結成以来、チームN、チームM、チームBIIの3チームにわかれて劇場公演を行ってきたNMB48。メンバーの卒業や加入、そして組閣と呼ばれるチーム替えによって、チームのメンバーが変わることはあっても、その体制自体が変わることはなかった。
だが、今年に入り、グループのさらなる活性化を目指そうと、そのずっと続いてきた体制にもメスを入れた。これまでのチーム制を解体し、全体を6つのグループにわけ、ガチバトルを開催するというのだ。

 争う種目は「劇場公演」 「配信イベント」 「ファン投票」の3つ。中でも大きな配点が割かれているのが「劇場公演」だ。「ENTAME next」では、結成当初からAKB48グループを追い続けてきたライターの犬飼華氏が全6グループの劇場公演を視聴、1クール分をまとめて忖度なしでレポートする。今回は、2月15日(月)から20日(土)にかけて行われた3クールの公演のレポートをお送りする。

【写真】楽屋での打ち合わせで真剣な顔を魅せるメンバーなど、東由樹が撮影した劇場公演の写真【18点】

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 2クールを終えたNAMBATTLE。トップを走るのはW1N-C。2位にきゅんmartが続いている。といっても、各チームが僅差で並んでおり、パフォーマンス次第では2位以下でも逆転が可能な得点差。3クール目は各グループの思いが爆発した。

■2月15日(月)W1N-C

 1位をひた走るW1N-C。
この日も前半から飛ばしていく。3曲だけですさまじい汗の量だ。

 勢いだけではなく、細かな点まで抜かりはない。『まさかシンガポール』の「空」「日差し」という歌詞のところで、メンバーは天井を見る。空を想像しているわけだが、フィギュアスケートなら芸術点が入るポイントだ。

 リーダーの出口結菜は、「私たちなら素晴らしいパフォーマンスをお届けできる自信があります」と言い切った。1位を獲りたい。NMB48を最高のグループにしたい。ステージにはそんな情念が渦巻いていた。何より選曲とモチベーションが合致している(アンコール後に『フライングゲット』を入れなくて本当によかった)。なおかつ、振り付けは緻密な練習に裏打ちされている。繊細さも大胆さも備わっている。


 国内48の全メンバーはこの公演を観たほうがいい。

筆者採点:94
NMB48が“ナンバトル”で得た収穫とは? 劇場公演3クールを忖度なしで徹底レポート【写真18点】


■2月16日(火)みっくすじゅーす

 このグループにおいて見るべきポイントは、大きくいえばひとつしかない。それは、先輩として白間美瑠が後輩をどう指導し、一体感のある集団にまとめ上げるかという点だ。それは、2点をチェックすれば事足りる。ひとつは、7期生がいかに成長したか、だ。

 YouTubeに上がっている密着映像をチェックしたところ、苦悩する白間美瑠の姿が映されていた。1期生の白間は後輩を指導する立場にある。だが、教えたところですぐ上達するわけではない。後輩を親身に教えたこともない。そのあたりを悩んでいたわけだ。

 長い間、白間はグループのリーダーである必要がなかった。1期生のなかでも年下だったからだ。
ここ数年でシングルのセンターに立ったとしても、後輩への態度は大きく変わらなかった。

 だが、白間はこのNAMBATTLEで変わることを要求された。後進を指導する立場を経験する必要があった。他のグループでは、比較的キャリアの浅いメンバーがキャプテンを務めているが、みっくすじゅーすでは1期生の白間がキャプテン。彼女が重要なポジションに就いた理由はここにある。

 7期生はこの2週間で格段の進歩を遂げた。白間の指導が透けて見えた。

 もうひとつのチェックポイントは、梅山恋和の自覚をいかに引き出すか、だ。彼女の自覚が分かりやすい形で表現されること。それがこのグループの得点を大きく左右する。この日のMCで白間は、「ココナに強くなってほしかった」と話した。このグループの鍵は、恋和が握っている。
それは誰もが感じている。心の内側で燃えている時期はもう終わった。

 彼女は自覚を表に出すタイプではないことは承知しているが、悠長なことを言っている時期はもう過ぎている。気持ちをパフォーマンスに乗せることができれば、もっと点数は伸びるはずだ。

筆者採点:87
NMB48が“ナンバトル”で得た収穫とは? 劇場公演3クールを忖度なしで徹底レポート【写真18点】


■2月18日(木)LeopAje

 筆者はこのグループに1クール目で78点をつけた。理由は、「観客を公演に引き込む力がもうひとつ」とした。6グループ中5番目の評価だった。明確に悪いポイントが見当たるわけではなかったが、強烈な長所が見つけられなかったのだ。

 最初の公演が終わり、「リハーサル中にもメンバーの気持ちがまとまらなくて」(この日のMCでの横野すみれ)という状態だった。だが、2回目を迎える前にはグループがまとまったようだ。グループの力になることを各自が考え、実行に移す。これができるようになったLeopAjeは前向きになった。


 以前のチームは16人体制だったから、全員が前に出る必要はなかった。だが、今回の企画は8人が基本。少人数だから各メンバーにのしかかる負担が増えた。ステージ上でもレッスン場でもごまかしがきかない。自覚を身につけたという点で、NAMBATTLEは大きな意味があった。

 審査員の得点では暫定2位になった。だが、私としては、表情のチューニングが合っていないと感じる箇所が気になったため、どうしても90点台はつけられなかった。

筆者採点:85
NMB48が“ナンバトル”で得た収穫とは? 劇場公演3クールを忖度なしで徹底レポート【写真18点】


■2月19日(金)きゅんmart

 3クール目の初日でW1N-Cが高得点をたたき出し、首位を独走している。そんな状況だけに、この日のきゅんmartの出来がペナントレースの行方を大きく左右する。

 このグループの長所は、ステージに引き込む力の強さとMCだろう。

 視線を引きつけるには新人の力が必須だ。7期生・佐月愛果の成長ぶりは目覚ましい。
入って一年にも満たない新人が『冬将軍のリグレット』や『アイヲクレ』といった、表情にニュアンスが必要な曲を高いレベルでこなすとは……。

 MCは相変わらず6グループで一番リズムがいい。アドリブでいくらでも持っていけるのは流石だ。渋谷凪咲と小嶋花梨の力が光っているし、他のメンバーもそれに乗っかっていける。

 審査員の採点は4人とも90点台。トップのW1N-Cに2点差と迫ったが、牙城を崩すことはできなかった。しかし、メンバーは達成感を得ていた。個人的な好みでいえば、きゅんmartが一番である。

筆者採点:95
NMB48が“ナンバトル”で得た収穫とは? 劇場公演3クールを忖度なしで徹底レポート【写真18点】


■2月20日(土)ちょうぜつかわE

 1クール目の評でも書いたが、このグループの鍵を握るのは4人の7期生だ。キャリア半年の彼女たちが、いきなりクラス分けをされて、採点までされるのは酷としか言いようがないが、先輩のテクニックを吸収するチャンスだし、名前を売る絶好の機会でもある。

 2週前に筆者は、「光るものが一瞬でもあれば、それでいい」と書いた。たった2週間ではあるが、7期生はかなり伸びた。レッスンで食らいついてきたのが伝わってきた。もちろんムラはあるが、2週間でここまで成長したことは、今後のアイドル人生の糧になる。

 数年前、あるコンサートのレッスンでこんな場面を見たことがある。AKB48の柏木由紀は『未来の扉』を後輩に指導していた。「鳥が歌い」という歌詞があるのだが、そこで柏木は後輩たちにこう伝えた。

「ここはね、飛んでいる鳥を想像するの。その鳥はどこを飛んでいる? 何メートル上空にいる? その鳥を見るの。そうすると、会場が一気に広くなるの。それだけが正解じゃないけど、表現するってそういうことだと思うよ」

 一字一句正確に記憶はしていないが、アイドル道を極めた先輩はそのようなことを伝えていた。自分が歌詞の世界をまず想像できるかどうか。そうしないと、観ている者にその世界を想像させられない。そのようなことが言いたかったのだろう。

 その“観客に想像させる力”が、第1クールでのこのグループの課題だった。2週間後にはその点がかなり伸びていた。第1クールは77点としたが、今回以下のように採点したのは、その伸びを評価したからだ。これぞ、このバトルの意味だと思う。

筆者採点:86

■2月20日(土)FRONTIER

 MCで副キャプテンの安部若菜が話していたことが印象的だった。「個人で成長すれば、FRONTIERが成長すると思っていた」という。しかし、グループの得点は伸びなかった。スタッフから「グループ感がない」とのアドバイスを受けた。すると、安部は「グループで頑張らないといけない」ということに気づいていった。

 “個人とグループ”問題は、グループアイドルにとって常につきまとうものだ。輝いている個人が集結すれば、すごいグループになる。多くのアイドルからこの言葉を聞いてきた。だが、現実はそうではない。個人の魅力の集合体がグループの魅力ではない。だったら、グループを組む意味が見えなくなる。じゃあ、グループで何かをする意味って何だろう? この考えに安部は行き着いたのだろう。

 ここに到達できただけでも大きな収穫だった。それによって得点にも結びついたし、観客の心にも届いたからだ。

筆者採点:85

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 以上、3クール18公演が終了した。公式採点の結果、各クールとも1位はW1N-C、2位はきゅんmartだった。結果は数字によって順位がつけられたが、メンバーは数字以上の手応えを得たはずだ。

 決勝大会は3月2日、大阪・オリックス劇場で行われる。

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