この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。
おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『タイムマシンガール』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】一風変わったタイムスリップ、『タイムマシンガール』場面写真【9点】

〇ストーリー
プロレスとソロ活が大好きな主人公の星野可子(葵うたの)は、とある事件をきっかけにビックリすると少しだけタイムスリップしてしまうという体質になってしまう。そのためなるべく他人と関わらないようにしていたが、ふとしたきっかけで恋の始まりが訪れるのであった。しかし、おっちょこちょいな山本千鶴(高鶴桃羽)に驚かされ、意図せず時間が巻き戻り、そのチャンスもなかったことになってしまう。だが特に良くなかった可子と千鶴の仲は次第に近づいていくのだった…。

〇おすすめポイント
『サイキッカーZ』(2022)や『エスパーX探偵社 さよならのさがしもの』(2023)など、インディーズSF作品を多数制作してきた木場明義の最新作。

予算があれば良いというものでもないが、低予算SFとなると、下手するとチープさが暴走して大駄作になってしまうところだが、その点を脚本力でカバーしてきた監督でもあるし、まだまだ奇抜なアイデアを隠し持っていそうだ。

さて今作は、驚いてしまうと、近くにいた人を巻き込んで、少しだけ過去にタイムスリップする体質になった女性が主人公。少しだけタイムスリップは少なからずあるものの、驚いて~というのは、ありそうでなかったユニークな設定。

タイムスリップといっても、決まった時間に戻れるわけではないため、コントロールが難しい。
驚こうと思って驚けるわけもなく、なかなか不便である。そんな中で、おっちょこちょいな同僚・千鶴を巻き込んでしまうところから始まる物語。

何より、タイムスリップが主題というよりも、友情部分に焦点が当たっているのが見所。

可子は、タイムスリップすることに不安な部分があることから、次第に千鶴を巻き込んでしまうことへの罪悪感を抱き始めるのだが、これは純粋な思いやりだ。

自分のために生きていればいいと思っていた可子が、いつしか千鶴のために、自己犠牲の精神に芽生えていく。その一方で千鶴は、誰かの犠牲によって成り立つ平和よりも、友情が大切だと本気で思っている。

つまり、形は違えども、そこには強くて純粋な友情があるのだ。それでいて互いの欠点を補っているようでもあるし、何より、そこに至る過程が、すごく自然に描かれている。

不自然な状況から生まれた、自然な友情といったところだろうか。

それに加えて、作中で、可子がパン柄の服を着ていて、千鶴が寿司柄の服を着ているシーンがある。これは松坂桃李のCMのように、どちらが良いかを選ぶのではなくて、それぞれに良さがあることで成り立つ絶妙なバランス表しているようでもある。

そんな友情物語に説得力を与えているのが、千鶴のキャラクター構造と、演じている高鶴桃羽のイメージが見事にマッチしていること。
千鶴であれば、例え世界が崩壊しても友情をとる選択をしても不思議ではないと感じさせてくれる。

世間は、常に起こるかもわからない”かもしれない”に惑わされていて、物事を複雑に考えすぎなのかもしれない。

少し視点を変えて、そこに友情があるなら、それでいいじゃない。…と感じさせてくれる壮大だけど身近な物語。

〇作品情報
監督・脚本・編集 木場明義
助監督 茅嶋直大
企画協力 小田憲明(株式会社清月エンターテイメント)
宣伝協力 ブラウニー
製作・配給:イナズマ社
2025/日本/100分(予定)/カラー/DCP/シネマスコープ/ステレオ
池袋シネマ・ロサにて2025年1月25日(土)より、
宇都宮ヒカリ座にて2月7日(金)より公開!

【あわせて読む】【何観る週末シネマ】インドにおけるSF映画の可能性を広げた話題作!メディアミックスの鍵を握る『カルキ 2898-AD』
編集部おすすめ