「ハンディファンが壊れたから、燃えないごみで捨てればいいか」――そんな軽い気持ちで捨てた小さな機器が、数億円規模の被害をもたらす火災を引き起こしているのをご存知ですか?
リチウムイオンバッテリーを内蔵したハンディファンや電動歯ブラシなどが、適切に分別されずに燃えないごみとして捨てられたことで、全国のごみ収集車やごみ処理施設で火災が多発しています。自治体では火災事故を防ぐため、回収したごみを作業員が目視してバッテリー内蔵機器を探し出していますが、日々多くのごみが出される状況だけに作業は大変で、人間だけに見落としは避けられないのが実情です。
この状況を受け、バッテリー内蔵機器を検出する装置をPFUが開発。X線でごみを透過した画像を撮影し、機器に内蔵しているリチウムイオンバッテリーの形状をAIが認識し、ごみに紛れている機器を探し出す仕組みです。ごみ袋に入れたままでもしっかり検出し、ほぼ100%という高い検出精度を誇っていました。検出には、ドキュメントスキャナーで培った画像認識技術が生かされているといいます。
ごみの山からバッテリー内蔵機器を目視で除去している
ごみとして捨てられたリチウムイオンバッテリー内蔵機器が火災を招くのは、ごみを圧縮する際に機器内部のバッテリーを損傷することで発火するため。ごみ収集車やごみ処理施設で火災が発生すると、復旧に何億円もの費用がかかるだけでなく、長期間ごみが処理できない事態にもつながるため、自治体にとっては正しく分別されずに捨てられるバッテリー内蔵機器が悩みの種となっています。
過去にごみ処理施設で火災が発生した東京都町田市は、スマホアプリを用意してバッテリー内蔵機器の正しい廃棄方法を啓蒙しているものの、いまだ不燃ごみとして捨てられているケースが後を絶たないといいます。
実際にごみ収集の現場を訪れると、スマホ、ハンディファン、電気シェーバー、携帯ゲーム機、ワイヤレスイヤホンなど、数多くのバッテリー内蔵機器が燃えないごみに紛れ込んでいました。作業員が目視で除去していますが、大量のごみを限られた時間でチェックする作業は過酷で、見落としのリスクもゼロではありません。手作業でごみをかき分ける際、ごみに紛れていた刃物などでけがをする恐れもあるそうです。
ドキュメントスキャナーの画像認識技術で隠れたバッテリーを検出
この危機的な状況を打開するため、ドキュメントスキャナー「ScanSnap」で知られるPFUが、X線画像から機器に内蔵されたリチウムイオンバッテリーを検出するAIエンジン「Raptor VISION」を開発。IHIが開発したX線透過撮影装置に、Raptor VISIONによるリチウムイオンバッテリーの検出機能を組み込んで、ごみ処理施設向けの装置を作りました。
バッテリー内蔵機器は、ハンディファンやスマホなど形状はさまざまでも、内部のリチウムイオンバッテリーは筒形や角型、パウチ型など、形状が限られています。Raptor VISIONは、X線で撮影した透過画像からリチウムイオンバッテリーの特徴的な形状をAIが検出する仕組み。最新の装置は第2世代で、縦横2方向からX線を照射して異なる角度からの画像を撮影できるように改良し、検出精度が向上したといいます。
実際に、作業員が目視でバッテリー内蔵機器を取り除いたあとのごみ袋をこの装置に通したところ、ハンディファンや電動歯ブラシ、小さなワイヤレスイヤホンなどの機器がいくつも発見されました。現状では、ほぼ100%に近い精度で発見できるといいます。
PFUの担当者によると、X線画像をもとにしたリチウムイオンバッテリーの検出には、ドキュメントスキャナーのOCR(光学式文字認識)で培った画像認識技術が生かされているそう。ScanSnapやfiシリーズなどのドキュメントスキャナーを長く手がけてきたPFUならでは、といった印象を受けました。収集したX線の画像データはクラウドサーバーに送信され、AI検出の精度を高めるための学習データとして活用するそうです。
老若男女を問わず、さまざまなリチウムイオンバッテリー内蔵機器を気軽に使うようになりました。この装置が全国の自治体に広まれば、リチウムイオンバッテリー原因の火災は大幅に減るでしょう。しかし、私たちも自治体が定める正しい方法で廃棄するよう心がけることが大切といえます。