中川翔子が約5年ぶりのアルバム『RGB ~True Color~』を12月4日(水)に発売した。アルバムには、細野晴臣や小林幸子、ヒャダインやでんぱ組.inc 、YouTuberのスカイピース、ボカロPのみきとPなど、様々なアーティストやクリエイターが参加。
インタビュー3回目はコラボした豪華アーティストとのエピソードをしょこたんが語る。

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──今回、アルバム収録の楽曲でコラボレーションをした方々のお話も伺いたいんですが、ヒャダイン(前山田健一)さんは5曲に関わっています。2015年に始まった『ポケモンの家あつまる?』(テレビ東京)でも共演していますが、やはり気が合いますか?

中川 ヒャダさんとは長い付き合いですし、このアルバムでも“安心と信頼のヒャダさん”って感じで絶大の信頼を寄せています。中でも『愛してる』って曲を、やっと盤に入れられるのがうれしいんです。この5年間、私の中で大きな出来事は、飼い猫のマミタスが2017年に亡くなったことでした。

──いろんなメディアに出ているのでファンの間では有名ですし、中川さんが手掛けるファッションブランド「mmts(マミタス)」の名前にもなっています。

中川 マミタスは、私がお仕事を始めるきっかけでもあり、ブログを始めるきっかけでもあり、サトシ(※アニメ『ポケットモンスター』シリーズの主人公)のピカチュウみたいな、ラプンツェル(※映画『塔の上のラプンツェル』の主人公で中川が日本語吹き替え版の声優を務めた)のパスカルみたいな存在でした。相棒だったマミタスが死んでしまった時に本当にショックが大きくて……。ペットを飼っている方なら分かると思うんですけど、あまりにも悲しくて何も言葉が出ないし、どうしようってなってる時に、歌は一番消えないマミタスへの証になると思ったんです。それでアルバムを作るって予定も一切ない時期に、無謀なんですけど「何か1曲作りたい」ってヒャダさんに相談してみたところ、ありがたいことに「よし作ろう」と言ってくださって、それでできた曲です。この曲はレコーディングで泣いちゃって歌えなかったんですけど、今は穏やかに微笑みながら歌えるようになってきました。ずっとずっと歌い続けたい大好きな曲です。


──アルバムに収録されている『タイプ:ワイルド』は、元々アニメ『ポケットモンスター』の5代目エンディングテーマだった楽曲で、今回の中川さんの歌唱では、編曲・プロデュースをヒャダインさんが務めています。

中川 サトシの曲(※オリジナルの歌唱はサトシの声を担当する声優の松本梨香)としてずーっと聴いてきたから、どう歌っていいのか分からなかったんですよ。真似っぽくなると何でお前が歌うんだよってことでどうしようもないし、すごく悩んでいたんです。カバーできることはうれしいんですけど、私自身がファンなので、ファンの気持ちもすごく分かる。それでレコーディング当日、ブースに入ったらヒャダさんに「この曲はオリジナルの真似だと、ただの劣化版になるから、子どもたちやサトシの夢を応援する、大人のお姉さん・お母さんの目線で歌うんだよ」と言われたんです。それを聞いて、すっごく腑に落ちました。

──確かに分かりやすいですね。

中川 歌のディレクションって違う部屋にいつつ、お互いの気持ちを汲み取ってやり合うテレパシー的なところがあるんです。ヒャダさんの言うことって私には入ってきやすくて、別のレコーディングでもポケモンにたとえて「歌声にハピナス味を込めて」と言われて、「分かる分かる!」ってなりました。

──(笑)。『タイプ:ワイルド』は『ポケモンの家あつまる?』の仲間たちのコーラスも入って、2019年11月まで放送された『ポケットモンスター サン&ムーン』のエンディングテーマにもなりました。

中川 めちゃめちゃ子どもたちは『ポケんち』(※『ポケモンの家あつまる?』の愛称)を見てくれていて、「ポケんちは」って挨拶を言いたくて、ポケモンのぬいぐるみを持ってイベントにも来てくれるんです。
そこに集まる子どもたちにも今回の『タイプ:ワイルド』はすごく刺さってくれてるんです。私がステージに出る前に、BGMで『タイプ:ワイルド』が流れている時があるんですけど、難しい曲なのに大合唱してくれるんですよ。話してみると「毎日、『タイプ:ワイルド』を聴いてます」と言ってくれる子どもが多いんです。大人の時間軸になると、あの頃の気持ちを忘れたくないと思っていても、たとえば2か月ってドタバタしてるとヒューっと過ぎ去っていく感覚ですよね。でも子どもたちにとっての2カ月は、すごく成長するし、覚え方やハマり方が深くて速いんです。子どものエネルギーは、すごく素敵だなって改めて思いました。

──スカイピースさんとのコラボ曲『六畳間から、世界へ』もヒャダインさんが全面的に参加していますが、インターネットを肯定的に捉えたピースフルな曲です。

中川 スカイピースさんはチコハニ(※CHiCO with HoneyWorks アルバム収録曲『ミスター・ダーリン』でコラボ)さんがコラボしていたのをきっかけに知って、動画も見ていたんです。お寿司をめっちゃ食べるとか、落とし穴に落ちるとか、明るくてほっこりして元気をもらえる動画で、すごく可愛いんですよね。お会いする前に、メンバーの☆イニ☆(ジン)君からツイッターで「一緒に曲を作れたら、すごくうれしいです。楽しみにしてます」ってDMが届いて、めちゃめちゃいい子だなと(笑)。ヒャダさんも同席した打ち合わせが始まって5分ぐらいで「ネット賛歌にしましょう」って決まったんですよ。


──中川さんもスカイピースさんもネットを上手く活用していますしね。

中川 陰キャ、陽キャ、いろいろいるけど、ネットのおかげで生きやすくなった人はたくさんいますからね。時間を問わず、言葉に言霊を乗せて放てるから、好きなことや夢が輝いて誰かに届く。生きていていいんだって場所が見つかる。ネットはダメって単純に言う人もいるけど、これって素晴らしいことだと思うんです。すごく面白い歌ですし、☆イニ☆君はめちゃめちゃ歌が上手いし、テオ君も個性的な声だし、『行くぜっ! 怪盗少女』(※ももいろクローバーZの楽曲)のようなヒャダさん感もあります。

──人気ボカロPのみきとPさんとのコラボ曲『mrcl』もポジティブなメッセージが詰まったスピーディーな曲です。

中川 仮歌の時点で、みきとPさんの歌声が特徴的でカッコ良かったです。ディレクションもして頂いたんですけど、独特の雰囲気がある方でした。今回のアルバム名が『RGB ~True Color~』で、今までの自分とは違う歌声を出したいって気持ちもあって、それを引き出してもらった曲ですね。一度レコーディングをしてから、「違う歌い方をしたいです」と粘らせて頂いたんですけど、みきとPさんも「じゃあ、こうしよう」って付き合ってくださって、化学反応の一番良いところを目指して作って行けたのが楽しかったです。

──しょこたん▽はるおみ名義の『ネコブギー』は細野晴臣さんとのコラボです。
(※「▽」はハートマーク)

中川 10年前に映画『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス 超克の時空へ』(2009年)の主題歌『心のアンテナ』を、松本隆さん作詞、細野晴臣さん作曲で歌わせて頂いたんですけど、それ以来の再会で、Eテレのアニメ『おまかせ!みらくるキャット団』(2015年~2016年)の主題歌です。細野さんの事務所でレコーディングしたんですけど、ほとんど指示はなくて、「楽しくやろうね」ってニコニコしていて、“ザ・細野さん”だなと(笑)。中学時代は松田聖子さんの曲を始め、松本さんと細野さんの作るイエローマジック歌謡曲が大好きで、ずっと聴いて育ったんです。なので、こうして会えて、しかも自分の歌が残せるって、どれだけすごいことなんだろうと。でも曲は力が抜けていて、細野さん自身もお気に入りでご自身のライブでも歌われているそうです。

──『風といっしょに』はもともと小林幸子さんが歌った『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998年)の主題歌ですけど、亀田誠治さんがリアレンジおよびプロデュースを行って、お二人のデュエットで生まれ変わりました。そして『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』(2019年)の主題歌になりました。

中川 幸子様と『風といっしょに』を歌うなんてとんでもないことですし、すごくドキドキしながらレコーディングに行きました。現場には作詞・作曲の戸田昭吾さん、たなかひろかずさん、亀田さんも揃っていて、ポケモンを作ったレジェンドの方々の集まりでした。そこに真っ白い車で幸子様がパッと登場して、伝説のポケモン「ルギア」のようでしたね。ほぼ一発録りで歌い終えて、「じゃあ翔子ちゃん頑張ってね」と言い残して真っ白い車でパッと去っていく。あまりにもカッコ良過ぎて、泣いたら歌えないと思いながらも、目からハイドロポンプ(※みずタイプのポケモンの技)が出ました。


──どんな歌い方を意識しましたか?

中川 未来永劫、残る曲なので、絶対に幸子様の真似はできないですし、今の私の素直な歌い方でレコーディングに臨みました。あとポケモンキッズ2019のメンバーに選ばれた6歳の「はんなちゃん」という子が冒頭のパートを歌っているんです。普段は大人しくて可愛いらしくてシャイな子なんですけど、本番になると堂々と歌うんです。そんな、はんなちゃんの堂々としているけど無邪気なところも勉強になりましたね。6歳なのに『空色デイズ』とか『ドリドリ』をカラオケで歌いまくってくれているらしくて、めちゃめちゃうれしかったです。

──昔から子供と接するのは好きなんですか?

中川 大好きです。しかも年々、好きになってますね。2006年から2010年まで出演させて頂いた『ポケモン☆サンデー』(テレビ東京)から数えると、もう13年もポケモンの番組に出させて頂いているんです。それを見ていた子たちが高校生や大学生になってもイベントに来てくれて、「『ポケモン☆サンデー』観てました」って言ってくれるんです。

──いずれは、中川さんに憧れて育った子どもたちが大人になって、仕事で中川さんと共演することもあるんじゃないですか。

中川 実際にあったんですよ。その子が8歳の時にコスプレしてライブに来てくれて、私がステージに上げたのをきっかけに歌手を目指すようになったんです。
それで今は夢が叶って歌手になって、『ポケんち』に来てくれたんです。

──それは感動的ですね。

中川 エモさが大河ドラマみたいですよね。そういう時に思いは届いているんだなって実感しますし、大人になっても覚えていてくれるのがうれしいですね。
中川翔子、豪華アーティストとのコラボを語る「レコーディングで泣いて歌えなかったあの曲」

▽中川翔子5thアルバム『RGB ~True Color~』
12月4日に発売された、しょこたん約5年ぶり5枚目のオリジナルアルバム。アニメ『ポケットモンスター XY』エンディングテーマ『ドリドリ』など、この5年で携わってきた多数のタイアップ楽曲が収録されており、細野晴臣や小林幸子、ヒャダインやでんぱ組.inc 、YouTuberのスカイピース、ボカロPのみきとPなど、様々なアーティストやクリエイターがコラボレーションで参加している。
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