著者:秕タクヲ

プレミアリーグ開幕まで残り1ヶ月を切り、各チームがプレシーズンのトレーニングに入った。

昨シーズンのプレミアリーグはマンチェスターシティとリバプールのタイトル攻防戦や泥沼化したチャンピオンズリーグ出場権争いなど、見どころ満載だった。

今シーズンも例年通りビッグ6による「六つ巴」が大方の予想ではあるが、この常識はおそらく覆るのではないだろうかと私は密かに推測している。

理由は明白でビッグ6以外のチームでもチャンピオンズリーグ出場権に手をかける実力を兼ね備えているからである。もしかするとビッグ6の牙城を崩しに入るチームが現れるのではないかという期待も込めて、今回は「プレミアリーグ中堅クラブたち」にフォーカスを当て今シーズンの展望を紐解きたい。

【ビッグ6への下剋上】プレミア中堅クラブの今シーズン展望〜第1部〜

【ウェストハム】編集部注目度:★★★★☆
かつてマンチェスターシティでチームをまとめ上げたマヌエル・ペジェグリーニに今シーズンも乱気流ハマーズが託される格好となった。

中盤だけ切り取ると、ウェストハム・ユナイテッドの中盤には豪華メンバーが揃っている。今シーズンから加入するパブロ・フォルナルス、昨シーズンボランチ起用で頭角を表したデクラン・ライス、チーム一筋のベテランであるマーク・ノーブル、個性的なプレーを武器にするジャック・ウィルシャーとマヌエル・ランシーニなど、強豪にいてもおかしくないメンバーが名を連ねていることが特徴だ。そんな中盤をどう操るか、強豪に割って入るにはまずは最適解を導き出す必要があるだろう。うまくハマれば上位進出も夢じゃない。

その反面アンディ・キャロルとマルコ・アルナウトビッチといったターゲットマン不在を今シーズンはどうカバーするかという問題点に直面している。昨シーズンは彼らの前線でのタメがウェストハムの攻撃に大きく貢献していたことは試合を観ていても明らかだった。新たに背番号9を背負うことになったハビエル・エルナンデスがこれまでの系譜を引き継ぐのか、それとも新戦力として迎え入れたセバスティアン・ハラーをメインに置くのか。今後の動向にも注視していきたい。

【ビッグ6への下剋上】プレミア中堅クラブの今シーズン展望〜第1部〜

【レスター】編集部注目度:★★★★★

レスター・シティは大胆な若返りを図り、これまでとは違うチームに生まれ変わった印象が伺える。思えば昨シーズンのジェームズ・マディソンの加入はレスターにとって大きな出来事だったはずだ。ジェイミー・バーディとの相性は抜群でレスターの中心選手に上り詰めた。スタンフォードブリッジでチェルシーに勝利したのも彼らの良さが十分に発揮されての得点だった。今シーズンもこの2人は要注意人物になるだろう。

そんなホットラインに新たなオプションが加わることになる。アジョセ・ペレスだ。ペレスは昨シーズン、ニューカッスルでチームで最も多い12得点をマークし、今シーズンレスターへ加入することが決まった。またユーリ・ティーレマンスもモナコから完全移籍で獲得することが決まり、中盤の厚みは継続できることになった。この2つの移籍はレスターをさらに上のレベルへと押し上げるきっかけになるかもしれない。

ただ心配していることは、ハリー・マグワイアの去就である。現在マンチェスター・ユナイテッドへの移籍話が取り沙汰されており、本人もクラブに退団の意向を伝えたとのこと。

マグアイアの抜けるディフェンスラインをどのように埋めていくかは見どころになるだろう。

【ビッグ6への下剋上】プレミア中堅クラブの今シーズン展望〜第1部〜

【エバートン】編集部注目度:★★★★☆

アンドレ・ゴメスの慰留に成功したのはエバートンにとって吉報だった。昨シーズンバルセロナからローン移籍で加入し、瞬く間にチームの主軸としてエバートンの躍進に貢献した。イドリッサ・ゲイェとのバランスが絶妙で、攻守において今後も重要人物になることは間違いない。この恩恵を受ける形で、リシャルリソン、ギルフィ・シグルズソン、ベルナルジは攻撃態勢を維持することができ、シーズン終盤に見ることができた厚みのある攻撃を今シーズンは序盤から展開することができるだろう。

若手たちのさらなる躍動にも注目したい。2018年冬に加入したジェンク・トスンが結果を残せない中で、ドミニク・キャルバート=ルーウィンがマルコ・シウバの御眼鏡に適ったようだ。昨シーズン終盤は専らトップに彼を起用する試合が目立った。また交代オプションとしてピッチに送られるアデモラ・ルックマンもエバートンの攻撃にアクセントを加えることができ、俊敏性に富んだ突破に相手も手を焼くことになるはずだ。

ただ、クル・ズマのチェルシー帰還によりディフェンスラインに不安要素が伺える。そういった意味では、昨シーズン加入したジェリー・ミナにエバートンの今シーズンがかかっているのかもしれない。昨シーズンは一時期出場機会を得ていたものの、マルコ・シウバはマイケル・キーンとクル・ズマの2人をセンターバックに配置し、ミナはファーストチョイスではなかったことは明白だった。

的確なポジショニングができるようになればプレミアリーグにも順応できるはずだ。

【ビッグ6への下剋上】プレミア中堅クラブの今シーズン展望〜第1部〜

【ウルブス】編集部注目度:★★★☆☆

ウルブスの躍進は昨シーズンの注目ポイントの1つだった。歴代プレミアリーグ昇格チーム初年度順位の中で最高となる7位を記録しヨーロッパリーグの予選ラウンドへの進出が決まった。

昨シーズンと同様、ルベン・ネベス、ジョアン・モウチーニョを中心軸にして攻撃を展開することが予想されるだろう。またラウール・ヒメネスは昨シーズン、試合を重ねるに連れて成長を遂げた選手である。ペナルティエリア内で囲まれても股下を通してゴールを決めることに長けており、ゴールへの嗅覚は一般的なストライカーとの異質さを感じさせる。つい最近まで開催されていたゴールドカップでも5ゴール2アシストを記録し、メキシコの優勝に大きく貢献した。

プレミアリーグでも渡り合えることを大いに証明してみせたウルブスだが、今シーズンは昨シーズンと違いヨーロッパリーグの戦いを両立させなければならない。ビッグクラブでないチームにとってはかなりの負担になるのは昨シーズンのバーンリーを見ても明らかだ。特に昨シーズン非常に強固な守りを披露した、3センターバックの疲労が懸念される。基本的には、ウィリー・ボリー、コナー・コーディ、ライアン・ベネットの3銃士にロマン・サイスがバックアッパーで入る形でウルブスディフェンスが形成されたが、ここの手薄さは未だに拭えない状況だ。

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