井上 丸川さんはアナウンサー時代、『ビートたけしのTVタックル』に出演されていたとき、ビートたけしさんから「芸人にならないか」と誘われたと聞きました。
丸川 何で知っているの(笑)? 私、どこかで言ったのかな。
井上 雑誌の記事で読みました。
丸川 そうなんですね。これは本当の話で、たけしさんは普段、すごくシャイなんですよ。女性の共演者やスタッフは基本、全員「ねえちゃん」。照れくさいのか、名前は読んでくださらないんです。それでも番組中に一回だけ、「たまかわさん」と言ってくれたことがあって(笑)。
井上 惜しい(笑)!
丸川 そのたけしさんが、番組の忘年会のさなかに「ねえちゃん、芸人になんないかい?」と言ってくださったんです。
井上 すごいですね。
丸川 でも、あまりに急なことだったんで、びっくりしてしまって。どうリアクションしていいかわからなくて、素の反応になってしまったんですよ。
井上 というと?
丸川 「芸人ですか?」って(笑)。時々、もっといい切り返しをしたかったなと思うんです。
井上 でも、たけしさんに誘われるくらいですから、フリーになってバラエティをやってみようかな……とは思いませんでしたか?
丸川 私が番組で笑ってもらえているのは、たけしさんがすごいからだと分かっていましたから。本当にたけしさんって千手観音みたいな方で。どんなに滑って転んだ話も拾って面白くしてくださるんです。一応、台本はありましたけど、このくらいの間合いで言えば面白いかな? といった判断は自分でするので、しょっちゅう「ああ、しまった!」「うわー、今、ちょっと面白くなかったかも」と思う場面があるんです。それでもたけしさんは、最大の笑いに変えてくださる方なんですよ。
井上 なるほど。
丸川 だから、私なんかに芸人なんて、とんでもないと思っていました。
井上 その後、アナウンサーから政治の世界へ転身されて、自民党内での反応はどんなものでしたか?
丸川 当時も今も、可愛がってくださる先輩がたくさんいます。最初は物珍しい生き物を見る感じだったのかな。別の業界から来た人、テレビ局にいた人はどんな感じなのかな、と。
井上 言われてみると、そうですね。
丸川 特にうちの党はオープンで、いい意味で雑多。平場と呼ばれる党内の会議では誰が何を言ってもいいんです。議題となっている政策について詳しく知らなくても、意見があるときは発言できます。しかも、最終的には党の最終意思決定機関である総務会まで乗り込んで意見を言ってもいい。これが自民党の良さだと思います。
井上 懐が深いというか。
丸川 今はそういうことないですけど、昔は意見が対立する同士でグループを組んで総務会に乗り込んでいったと聞きます。時には総務会長を取り囲み、「決議させないぞ」と。
井上 動画で観たことがあります! 衝撃的でした。
丸川 面白いと言ったら怒られるかもしれないですけど、ああいう伝説、逸話もたくさんあって。今も物こそ飛びませんが、お互いにチームを組んで徹底的に言い合う文化は残っていますよ。
井上 丸川さんは旦那さん(大塚拓衆議院議員)も議員さんで、自民党。しかも、同じ細田派で派閥まで一緒。家でニュースを観ながら考え方の違いから議論になって、夫婦喧嘩に……みたいなことないんですか?
丸川 まったくないんですよね。政策の方向性、基本的な考え方にズレがないんです。不思議なくらい2人で同じ方向を向いています。
井上 そうなんですか。
丸川 たとえば、安全保障の問題、社会保障政策の優先順位付け、2人とも同じなんです。話し合ってから結婚したわけじゃないんですよ(笑)。
(取材・文/佐口賢作)
▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。現在は『アッコにおまかせ』(TBS)などバラエティ番組を中心に活躍。
Twitter:@bling2sakura
▽丸川珠代(まるかわ・たまよ)
1971年1月19日生まれ、兵庫県出身。自由民主党所属の参議院議員。2007年初当選。環境大臣、オリンピック・パラリンピック担当大臣などを歴任。夫は衆議院議員の大塚拓氏。