【写真】メンバーの東由樹が撮影したナンバトル決勝大会の模様【13点】
この日のイベントはバトルだけでは終わらなかった。1期生の白間美瑠がエンディングでグループからの卒業を発表したのだ。突然の宣言にステージ上で泣きだす後輩もいた。
白間は次のようにスピーチした(以下、要約)。
「私、白間美瑠はNMB48を卒業します。1期生のみんなを見送ってから卒業しようと思っていました。残ってよかったなって思います。11年間がむしゃらに全力で走り続けてきて、後悔なくやりきった気持ちです。これからのNMB48はまだまだやっていけるな、まだまだ楽しませてくれるなとすごくすごく実感しました。私はNMB48が本当に大好きです。
その兆候はいくつかあった。
ひとつめは、白間自身が「最後の1期生」になりたかったということだ。昨年、こんな話を聞いた。吉田朱里の卒業について白間に取材した時のことだ。
白間「10年前、1期生では妹として入ってきて、最初のほうはダンスについていけなくて、ずっと泣いていて、お姉さんメンバーにいっぱい支えてもらっていた。そんな私が最後まで残る。そういうストーリーがいいなと思うんです。私が最後の1期生になろうと思っていました」
昨年12月、吉田がグループを去り、実際、1期生は白間を残すのみとなった。白間の描いていた展開になった途端、グループに激震が走った。
今年1月1日、 NMB48は3つあったチームを解体し、新たに抽選で6つのグループを結成。そのグループがパフォーマンスなどで競う「NAMBATTLE」という新機軸を打ち出した。昨年迎えた10周年をひとつの区切りとして、新次元に突入したわけだ。
白間は「みっくすじゅーす」に所属することになった。この8人グループは比較的新人が多いのが特徴で、当然キャリアは白間が一番上。一番のベテランに求められたのは、後輩の育成だった。
ふたつめの兆候は、ある映像にあった。NMB48がアップしているYouTubeの動画。そのなかに、「どうしてあげたらいいかわからへん」と後輩の指導に悩む白間の姿が映し出されていた。ダンスの先生であるAKIRA氏と白間が話している。白間はどう教えていいのかわからないと悩んでいた。
白間「絡む時は絡むけど、自分は自分という感じです。いいところがあれば、褒めますけどね」
後輩にしっかり向き合って教えるのは初めてだったのだろう。しかし、この時点でおそらく卒業を視野に入れていた白間は、このNAMBATTLEがグループへの最後の奉公だと考えたはずだ。
「みっくすじゅーす」の順位は思うようには伸びなかった。最後まで首位争いはできなかった。若手が多いのだから当然だ。しかし、白間の仕事は若手のモチベーションを引き上げることだった。
NAMBATTLEの3クール目が終了し、白間はYouTubeの密着映像でこう話した。
「点数は悔しいけど、目標の命がけで、全力で、悔いなくやるっていうのはみんなでできたと思うので。やり切ったって感じです」
自分ができることはやった。後輩たちもやる気を出してくれた。たしかにこのグループは大きく伸びた。順位は伸びなかったが、点数は伸びたことがそれを証明している。白間も手応えを感じていた。10年間学んできたことを後輩に託すことができた、と――。卒業する意志はこの時点ではっきりと固まったのではないか。
では、白間はこの先どのようにして生きていきたいのか。
卒業発表時のコメントでは、「パフォーマンスも女優も、いろいろ挑戦していきたい」と表明しているが、昨年の時点で白間は将来を考えると焦りを感じていた。
白間「NMB48に入って、10年経って。周りの子たちは社会人になって、自分で生きるためのお金を稼いでいます。
それを父は指摘した。すると、娘は反発した。何度もケンカになった。とはいえ、白間の考え方のベースを作ったのは父だ。白間は「気合い」や「魂」という言葉を好んで使うが、これらは父のボキャブラリーである。娘がアイドルになってから何年も、父は車で娘の送り迎えをした。娘が車から降りる間際、父はグータッチを求めた。父は「気合いや、気合い。わかったか?」「いいか、今日はさや姉(山本彩)に勝ってこい!」と仕事に向かう娘の背中を押すのが恒例だった。
白間はNMB48からも父のサポートからも独り立ちしようとしている。それが彼女にとって卒業することの意味だ。これから何になるのかは見守るしかない。
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