争う種目は「劇場公演」 「配信イベント」 「ファン投票」の3つ。中でも大きな配点が割かれているのが「劇場公演」だ。「ENTAME next」では、結成当初からAKB48グループを追い続けてきたライターの犬飼華氏が全6グループの劇場公演を視聴、1クール分をまとめて忖度なしでレポートする。今回は、2月7日(日)から12日(金)にかけて行われた2クールの公演のレポートをお送りする。
【写真】メンバーの東由樹だから撮影できた各グループの劇場公演の模様【20点】
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NMB48の新機軸「NAMBATTLE~舞~」の第2クールが2月7日からスタートし、12日に終了した。前回の原稿では忖度なく、勝手に採点させてもらったが、今クールのポイントをあらかじめ書いておくと、「第1クールからどれだけ伸びたか」に主眼を置いた。また、ベテラン勢の質が高いのは当然なので大きなウェイトは置かず、6期生、ドラフト3期生、7期生が前クールからどれだけ伸びたか、あるいは、グループ全体としてのまとまりと高揚感を重視した。
■2月7日(日)きゅんmart
2クール目のポイントは、“初日ハイ”から脱した状態でどんなパフォーマンスを見せるかということ。公演の初日はメンバーも観客もテンションが高いもの。昨今は観客が声を上げることはできないものの、メンバーのポジションもセットリストも知らない状態で観ているため、期待感が上乗せされる。
この日のきゅんmartはどうだったかというと、前回のパフォーマンスと変わらないテンションを見せてくれた。大きなマイナスポイントはない。初日を観た私は「優勝候補」と書いたが、実際には2位スタートとなった。メンバーたちは修正点を話し合ってきたはず。メンバーも頭を悩ませただろう。では、なぜ1位になれないのか。何が足りないのか。おそらくだが、パフォーマンスから「絶対に勝つ」という情念のようなものがにおい立ってきたら、人の心を動かすことができると思うのだが……。
このグループの長所は、MCのテンポのよさだ。加藤夕夏、渋谷凪咲、小嶋花梨が上手なのは当然として、若手も融合できている。トークテーマがフリーだとしても、客前に出して恥ずかしくない商品に料理できるレベルにある。
筆者採点:88

■2月7日(日)W1N-C
第1クールを首位で折り返したW1N-C。この日の昼に2位だったきゅんmartが公演を終えており、首位争いの直接対決の様相を呈した2戦目を迎えた。
2クール目もW1N-Cはやはり強かった。振りもそろっていて、観ていて心地よい。各メンバーのモチベーションも高い。欠点らしい欠点がないのが強みだ。この公演を2~3年やっているのではないかと思ってしまうくらいだ。
細かな点まで気を配っていることにも気がついた。例えば、M6の『全力グローイングアップ』。「草野球のホームラン」という歌詞があるが、そこでメンバー(配信では山本望叶がアップになっていた)は目線を上にやっていた。何をしているかというと、ホームランが描く放物線を黒目を動かすことで表現しているわけだ。このように細かいところまで疎かにせずこなしているから得点が伸びるのだ(他のグループの同じ個所をチェックしたところ、きゅんmartの本郷柚巴だけは同じ動きをしていた)。
思えば、このグループには選抜常連は少ない。最新シングル『恋なんかNo thank you!』でいえば、川上千尋と山本望叶のみ。それなのに、このレベルを維持できるとは……。3クール目にはどこまで化けるのか、まだ底が見えない。
筆者採点:90

■2月8日(月)みっくすじゅーす
1クール目は3位スタートとなった「みっくすじゅーす」。決して悪くはない。振り付けはそろっている。若さにもあふれている。一見すると、大きな問題は見当たらない。なのに、どういうわけか点数は伸びなかった。
MCで黒田楓和が、「(前回の公演では)ダンスの先生から『全然ミックスしてないよ』と言われた」と話していた。それこそが核心だと納得した。はっきり書いてしまうと、若手の表情がいまひとつなのだ。
長年公演を観ていて感じるが、表情を作る作業は一朝一夕にはできないもの。歌詞のニュアンスを理解し、表現することは至難の業だ。キャリア1年未満でそれを求められるのだから、7期生にとっては難度が高すぎる。それを指導するのが先輩の役割ではあるが、指導したところですぐにマスターなどできない。そこで問われてくるのは完成度ではなくて、上達度だ。
3クール目の上達ぶりに期待しよう。
筆者採点:83

■2月9日(火)FRONTIER
結果から書くと、この日のパフォーマンスを終えて暫定4位に終わったFRONTIER。全グループ終了時点で6位に甘んじた。つまりは最下位だ。
このグループもまた、特に悪い点があるわけではない。指摘すべき欠点はこれといって見当たらないのだが、MCにヒントが隠されていた。
上西怜が「全員人見知りすぎて、踊っている時に目が合わない」と話していたのだが、もしかしたらそこに浮上のポイントが眠っているのかもしれない。レッスンを通じて、全員が心を開ききっていないとしたら、どうしても他のグループと差が開いてしまう。モチベーションやコンビネーションに微妙な差が生まれるからだ。レッスンもいいが、全メンバーの心の距離が近くなるようなイベントを誰かが企画したらどうだろう。
筆者採点:82

■2月10日(水)ちょうぜつかわE
前回の評では、4人いる7期生の表情に苦言を呈した。そこを重点的にチェックしたところ、1クール目から5日後の公演だったものの、進歩がうかがえた。ぎこちなさはどこかへと消えた。
メンバーもMCで話していたが、レッスン中にコミュニケーションをとることで距離が縮まったようだ。その雰囲気が公演に表れていた。こうなると応援の気持ちがわいてくるものだ。
安田桃寧は「成長を見てほしい」と語った。杉浦琴音は「1位を目指します」と宣言した。ともにこのバトルの意味をよく分かっている。彼女たちは3戦目まで諦めることを知らない。
筆者採点:83

■2月12日(金)LeopAje
M1~3を見ただけでも前クールから修正してきたことが瞬時に理解できた。各メンバーの表情が生き生きしている。
自己紹介MCも各自のテンションが高い。
1クール目は5位だったこのグループ。MCでは石田優美が「力不足で反省してます。ごめんなさい」と頭を下げた。その結果を受けて話し合いが行われたようだが、それがいい方向に作用している。
語りたくなるような公演。個人的には、これがいい公演の定義だ。シンクロしているかどうかではない。かわいいかどうかでもない。ましてや技術でもない。それ以外のものを見せた時、人の心は動く。
この日のLeopAjeにはそれがあった。
筆者採点:87

すでに3クール目は始まっている。結果も大事だが、次は「バトルを通じて見えてきたもの」をレポートするつもりだ。
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