※インタビュー(2)「出馬そのものが義父との公約違反だった」から続く。
※取材は2020年2月12日に行いました
井上 岸さんのホームページにアップされていた選挙中の写真で、お魚を持ち上げているカットが何枚かありました。山口県は漁業も盛んですし、こだわりがおありなんですか?
岸 選挙事務所での写真かな。あれはね、当選したときに支援者の皆さんがお祝いに鯛をくれるんですよ。ありがたいいただきものですから、どーんと掲げているんだけど、大きな鯛をくださるものだから、支えるのがけっこう大変なんだ(笑)。
井上 そういうことなんですね。さかなクン的なトレードマークなのかな?と思っちゃいました(笑)。選挙中に限らず、山口県の支援者の方の前でお話をされる機会は多いと思うんですが、選挙区の近い安倍首相と一緒に回ることもあるんですか?
岸 兄の選挙区は山口4区で、下関市や長門市なんですね。同じ山口県ではあるんですけど、西側です。私の選挙区の山口2区は東側の下松市や岩国市、柳井市などなので、だいぶ離れているんですよ。
井上 そうなんですね。
岸 ただ、以前は参議院議員選挙のとき、自民党の候補者を同じ場所で一緒に応援したことがあります。また、私の最初の選挙(2004年の参議院議員選挙)では、兄が応援に来てくれたこともありますね。
井上 その際の地元の方の反応は?
岸 もちろん、盛り上がりますよ。ただ、この感覚は地元にいないと伝わりにくいかもしれませんが、山口県の東と西は元々国が違うんですよね。4区の方は長門、2区の方は周防。だから、岩国での選挙の応援に「安倍総理がくる!」となったとき、「総理がきた!」と盛り上がります。でも、選挙区の人たちの意識のどこかに、「他所の人が応援にきた」というのがあるんです。その昔は国が違った名残が今も残っているんですね。
井上 それだけ自分の選挙区の議員さんへの思い入れが強いということですか?
岸 やっぱり自分が一票を投じた政治家に思いを託すわけですから。その強さは、山口県全体が選挙区になっている参議院選挙と4つの区に分かれている衆議院選挙では違いがあると思います。仮に私が兄の選挙区に応援に行ったとして、受け入れて迎えてはもらえますが、でも「他所の人」感は出るでしょうね。
井上 同じ県でも?
岸 不思議なもので。
井上 岸さんは2012年に参議院から衆議院に鞍替えされています。それは衆議院では、参議院議員ではできなかったことができるからですか?
岸 衆議院も参議院もね、議員としての区別はありません。たとえば、自民党内で総裁を選ぶとき、参議院議員、衆議院議員はそれぞれ1票ずつ持っています。参議院議員が党内のいろいろな会議に出て意見を述べたとき、それが参議院だからといって蹴られることはないわけです。ただ、その一方で国民の皆さん、選挙区の皆さんへの近さという意味では、衆議院議員が勝っています。参議院議員選挙は基本的に一都道府県で1つの選挙区です。先程も触れたように山口県の場合は参議院選挙区の中に4つの衆議院の選挙区があります。それぞれの選挙区の県民の皆さんとの距離で言うと、やはり衆議院議員選挙のときの方が、はるかに密着度合いが強くなっていくんですね。
井上 それだけ国会で地元の声を反映できるということでしょうか?
岸 そうですね。参議院議員時代よりも、確実に地域の課題について詳しくなりますし、選挙区に暮らす県民の皆さんの意見もよりわかるようになっていきます。地域に密着し、それを国会で代弁していくという意味においては衆議院議員の方がいろいろとやれることがあると言えますね。
(文/佐口賢作)
▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。現在は『アッコにおまかせ』(TBS)などバラエティ番組を中心に活躍。
Twitter:@bling2sakura
▽岸信夫(きし・のぶお)
1959年4月1日生まれ、東京都出身。自由民主党所属の衆議院議員。住友商事を経て2004年の参議院選挙で初当選。2012年に衆議院議員に。外務副大臣などを歴任し、現在は衆議院議院運営委員会筆頭理事。