2018年にシンガーソングライターの大森靖子を中心に結成した6人組アイドルグループ「ZOC」は、出自の違ったアクの強いメンバーが織りなす化学反応と、魂を焦がすかのごとき攻撃的なパフォーマンスを武器に彗星のごとくアイドルシーンに登場し、たちまちカリスマ的な人気を獲得した。メンバーそれぞれが確固たる自我を持ち、自由に活動する様は多くの同性ファンの心をとらえた。


2019年9月9日にZepp TOKYOで開催した1stワンマンライブ「We are ZOC」も瞬く間にソールドアウト。結成1年で圧倒的な支持を集めたことを見せつけた。

【写真38点】圧倒的なパフォーマンスでステージを彩るZOC

そして10月1日、中野サンプラザで再始動ライブ「AGE OF ZOC」を開催することになった。1年足らずの間に、めまぐるしく栄光と挫折を経験したZOCは、振付師だった雅雀り子を新メンバーに加えて、再び6人組アイドルグループとしてファンの前に姿を現した。

【ライブ詳報】ZOCが再始動ライブで魅せた新境地、メジャーデビューも決定


ソーシャルディスタンスのため席間を開けて、声を出しての応援を禁じられた観客がペンライト片手に静かに見守る中、幕が開き、ポージングを決めていたメンバーが一人ずつソロダンスを披露した後、『ZOC実験室』で幕を開ける。切り裂くようなギターリフから大森がシャウトを決め、赤いライトが明滅する中、統制の取れたチームダンスを随所に挟みながら、ドスの効いたボーカルで一気に会場をZOC色に染め上げる。藍染カレンが速射砲のようなラップを撃ち込み、終わり際に各々が「殺せ」を連呼した後、メンバー全員が銃を構え、大森が「生きろー!」と絶叫して宣戦布告。ヒリヒリした不穏な空気の中、続く『SHINEMAGIC』で切迫感のある歌声を響かせる。

 DVの彼氏に決別する『断捨離彼氏』、可愛くなるために整形も辞さない女の子を賛美する『GIRL’S GIRL』と強烈なメッセージを放つ楽曲をキレッキレのダンスと共に届けた後、一転して巫まろをセンターに80年代を彷彿とさせる王道のアイドルソング『チュープリ』でキュートな側面を垣間見せる。

 ここまでの張り詰めたような空気が幻であるかのように、アイドル性を全開にした自己紹介を挟んだ後、マリオネットのような動きから、遊園地のようにドリーミーな空間を構築する『ヒアルロンリーガール』、煌びやかなサウンドに溌溂な歌声を乗せる『イミテーションガール』、アイドルをパロディ化したような歌詞をブリブリの振り付けでマイクリレーする『IDOL SONG』と、華やかなステージングで魅了する。

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中盤戦はソロコーナー。トップバッターは西井万理那の『それな!人生PARTY』で、自身の写真を張り付けたうちわを振って観客をお祭り感覚で煽りながら、タイトル通りパーティー感のある躁的なサウンドに乗せて、過剰なほどの言葉をスムーズに連ねていく。


続いては香椎かてぃの『仮定少女』で、スレンダーな肉体をしなやかに躍動させながら、どこか投げやりに歌声を吐き出し、時に絶叫、時に金切り声を上げて、ステージをのたうち回る。

フリフリの花柄ワンピースで登場した巫まろは、表情、動きの一つひとつまで一分の隙もない磨き抜かれたアイドルパフォーマンスで『まろまろ浄土』を披露。藍染カレンは黒と赤を基調にしたドレッシーな衣装に身を包み、アニソンシンガーさながらの情感豊かなボーカルで『紅のクオリア』を熱唱する。

ピンクのライトを浴びて登場した大森靖子が歌うのは『非国民的ヒーロー』。しょっぱなから「オイオイ!」と絶叫して観客を煽り、髪を振り乱しながらステージ中を跳ね回って、狂おしいまでのパフォーマンスを繰り広げる。ラストを飾るのは雅雀り子。といっても彼女は本来の職業であるダンサーに専念して、静謐なピアノソロをバックに、大森靖子が変幻自在の歌声を駆使した『死神』を振り絞るように歌う中、映画のようにドラマティックかつ華麗なダンスで彩りを添える。

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後半戦は全員がステージに揃って、『マジックミラー』でスタート。大森靖子と藍染カレンの焦燥感を煽るような歌いだしから、ゾンビのように項垂れた姿勢で激しくヘドバンを決めたり、救いを求めるかのように手を振り回したりと、めまぐるしく情景を変化させて妖しい世界観を現出させる。

変拍子を取り入れたドリーミーなサウンドが印象的な『ピンクメトセラ』では、隠花植物のように蠢いたかと思えば、猫のように気まぐれなダンスを織り交ぜるなど、一筋縄でいかないパフォーマンスを展開。爆発力のある大森靖子のボーカルから始まるハードロックナンバー『draw (A) drow』では、強靭なビートに負けない力強い歌声と、格闘技さながらの攻撃的なダンスで、ぐいぐいと客席に迫ってくる。

息の合ったチームダンスがメンバーの絆の深さを感じさせる『family name』、波のようにうねるダンスを踊りながらストレートに歌声を届ける『A INNOCENCE』でピースフルな空間を作り上げて一旦はステージを去った6人だったが、すぐに沸き起こった観客の手拍子アンコールに導かれて再登場。


年明けにエイベックスからメジャーデビューすること、大森靖子が社長を務める新事務所「TOKYO PINK」を立ち上げることを発表した後、この日の感想を一人ずつ語っていったが、この日までの困難な道のりを思い返して、どのメンバーも号泣。そんな気持ちを吹き飛ばすかのように、ラストは新曲『Age of ZOC』を初披露。ゴリゴリのロックサウンドに乗せて、ステージ中を駆け回り、新しい出発を自分たちで祝福するように拳を振り上げて熱いメッセージを届けた。

新体制になって初のワンマンライブとは思えないほどの結束力と、盛りだくさんの内容で全力疾走したZOC。堂々たるステージを繰り広げた6人の姿は勇壮で、一点の曇りもなく輝いていた。

【ライブ詳報】ZOCが再始動ライブで魅せた新境地、メジャーデビューも決定

▽ZOC「AGE OF ZOC」2020年10月1日セットリスト
01. ZOC実験室
02. SHINEMAGIC
03. 断捨離彼氏
04. GIRL’S GIRL
05. チュープリ
06. ヒアルロンリーガール
07. イミテーションガール
08. IDOL SONG
09. それな!人生PARTY(西井万理那ソロ)
10. 仮定少女(香椎かてぃソロ)
11. まろまろ浄土(巫まろソロ)
12. 紅のクオリア(藍染カレンソロ)
13. 非国民的ヒーロー(大森靖子ソロ)
14. 死神(雅雀り子ソロ w/大森靖子, sugarbeans)
15. マジックミラー
16. ピンクメトセラ
17. draw (A) drow
18. family name
19. A INNOCENCE
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20. AGE OF ZOC
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