昨年末、AKB48グループでも坂道グループでもない新人アイドルグループが、とんでもない記録を叩き出してしまった。デビュー直後にYouTubeのMVは即日100万ビュー越え、個人アカウントも軽々とフォロワー10万を抜き去った。そのアイドルの名は「豆柴の大群」。
彼女たちはドキュメンタリー要素の強い仕掛けで人気のバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』内のコーナー「MONSTER IDOL」から誕生した5人組。本誌でもおなじみのクロちゃんがプロデューサーとなり、結果的にそのクズっぷりが注目を浴び、さらに1stシングルも「プロデューサー続行バージョン」「解任バージョン」など3種類が発売され、デビューシングルでオリコンウィークリー1位という記録を奪取した。
彼女たちのデビューのきっかけとなった「MONSTER IDOL」は、番組とWACKのコラボ企画。WACKとは何? と思う人もまだまだ多いかもしれない。「楽器を持たないパンクバンド」として現在ブレイク中のBiSHが所属する事務所で、過激な仕掛けとスピード感でこれまでのアイドルファンとは違った層を虜にしている。
その事務所とテレビが一体になって仕掛けたのが「MONSTER IDOL」。こうしてBiSHをきっかけに興味を惹かれていた若いファンをさらに引き込んだWACK。そのプロデューサーが“ジュンジュン”こと渡辺淳之介だ。
2010年に当時所属していたつばさプラスからアイドルグループ・BiSをデビューさせ「全裸MV」「スク水ライブ」「ビンタ会」など破天荒な仕掛けで悪名を馳せつつも、本格的なバンドサウンドを取り入れた楽曲とそれまでのアイドルライブにはなかったパンクな客席のノリで、「アイドル戦国時代」と呼ばれた2010年代前半のアイドルシーンの空気を作り上げた。
そして2014年、BiSの解散後に立ち上げたのが個人事務所WACK。2014年にプラニメ(現GANG PARADE)、翌2015年にBiSH、そして2016年にはBiS(2期)を再始動。
その中でも、もはや「お茶の間人気」一歩手前まで来ているのがBiSHだ。その名前のとおり、「BiSをもう一度始める」というテーマからスタートしたものの、メンバーの個性を出すスタイルはそのままに、ライブでは個性的な歌声を持つアイナ・ジ・エンドを中心にし、かつての破廉恥な仕掛けは止めて、クリーンな形に刺激の方向を転換。それが功を奏してか、BiS時代とは違った若いファンの支持を集めはじめる。
その勢いを駆って、2018年にはBiS解散の地・横浜アリーナでワンマンライブも開催し、その年末には幕張メッセでのワンマンも開催。さらに昨年は『アメトーーク』で特集されるなど、その人気は拡大する一途。さらに『FNS歌謡祭』にも出演するなど、「もしかして来年には紅白出るかも?」という噂もまんざら冗談ではない勢いだ。
さらにエイベックスとの共同プロデュースであるEMPiRE、タワーレコードのレーベル・T-Palette Records所属のCARRY LOOSE、育成プロジェクトであるWAgg、そして昨年末誕生した豆柴の大群と、ファミリーは年々増加中。ちなみに最近バラエティ番組で人気のファーストサマー・ウイカも元BiS(1期)で、WACK所属ではないが活躍している「親戚のお姉さん」的存在。
今WACKがこれまでのアイドルファンとは違った層に支持されているのは、松隈ケンタの書く楽曲の力に加えて、ゲリラ的なセールスプロモーションがファンを熱狂させている。タイアップ付きの『Life is beautiful』が発売された同日にまったく告知なしの新譜、その名も『NON TiE-UP』を発売したり、CD発売日に当日発表で各地のレコード店でイベントを開催したりといった「何かが起きる」ハプニング感がファンたちをワクワクさせ続けているのだ。
アイドルらしからぬヤンチャさ、それでいてスタイリッシュな部分が、これまでアイドルに抵抗があった人たちを呼び込んでいる。その動き続ける運動体としての魅力、気持ちよさは今時代の先端を走っていると言っていいだろう。
WACKの社是は「ちんこと言える世の中を。」。そんな事務所は好きですか? もし気になってしまうのなら飛び込んでしまえ!
(文/大坪ケムタ)