※インタビュー前編「自由に遊べばいい、自由さが醍醐味なんです」はこちらから
【写真】愛用する道具を手にソロキャンプの醍醐味を語るヒロシ
──うしろシティの阿諏訪さんとの出会いがソロキャンプを始めるきっかけとのことでしたが、どういう経緯だったのですか?
ヒロシ 初ソロキャンプ以降もグループキャンプを続けていたんですけど、もうほとほと嫌!という経験をしてね。そのキャンプの次の日ぐらいだったかな、とある営業先でうしろシティと一緒になって。正直テレビでは見たことはあったのですが話したこともなく、なんなら阿諏訪くんはオシャレでカッコいいからメチャクチャ女性にモテて、最初はキライだったんですよ。ただの嫉妬ですね。確か喫煙所で他の人とキャンプの話をしていたら、阿諏訪くんが「キャンプ、好きなんですか?」と話しかけてくれて、そこからキャンプの話で盛り上がったんですよ。最初は「オシャレなキャンプをするんだろうな」と勝手に思っていたら、彼も一人の自由さが好きでグループキャンプが辛いという僕に似た考えを持っていると知って。話しこむうちに、それなら二人でソロキャンプをしてみようと、その三日後に一緒にソロキャンプに行きました。
──人見知りのヒロシさんが、初対面でそこまで意気投合するって奇跡的な出会いですね。
ヒロシ 本当に。
──ソロキャンパーグループ「焚火会」は、どういう経緯で結成されたんですか?
ヒロシ 阿諏訪くんとキャンプに行ってから、仲がより親密になって(笑)、仕事で一緒になる度に喫煙所でキャンプの話ばかりしていたんですよ。ある日同じように一緒の営業先で阿諏訪くんとキャンプトークをしていたら、バイきんぐ西村くんが僕らの会話を後ろで興味深そうに聞いていたんですよ。「興味あるの?」と聞いたら「あるけれどやり方がわからない」と言うので、その時はそれで終わったのですが、ある日西村くんが「買っちゃいました!」と、テントと寝袋とクーラーボックスの写真を見せてくれて。それで僕、西村くん、島田くん(ベアーズ島田キャンプ)の三人でソロキャンプをやったら、西村くんもハマッちゃったんですよ。また別の日の営業先でもキャンプトークをしていたら、今度はウエストランドの河本太くんが後ろで話を聞いていて。彼も自分から話しかけられないタイプなので、面白そうだと思いつつ輪に入れなかったみたいなんです。
──奥ゆかしい人たちの集まりといいますか。
ヒロシ そうなんですよ(笑)。その頃に島田くん、西村くんと行ったソロキャンプの様子を撮っていた動画を、焚火会のみんなに見てもらおうと、編集してYouTubeに上げたんですよ。それが『ヒロシちゃんねる』の始まりですね。その動画を喫煙所で見ていたら、また太ちゃんがジッと後ろから見ていて。しびれを切らして僕が「興味あるの?」と聞いたら、すごくありますと答えるので、誘って……こうやって興味はあるけどやり方を知らないという人を誘ってみたら、どんどんソロキャンプ仲間が増えていったんですよね。
──みなさん潜在的にはソロキャンプへの憧れや興味がありつつ、どこか踏み出せないところに、ヒロシさんが火を点けたんですね。
ヒロシ そうなんでしょうね。面白いのは、今「焚火会」の仲間は僕を含めて9人ですが、全員が人に「何かしてください」のスタンスではないんですよ。初めて参加する人でも、必ず自分なりにソロキャンプというものを考えて道具を買い揃えてきますから。しかも阿諏訪くんならブッシュクラフト、西村くんや島田くんなら料理と、それぞれが自分で考えて自分で工夫ができて楽しめる人たち。それでいて、楽しみを共有しつつも決して“自分”を他人に押し付けてこない。だから一緒に行っても苦痛が一切ないんです。
──まさに「自分で見つけるキャンプの流儀」を各々が持った集まりだと。
ヒロシ そうそう! しかしまぁ、前のめりになって自分だけの楽しみを探せる人がよく9人も集まったなと(笑)。
──先ほど『ヒロシちゃんねる』の話題が出てきましたが、キャンプの風景を動画に撮影して編集しようと思われたのは?
ヒロシ 単純に楽しいからです。個人的には『ヒロシちゃんねる』の動画って、結婚式の思い出VTRみたいなもんだと思っているんですよ……僕は結婚していないから違うかもしれませんが。正直言って、思い出VTRって本人たち以外の人が見たいと思います?
──本人以外が楽しむのは難しいかもしれません。
ヒロシ ですよね。僕の動画も同じだと思っているんですよ。僕はですね、単純に「焚火会」のみんなが僕の動画を見て「あ~、懐かしいね!楽しかったね!!」と想い出に浸ってもらえればそれでいいと思って撮っているんです。最初に投稿した島田くんと西村くんとの動画なんてひたすら僕らがはしゃいでいるだけの中身で、本当にひどい。編集を始めたのも、撮ったまま垂れ流しで見るには僕らでも耐えられないからで。
──アハハ! そのヒロシさんたちがキャンプではしゃぐ動画が集まったチャンネルが、今や登録者が90万人(8月末現在)。ものすごい反響です。
ヒロシ 動画撮影も編集も、ただただ楽しくてやっていただけなので、今のように反響がくるとか想像もしていませんでした。こんな僕ら以外からしたら“地獄”みたいな動画を、他の人が見ると思うはずないじゃないですか。それが、登録者数が2、3万人になった時でしょうか、さすがに「アレ?」と思いました。その頃に地方に営業に行ったら「『ヒロシちゃんねる』見ています!」という声をもらったんですよ。もうね、どういうこと!?っていう驚きしかありませんでしたよ。そこからだんだん「見ています」という声が増えて、途中から広告を試しに入れてみたらそれなりの収入が入るようになってきた。その時になってやっと、自分の動画が人に見られているんだというのを意識しましたね。
──なぜここまで視聴者が増加したと思います?
ヒロシ ……なんででしょう? わからんですね。コメントを見ると、ソロキャンプをやっている人、やりたい人、僕とは違うキャンプの楽しみ方だけど気になっている人、寝る前の睡眠導入にしている人、絶対やらないけれどなんか楽しそうと思っている人……と、理由がバラバラで、一言では片づけられないんですよ。キャンプ同様、観ている人も自由に楽しんでくれていますね。
──徐々に視聴者が増加しても、初期からの撮影技法……一人称視点のカメラワークと、音楽を極力使用せず環境音をそのまま使い、20分以上の長尺をメインにした形は今なお変っていませんね。
ヒロシ 単純に今も焚火会のみんなに楽しんでもらえたら、それで良いと思って撮っているからですね。
──ソロキャンプ熱が高まり続けた結果、昨年9月に山を購入されたそうで。
ヒロシ 最近キャンプ場でもマナー違反者のせいで焚き火禁止の場所がでてきたので、自由に焚き火をしたいからと買ったんですよ。最初は嬉しかったんですが、それがですねぇ、最近は行くのがおっくうで。まず山に入ると雑草の除去から始まるんですよ。
──これが自然の怖さですね。とはいえ山のオーナーになるほどの行動力を駆り立てたソロキャンプ、今やヒロシさんの中でただの遊びを超えた存在になったのではないでしょうか?
ヒロシ ですね。大げさじゃなく人生も思考も変えてくれました。極端なことを言えば、僕はこれまで友だちがいなくて、仕事場に行っても居心地が悪く芸人の人とも話すことなく、ましてやほぼプライベートで遊びに行くことがなくて。それが、ソロキャンプを通じて焚火会という仲間ができて、逆に今お笑いの現場で会うと恥ずかしくなるぐらい仲良くなりました。テレビに出まくっていた時にも感じられなかった、自由で楽しく安心できた時間を過ごせていますかね。それに仕事=「ヒロシです……」しかなかったのが、キャンプの仕事が入るようになり、ましてや本まで出すようにもなって。ただただ好きでいたことで自分が生きていくって、本当に数年前まで想像できませんでしたね。元々僕の中で燻っていた想いをソロキャンプは気づかせてくれて、それを見事に発散させくれて、新たな世界も見せてくれた。面白いよね、ただの遊びなのにね。このまま自分が楽しいと思うことをひたすらやり続けて、自分の楽しみの幅を無限に広げていきたいですね。
▽ヒロシ 1972年1月23日、熊本県生まれ。九州産業大学卒業。お笑い活動のほか、ラジオパーソナリティなど幅広い分野で活躍。自身が自ら趣味であるソロキャンプ動画の撮影編集を行うYouTube『ヒロシちゃんねる』は登録者90万人を突破。初のソロキャンプ本『ヒロシのソロキャンプ』(学研プラス)が発売中。