アサヒ飲料株式会社と株式会社トンボ鉛筆は9日、小学校4~6年生を対象とした両社協働での夏休み小学生セミナー『未来の海を豊かにするアクションを考えよう!』を、アサヒグループ本社ビル(東京・墨田区)にて開催した。
子どもたちにとっては夏休み真っ只中のこの日おこなわれた同セミナーは、両社のロングセラーブランドである国民的炭酸飲料「三ツ矢サイダー」や口紅型スティックのり「PiT(ピット)」をはじめとする文房具といった身近なものをきっかけに、楽しみながら“環境問題”に関心を持ってもらう機会を提供することを目的に企画したもの。

セミナーは、トンボ鉛筆 知財部・船生(ふにゅう)氏による、同社がおこなっている環境への取り組み紹介からスタート。これまで、さまざまな環境に配慮した文具を開発・販売してきた同社が昨年11月に発売開始したのが、役目を終えた漁網を再生利用した樹脂を使用したテープのり「ピットエアー 漁網リサイクル」。

廃棄漁網をめぐる問題に着目したトンボ鉛筆は、「使い終えた漁網を捨てるのではなく、回収・再利用して別の商品に生まれ変わらせるという循環をつくることが大切だと考えた」と経緯を説明。
子どもたちは実際に、「ピットエアー 漁網リサイクル」を手に取りながら、漁網が再生ナイロンとなって、テープのりのどのパーツ部分に生まれ変わっているのか、想像を巡らせる。
船生氏によると、上部ケース部分に使われているという。というのも、再生事業者が使用済みの漁網を回収・分別・洗浄していくわけだが、「再生樹脂自体、どうしても品質が均一ではないという難しさに加え、漁網の材料は空気中の水分を吸い込む性質があり曲がりやすいので、大きいパーツに使っています。また、回収した漁網は色がバラバラなので、商品に影響がないように濃い色のボディにしています」とその理由について言及。

また、そのケース部分の色には、海の環境に想いを馳せられるようにと深海をイメージしたディープブルーを採用。さらには、「見ていただくと、ボディには海の生きもののシルエットと海のイラストが入っています。こうしたデザインをあしらうことで、この文具を使う人たちに自然環境や海の生態系などを考えてもらえるきっかけになれば」と思いを子どもたちに向けて語った。
続いては、アサヒ飲料 マーケティング本部の宮本氏が、今年で141歳となる「三ツ矢サイダー」を主人公に、100年後の未来にたすきをつなぐべく同社が取り組んでいる「三ツ矢青空たすき」について、話を進めた。

三ツ矢サイダーをはじめ、ウィルキンソン、カルピスと100年以上も愛され続けているブランドを3つも展開しているアサヒ飲料。なかでも歴史のある三ツ矢サイダーが、いかに“水・香り・非加熱”にこだわって作られているかに加え、SDGsの「12.つくる責任、使う責任」と「13.気候変動に具体的な対策を」を引き合いに、環境のためにできることをどれだけ考え、実行してきたかを、宮本氏がわかりやすく解説していった。
例えば、現在、採用されているラベルは以前のものより短くなっているのだが、これにもちゃんとした理由が。パッと見、“ただ、ちょっとだけラベルが短くなっただけじゃん?”とスルーしがちかもしれないが、これにより何と年間50トンものPET樹脂使用量が削減に。その重さがパンダ約500頭分に相当することが伝えられると、驚きの表情を浮かべる子どもの姿もあり、「一人ひとりがこういうことに気をつけていくと、ものすごく大きな力になるんだなというのがわかっていただけるかなと思います」と話した。
社員一丸となって、環境のためにもっとできることはないかと日々考えているというアサヒ飲料。ラベルだけにとどまらず、2023年には、おいしさはそのままに、作り方を工夫することで、年間約100トンものCO2を削減。さらにその翌年、2024年には500ml入りのペットボトルを6.5mmほどサイズダウン。

宮本氏も「見た目では分からないぐらいで、実は私も手にしたときにはすぐ分からなかった」と言うぐらい、ほんの小さなサイズ変更ではあったものの、これによって商品の段ボールのサイズも小さくなったことで、運搬するためのトラック台数が年間20%削減できたという。
そして、宮本氏は「ここからは、皆さんにも協力してほしいこと」として“ボトルtoボトル”の取り組みの紹介も。アサヒ飲料は、2030年までにリサイクルPET100%を目指しており、使い終わったペットボトルをまたペットボトルに生まれ変わらせるためにも、「ポイ捨てすれば“ごみ”だけど、分別すれば“資源”になる。ぜひ、これを一緒にやっていきましょう!」と呼びかけた。
こうした飲料メーカーとしての取り組みに加え、“皆さんと一緒に楽しく、日本の自然と文化を守り、つないでいく活動”として「三ツ矢青空たすき」と銘打った新たな取り組みにも着手。海・森・畑・自然に寄り添う暮らしをテーマに体験を提供しており、自然豊かな地域で想いを持って活動している人たち“語り部(かたりべ)”から教わりながら体験できるようにと、今回のセミナーのような場づくりにも尽力していることに触れ、その語り部でもある、一般社団法人くらげれんごう 代表理事の山崎唯(やまさき・ゆい)氏にバトンをつないだ。

福岡で、“海であそび・海でまなび・海をまもる”をコンセプトに、「日本一ハードルの低いビーチクリーン」を開催しているほか、海プラをあしらったアクセサリーの作成、ごみ拾いでポイントが貯まるアプリ「YUIMAALU」を開発するなど、その活動は多岐にわたる山崎氏。
この日は、子どもたちに“海のごみ問題”について知ってもらうべく、「もっと知りたい海のこと&今すぐできる!目からウロコのエコアクション」と題して、トークを展開していった。
海のごみ問題として、山崎氏が掲げたのは「1.5億」「80」「2050」からなる3つのキーナンバーだ。1つ目の数字は、海洋プラスチックごみの総量“1.5億トン”のこと。そして2つ目の数字は、海洋ごみの“80%”は、私たちが暮らしているまちで発生したごみが川へとつたって海に流れ出たものであること。3つ目の数字は、“2050年”には海洋プラスチックの重量が海にいる魚を上回るという試算がされていることが山崎氏から告げられた。

続いて、対馬や石垣島の海岸の実際の様子を収めた動画や写真が紹介されたのだが、そこにはたくさんのごみが流れ着いているショッキングな光景が。

また、山崎氏の活動拠点でもある福岡県の福間海岸でのビーチの様子も。一見、きれいなビーチのようだが、しゃがんでみるとその砂浜には、マイクロプラスチックがちらほら。「ごみがないように見えるところでも、こんな小さなごみがたくさんある」と実際に海岸で拾い集めてきたごみを披露しつつ、子どもたちと“海ごみ”にまるわるクイズを楽しんだ。

三者三様の取り組みや活動を学んだあとは、オリジナル文房具をつくるワークショップ。これは、指定の用紙に子どもたちが絵を自由に描き、後日、その絵がテープのり「ピットエアー詰め替えタイプ」にプリントされ、世界にひとつだけの文具となって手元に届くというもの。

図鑑などを見ながら真剣な表情で下書きを進めていく子どもたち。

サンゴやウミガメ、クラゲやイルカなどを思い思いのタッチ、色づかいで描かれた絵を見るや、船生氏、宮本氏、山崎氏の3人皆、つい笑顔がこぼれ、「かわいい~♪」「素敵! 上手だね~」「これはシャチかな?」など、気さくに子どもたちと会話を楽しんでいた。

全員が絵を書き終わったあとは、各テーブルで今日の感想や書いた絵のアピールポイントなどを話し合い、子ども同士で交流を楽しむ場面も。なかには、「普段からマイバッグ、マイボトルを持つようにしているけど、もっといろんな“マイ〇〇”を増やしていきたい」と話している子もいて、大人である自分が頭の下がるような気持ちにさせられた(苦笑)。

そして最後は、環境のために“自分ができること”を考え、わたしの「たすき宣言」として発表。「ごみを分別して、まだ使えるものはリサイクルする」「ペットボトルをコンビニなどでちゃんとリサイクルして、ポイントに変える!!」「ワクチンと交換するために、学校やスーパーマーケットのペットボトルキャップの専用箱に入れる」「(まちでごみを見かけたら拾えるように)ごみ袋を持ち歩くようにする」など、それぞれの宣言に拍手をおくりあった。

ここでセミナーの時間はいっぱいとなり、「三ツ矢青空」「たすきー!」との掛け合いで、参加者みんなで三ツ矢サイダーを手に乾杯して締めくくった。

今回実施したセミナーを通して、トンボ鉛筆の担当者は「文房具は、老若男女が使うものなので、こうした身近なものについて知ってもらうことで、いろいろな行動につなげたり、語り部さんがおっしゃっていたように、(今日、見聞きし、体験したことを)周りの人に伝えて、その輪がさらに広がっていくと嬉しい」と力を込める。
一方、宮本氏も「私たちの商品や、やっていることはきっかけでしかないと思います。『三ツ矢サイダー』や今回ご協力いただいたトンボ鉛筆さんの『ピット』のテープのりは(子どもたちにも)とても身近なものなので、これらを見たときに“海のことを考えてみよう”とか“今日、あんなことを聞いたな”と思い出してもらえるようなツールになれば」と期待を寄せていた。