【関連写真】『愛の、がっこう。』主演の木村文乃、撮影オフショット
やはり多くの視聴者を虜にしたドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)を手がけた脚本家・井上由美子と演出家・西谷弘が再タッグを組んだだけあり、登場人物の心情についつい視線を奪われてしまう。序盤、ホストクラブ「THE JOKER」で働くホスト・カヲル(ラウール)にのめり込み、親のお金を勝手に使った生徒・沢口夏希(早坂美海)が、担任教師・小川愛実(木村文乃)に「学校も親も適当すぎるんだよ。褒めておけば、あたしが思い通りになると思ってる」「カヲルは違う。あたしのこと馬鹿って言ってくれた。『バーカ』って抱きしめてくれた」と言い放った。
このシーンだけ見ると、夏希はカヲルの接客テクニックにあっさりと篭絡された印象しか受けない。
後半ではまた違った気づきを与えてくれた。夏希の母親・あかり(映美くらら)からカヲルに二度と近づかないように一筆書かせることを仰せつかり、愛実はカヲルのもとを訪れる。しかし、一向にカヲルからはアクションがない。しびれを切らした愛実は「THE JOKER」に乗り込むと、カヲルはその熱意に負けたのか「ここは勘弁して」と自身が住むホストクラブの寮の屋上へと愛実を連れて行く。カヲルは念書を書き始めるが、とても大人が書いた文字とは思えないクオリティ。ただ、話を聞くと「小学校3年までは半分くらい。中学は3日くらい」「俺は親父いないし、母親はダニ、寄生虫」と劣悪な家庭環境だったために学校にほとんど通えなかったという。
カヲルの発言を慮ると、学歴以前に義務教育で養われるはずの学もないのだろう。中盤に「THE JOKER」のナンバーワンホスト・神門つばさ(荒井啓志)と言い合いになった際、「(ホストは)自分の全部をかけてやるもんなんだよ」とホストとしてのプライドを口にしていた。
「ホストと女性教師の禁断の愛」みたいなイメージに思われそうだが、私たちの生活と地続きな世界を描いた作品なのかもしれない。
ストーリーばかりに触れたが、やはり本作の魅力はメイン2人の“ハマリ役感”だ。愛実はよく言えば厳格な、悪く言えば家父長制にどっぷり浸かったような家庭で生まれ育ったゆえに、自身もかなり堅物だ。それでいて元カレにストーカー行為を繰り返すなど、執念深い一面も兼ね備えている。1話から、気味悪さや不快感を与えかねないネガティブな一面を多く見せた愛実ではあるが、不思議と不快感はない。むしろポップさがあり、愛実が転ぶ姿には可愛らしささえ覚える。『看守の流儀』(テレビ朝日系)や『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)など、毅然とした役を演じることが多い木村。凛々しさを持ちつつも、どこか隙のある可愛らしさを持つ愛実という役をどう演じるのか見ものだ。
また、ラウールのハマリ方もすごい。神門とつかみ合いになりそうな時に愛実が仲介に入ると、愛実の耳元に「先生、ありがとうございます」と聴覚がフワフワしそうな囁きボイスを残して神門はその場を去るが、その様子を見ていたカヲルは「ぴゅ~」と口笛を鳴らしそうな表情を見せ、「かっこいいね」と口にする。
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