、ソニーは独自ブランドでやりたいんだな、わかるよ、と応援したい気持ちになっているんです。
『マダム・ウェブ』は、このSSU映画の第4作目という位置づけになります。ダコタ・ジョンソンが演じるキャシーという救命士の女性が、あるキッカケで予知能力に目覚め、謎の男から命を狙われている3人の少女を守るべく、運命を切り開いていくという展開です。
スパイダーマンの原作に出てくるマダム・ウェブは凄い能力を持った盲目の高齢女性なんですが、この映画版ではそれがどのように描かれるのか。この3人の少女の未来の姿も含めて、今後のSSUでどう繋がっていくのかも楽しみです。
SSUやMCUなどのユニバースものは、それぞれ単体で売り出していたヒーローたちが、実は同じ世界を共有していて、みんな集まって大活躍するというのがカタルシスなわけです。
これはハリウッド映画では非常に斬新な設定とされていましたけど、僕らの世代でいえば「藤子不二雄まつり」とかで味わったことがあるんですよ。子供ながらに、ドラえもんとパーマンとハットリくんが一緒に出てる! と大興奮していました。他にも、歴代の仮面ライダーが勢揃いとか、ウルトラ兄弟とか、そういうモノを観て育ってきているんで、わりと受け入れやすい設定だったんですね。
逆に『アベンジャーズ』などの集大成的な作品から入って、そこで個々のキャラクターを知って、気になるヒーローを掘り下げてみよう、というのもユニバースの楽しみ方のひとつです。僕はそれを「ウィー・アー・ザ・ワールド方式」と呼んでいるんですけど、まずはマイケル・ジャクソンを目当てに聞いて感動して、あれ、ここのパートを歌ってる人が気になるな、じゃあちょっと掘ってみよう、と、それぞれの楽曲を探してみたり。
サブスク時代になって、こうした楽しみ方はより気軽に出来るようになりました。いつでも過去作に遡れるし、補完するようなドラマシリーズも観れる。ユニバースものというのは、本当にいまのご時世にあったスタイルではあるわけです。
そこで『マダム・ウェブ』を観る際には、まずはSSUの関連作をチェックしていただきたいですね。スパイダーマン最大の敵といわれた『ベノム』がメインの映画が2作あります。それにちょっと地味ですが『モービウス』。次に映画化されるという『クレイブン・ザ・ハンター』もそうなんですが、SSUはスパイダーマンが中心なので、どうしても敵キャラばかりが映画になってしまうんですよね。そこで、ようやくスパイダーマン側のキャラが出てきたというのが今回の『マダム・ウェブ』といえます。
そして、アニメの『スパイダーバース』シリーズも必見ですね。これはSSUには入ってないんですが、ソニー・ピクチャーズ製作で、いま三作目となる『ビヨンド・ザ・スパイダーバース』です。
それらの作品も踏まえて1番見ていただきたいのは、MCUのスパイダーマン単独作の第3弾『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』です。
アメコミには「マルチバース」という設定があって、いま自分たちがいる世界とはちょっと次元が違うパラレルワールドがいくつも存在していて、それぞれが影響しあっているということになっています。
MCUスパイダーマンでもマルチバースに基づいた様々なドラマが展開していたんですが、この『ノー・ウェイ・ホーム』では、そのマルチバースが過去に実際に製作・公開された映画の世界として登場します。つまり、サム・ライミ監督『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイアと、『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールドが、別次元のスパイダーマンとして、本当に出演するんです。
僕は、あの3人が並ぶ姿をスクリーンで観たとき、脳天がカチ割れるぐらいの衝撃を受けました。そのとき、たまたま隣に映画監督の清水崇さんがいたんですけど、思わず顔を見合わせてしまいましたから。まさにパンドラの箱を開けてしまったというか、現実とフィクションがごっちゃになる初めての感覚を味わったんですね。
映画界はもうネタ切れで、新たなアイディアなんて出ないと言われてたけど、こんなことを思いついて、実行してしまうなんて凄いと感心しました。
あの驚きを期待して、いまもアメコミ映画を観続けているというのもあります。特にSSUは、スパイダーマンを軸に、ベノムもモービウスも出てくる集大成的な作品が待っていると思いますので、目が離せない。
もっといえば、『スパイダーバース』シリーズも絡んできて、アニメと実写の融合というのもあるんじゃないかなと思います。CGの技術がさらに発達して、そこでまた新たな映像革命が起こって、実写とCGのキャラクターが違和感なく共存していたりとか。
それに、昔の日本のテレビ番組でも『スパイダーマン』があったんです。東映が製作していて巨大ロボも活躍する、いかにも日本の特撮番組といったテイストなんですけど、それも一緒に組み込まれるんじゃないか。マニアの妄想みたいな話ですが、そんなことが実際に起こってもおかしくないレベルにまで来ている。
アメコミ映画はちょっと飽きた、といっている方々も、そんな衝撃に備えるという意味で、関連作を観ておいたほうがいいと思いますね。
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