先日、愛知県の常滑というところで面白いイベントがあったんですよ。主催は中京テレビ。お笑いやアイドルのライブが一斉に行われていて、アイドル部門は「AICHI GIRL’S EXPO 2019」という名称だったんですけどね。出演したのも愛知に縁の深いグループばかりで、メジャーどころではSKE48とTEAM SHACHI(旧・チームしゃちほこ)がいました。あとはお掃除ユニットの名古屋CLEAR’S、ボイメン(BOYS AND MEN)の妹分として知られる小野小町、OS☆U、dela……。その中でも僕に最大限のインパクトを与えたのが、オンナノコズというグループでした。
オンナノコズは、名古屋のモデル系プロダクションが作ったグループ。やっぱりメンバーもモデル系の綺麗な子が揃っているわけですね。でも、ポイントはそこではなくて。まずタイムテーブルを見たときから不思議だったのは、なぜか持ち時間が5分しかないんです。5分じゃ、せいぜい1曲やるのが関の山ですよ。
で、いざ時間になるとメンバーがステージにいないんです。その代わり、ドローンによって撮影された校舎の様子がモニターから流されている。僕を含めた観ている人の多くは、この時点でキョトンとするばかり。それで1分半くらいして、ようやくメンバーがステージに現れるんですけど、歌ったり踊ったりは一切しないんです。前や後ろに歩いて、最後は全員が固まってポーズを取るとパフォーマンス終了。もちろん、その間は終始無言です。「これは何を見せられているのかな?」と不思議な感覚になりました。まるで前衛芸術のようなシュールさ満載で。
言うまでもなく、これは意図的に狙ったものなんです。実際、バックステージではスタッフがメンバーに「いや~、よかったよ」みたいに話しかけていて、女の子たちも満足そうにしていましたから。アイドルでインパクトを残すやり方というのは無限だなと改めて感じました。
もう1つ言えるのは、オンナノコズみたいなアプローチは地方だからこそ現れたということ。今回のイベントには出演しなかったけど、愛知にはほかにもアイドル教室という面白いグループがあるんですよ。これは実際のお寿司屋さんが運営しているユニットで、「歌って、踊って、握れる」のが最大の特徴。プロデューサーの大将は地方によくいる楽器好きの人で、女の子に自分の作った曲を歌わせている。そういう男のロマンが成立するのも、地方ならではじゃないですか。
ただ、やっぱりアイドルの世界って、なんだかんだ言っても東京が中心なんですよね。ライブハウスが山のようにあって、地下アイドルを含めて毎日のようにイベントやっているのは東京だけですし。それに愛知は地方都市としては大きいけど、昔から「興行不毛の地」と呼ばれているんです。決まったジャンルしかウケないらしいんですよ。そういう保守的な傾向がある愛知で、愛知のグループだけが出演するイベントを行い、結果として大盛況に終わった。お客さんも自分の推しているグループ以外も熱心に観ていたし、すごく僕は感慨深かったですね。
地元密着で地道に活動を続けるか、東京進出してメジャー展開するか……これは非常に難しいところだと思います。
かれこれ9年くらい前、「アイドル戦国時代」という言葉が出始めた頃、「これからはご当地アイドルの時代だ」と言われていたんですよね。一時期、その勢いが失速したのは事実ですけど、東京がすべてだと僕は思えない。やっぱり実際に地方に行かないと分からないことってありますって。アイドルを観にいったついでに、その地方の美味しいものを食べて、仲間たちとお酒を飲む……最高じゃないですか。そうすれば経済も回りますし。増税に対抗すべく、今こそ僕たちアイドルファンが立ち上がるべきじゃないですかね。
(『月刊エンタメ』2019年12月号掲載)
クロちゃんの「このアイドルに注目!」

常滑のイベントにも出演したTEAM SHACHIですが、デビュー当時のやんちゃなイメージからアーティスティックな方向に舵を切った印象がありました。最近は「ブラス民」と呼ばれる6人の覆面メンバーと共演することが多いんです。
▽クロちゃん
1976年12月10日生まれ、広島県出身。お笑いトリオ安田大サーカスの一員。大のアイドル好きで、忙しい合間をぬって アイドルライブへと足を運ぶ。ドッキリ、炎上などのイメージが強いが、アイドルへの思いはピュア。
Twitter:@kurochan96wawa