2020年1月20日、レアル・マドリードはフラメンゴからMFヘイニエルの獲得を発表した。かつてミランやレアルでも活躍したブラジル代表のレジェンド、カカにプレーが似ていることから、母国のブラジルでは「ニュー・カカ」と呼ばれている選手だ。
レアルはヘイニエルの獲得に3000万ユーロ(約37億円)を支払ったという。ヨーロッパで活躍中のスーパースターの獲得であれば、それほど驚く金額ではない。しかし、彼はまだ18歳という若さで、プロデビュー(2019年7月31日)してから6ヶ月ほどしか経っていない。これには一か八かの賭けだと思っている人もいるだろう。
しかし、レアルが高額で若手選手を獲得するのは初めてではない。この数年は似たようなケースいくつかあって、ロス・ ガラクティコス (レアルの愛称)は、これから才能のある若手に力を入れるコンセプトで動いている印象が強い。

未来のレアルの宝物となるだろう若手選手たち
2017年5月。レアルはヘイニエルと同じくフラメンゴに所属していた16歳のFWヴィニシウス・ジュニオールを4500万ユーロ(約58億円)で獲得した(実際の移籍は18歳になってからの2018年7月)。これはブラジル国内で歴代2位の高額記録となった(1位はネイマール)。
また、約1年後の2018年6月には、ブラジルのサントスからヴィニシウスと同じ4500万ユーロ(約58億円)で、現在大活躍中のFWロドリゴ・ゴエスを獲得。
ヘイニエル、ヴィニシウス、ロドリゴ…。レアルはこの2年半で2000年代生まれの経験の浅いブラジル人選手に153億円も使っている。そして獲得してきた若手選手はこの3人の天才だけではない。
もちろん、現在レアルからマヨルカにレンタル移籍中の久保建英の獲得も忘れてはいけない。2019年7月、レアルに移籍した当初トップチームと練習する機会がたくさんあった久保だが、ジネディーヌ・ジダン監督は彼に対してこんな発言をした。「実に良い選手です。しっかりトレーニングもこなしているし、クオリティも素晴らしい。今後、間違いなくレアルにとって重要な選手となる」
その他にも、レアルの柱になっているMFフェデリコ・バルベルデ(21歳)、レンタル移籍先のレアル・ソシエダで大活躍中のMFマルティン・ウーデゴール(21歳)、スペイン2部レアル・オビエドへのレンタル移籍が発表されたばかりの若手GKアンドリー・ルニン…。
これら全ての選手は未来のレアルの宝物になるだろう。

現代に合わせたチーム作りのビジョン
今や、すでにサッカー界から認められたトップスターを獲得したいチームは、とんでもない金額を支払う必要がある時代となった。そして、そういった巨額の支払いを覚悟できるクラブは極めて少ない。
例えば、ユベントスは2018年夏に移籍金1億1700万ユーロ(約153億円)でレアルからクリスティアーノ・ロナウドを獲得した。また、レアルはその1年後にほぼ同じ金額(1億2000万ユーロ・約145億円)で、チェルシーのエデン・アザールをスペインに呼んだ。
この獲得金額は、昔では考えられない数字です(ちなみに2010年までのサッカー史上最高額は8000万ポンド・約118億円で、2009年にロナウドがマンチェスター・ユナイテッドからレアルに移籍したときの金額)。
さらに、その上を行くクラブも存在する。
現代のサッカー界の経済的な状況においては、トップスターの獲得より才能のある若手を育てることに勝負をかける方が賢明かもしれません。バルセロナのように巨大なアカデミーを展開して育成に力を入れるクラブもある。そう考えると、バルサほどのアカデミーを持っていないレアルの、ヘイニエル、ヴィニシウス、ロドリゴの獲得(合わせて153億円)は納得がいく。

リスクも大きいが、レアルは百も承知
若手にかけることには大きなリスクもある。この数年のレアルが割とコストをかけて獲得するも、化けなかった選手は少なくない。
例えば、レアルBに所属していたパラグアイ代表FWセルヒオ・ディアス(現在21歳)は、マンチェスター・シティのスターであるセルヒオ・アグエロにプレーが似ているとして期待されていたが、未だに良い活躍を見せられていない。現在はパラグアイのセロ・ポルテーニョにレンタル移籍中だ。
同じくレアルBでプレーしていたオランダ人のMFミンク・ピーターズは、アヤックスのユース所属時にはマタイス・デ・リフト(現在ユーベ所属)より目立つと言われていたが、現在はあまり知られていないセルビアのプロクラブ、チュカリチュキでプレーすることになった。
しかし、こんなリスクもあることは、レアルは百も承知だろう。それでも若手にかけようとしていて、それが正しい道だと信じているのだ…。これからのレアルがどんなチームになっていくのかは非常に興味深いことです。