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今月16日、AKB48の柏木由紀が卒業コンサートを開催した。15人のOGと現役メンバー、それに大勢のファンに見送られ、ステージを去っていった。
柏木が郷里の鹿児島県から上京したのは15歳だった。中学校を卒業したばかり。レッスン場と家を往復する毎日が始まった。
デビュー直前、私は柏木を取材する幸運に恵まれた。おそらく初めて受けるであろう雑誌の取材に戸惑いながらも、モーニング娘。
チームBの一員として活動し始めると、数か月後にはシングル『BINGO!』の選抜に召集される。そのMV撮影に密着すると、並みいる先輩たちに混ざって、ドギマギしているのが手に取るようにわかった。
柏木は期待された新人だった。2009年、デビューから3年目で大手事務所に移籍。初のソロ写真集をリリースしている。撮影地は沖縄。私はスタッフの一員として同行した。すでに雨女の定評があった柏木だったが、柏木の到着と同時に沖縄は梅雨明けし、一足先にロケハンのために現地入りしていたカメラマンと私を驚かせた。その写真集は出版社の新記録を作る大ヒットを飛ばし、年間写真集売り上げ1位に輝いた。
写真集撮影時は、1回目のAKB48選抜総選挙が開催される直前だった。後にAKB48名物となる総選挙だが、この時点ではまだ海の物とも山の物ともつかないイベントと思われていた。
その総選挙で、柏木は9位にランクイン。2回目は8位。2年連続で神7入りを逃すと、普段は悔しさを表に出さない柏木もさすがに発奮した。いや、ファンが黙っていなかった。
第3回総選挙では3位に食い込み、世間をあっと言わせた。「翌朝のニュースで私の名前が呼ばれているのに気づいて、目が覚めた」と本人は回顧している。柏木の名前が世に広まった最初のターニングポイントである。
3位になっても、雑誌の表紙を飾るようになっても、CMに出まくっても、日本レコード大賞に輝いても、柏木は偉ぶるようなことはなかった。アイドルとして成長はしていったが、ガツガツした素振りは見せず、ただアイドル道をひた走っていった。
先週の卒コンで販売されたパンフレットで、私は柏木を取材した。そこで印象的だったのは、「AKB48を卒業しても、ファンの方の前ではアイドルでいたい」と話したことだ。
柏木は、昨年末の『NHK紅白歌合戦』に出演した伊藤蘭を見て、衝撃を受けたという。当時からのファンの前で往年のヒット曲を歌う伊藤蘭。ファンは熱狂的なコールを送り、紙テープを投げた。その世界こそ、アイドルになる前から柏木が憧れ続けてきたものだ。実際、アイドル界に足を踏み入れ、紙テープこそ飛ばないものの、ファンからの声援を浴び続けた。17年間もアイドル業を堪能したはずなのに、卒業してもなお、このレジェンドはソロでアイドルを続けたいというのだ。
現在32歳。年齢をとやかく言う向きもあるだろう。しかし、柏木がその声に耳を貸すことはない。自分がステージで歌うことで、誰かに幸せを届ける。
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