旧市街にはアヤソフィア博物館やトプカプ宮殿、中東最大級の市場グランド・バザールなど、華やかな歴史ある観光スポットがたくさんありますが、それらの観光地から離れたこの地区は地元色が濃く、イスタンブールに暮らす人々の飾らない生活の様子を垣間見ることができる地区でもあります。
「バラットには昔はユダヤ人がたくさん住んでいたんだよ。」
「二階窓が張り出しになってる昔ながらの家がいまでも残ってるよ。」
「ユダヤ人が減ってからは、アナトリアから来た貧しい人が住むようになったんだ。」
イスタンブールに住む人たちから聞く、バラットに関する情報はこのような感じ。
1429年、イベリア半島に住むユダヤ人がフェルナンド2世の異端審問により国外追放され、オスマン帝国のベヤジット2世が彼らを受け入れバラットに定住させました。金融業や商業を得意とし、オスマン帝国時代の交易や銀行業は彼らに任されていた部分も大きかったのです。1894年の地震と火事以来、バラットの人口は減り、以降はアナトリアからイスタンブールに出稼ぎにきた貧困層が定住するようになりました。
実際にバラットを歩いていると、治安が悪いという噂も聞くけれど、そんな感じは全くせず、知人が話していた通り、二階の窓が張り出しになった家がたくさん残っており、レトロでどこか懐かしい雰囲気を醸し出していました。
「貧しい」「貧困層」というのは本当か?と思っていたとき、小学校1~2年生くらいの少女二人が前方から仲よさそうに歩いてきました。
どんどん距離が縮まり、ちょうどすれ違うあたりで、「Abla! Bir lira bir lira!!!」(お姉さん、1リラちょうだい!!)と、挨拶もせず人懐っこい笑顔で訴えかけてくるのです。「あぁ、こういうことか」と、暮らしの実態を身を持って実感した瞬間だったのです。
新市街には高層ビルが建ち並び、外資系のビルやホテル、ショッピングセンターがイスタンブールの大都会を形成しています。そこからほんの数キロ先の旧市街のバラットでは、1リラ(約22円)でもいいからほしいと懇願する少女がいるのです。ガイドブックには決して書かれていないこういった「格差」も含めて、現在のイスタンブールは成り立っているということを改めて実感したバラットでの一コマでした。
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