現代サッカーにおいては勝利することが求められ、数多くの監督が独自のプランを生み出してきた。監督はより複雑になった戦略に自身の選手たちを落とし込み、ゲームに勝利することを目指している。

今回はそんな現代サッカーにおけるイタリア人監督4選の、経歴と特徴を紹介する。

現代サッカーで活躍を続ける現役イタリア人監督4選!

コンテ

主な監督歴:ユベントス、チェルシー、インテル

現在インテルで指揮を採るアントニオ・コンテ監督は、2006/2007シーズンにセリエBのアレッツォで監督キャリアをスタートさせた。しかし、アレッツォでは結果を残すことが出来ず成績不振により辞任。

その後バーリへと移籍した同監督は、2008/2009シーズンにクラブをセリエA昇格へと導いた。この活躍により現役時代の古巣であるユベントスへの移籍が噂されたが、実現することはなかった。

その後はアタランタやシエナで監督を務め、2011年にユベントスの監督に就任。シーズンを通して無敗を達成し、クラブを2005/2006シーズン(正式にはカルチョポリにより剥奪)以来のセリエA優勝へと導いた。ユベントスではセリエA3連覇を達成。

2014年にイタリア代表監督に就任すると、2016年のEUROへと出場。比較的タレントに恵まれなかった同国代表を指揮し、大会3連覇を目指すスペイン代表を撃破。ドイツ代表にPK戦の末敗れたものの、チームをベスト8進出に導いた。

2016年にはチェルシーの監督へと就任。前シーズンにプレミアリーグ10位と低迷したクラブを見事に立て直し、2シーズンぶりの優勝を果たした。

コンテ監督は3バックを基本とし、選手たちにハードワークを求める「闘将」として有名だ。相手に支配される展開においても常にハードワークを求め、勝利に導いてきた。特に元イタリア代表MFエマヌエル・ジャッケリーニなどへの信頼は厚く、2016年のEUROではFWにエデルとグラツィアーノ・ペッレの2トップを採用。カウンターを中心にスペイン代表などの強豪国を撃破し、快進撃を演じた。

現代サッカーで活躍を続ける現役イタリア人監督4選!

アッレグリ

主な監督歴:ミラン、ユベントス

2004年にアグリアネーゼで監督キャリアをスタートさせたマッシミリアーノ・アッレグリ監督。2007年に就任したセリエCのサッスオーロでは優勝を果たし、クラブをセリエB昇格へと導いた。2008年にはカリアリへと移籍し、初のセリエAを経験。9位という好成績を収め、年間最優秀監督にも選出された。

2010年にはミランの監督に就任。同シーズンに自身初のセリエA優勝を達成した。2014年にはユベントスの監督に就任。当初はミラン時代の終盤の成績不振などの影響もあり批判されたものの、4試合を残してユベントスのセリエA4連覇を達成。さらに同クラブの20年ぶりのコッパ・イタリア優勝を達成した。

また、チャンピオンズリーグ ではユベントスを12年ぶりの決勝へと導いた。2019年にユベントスを退任するまで同クラブで5連覇を達成しているが、チャンピオンズリーグ での優勝を果たすことが出来ず、ユベントスでのキャリアに終止符を打った。

アッレグリ監督は、ミラン時代にはイタリア代表FWステファン・エル・シャーラウィ、ユベントス時代にはウルグアイ代表MFロドリゴ・ベンタンクール、イタリア代表FWモイーズ・キーンなどの若手を積極的に起用し、その才能を開花させてきた。

また、当時センターフォワードとして活躍していたクロアチア代表FWマリオ・マンジュキッチの献身性を活かすためウイングへ、コロンビア代表MFファン・クアドラードをサイドバックへとコンバートするなど、積極的な変革も起こしてきている。試合に応じて3バックと4バックを使い分けるなど、柔軟な姿勢も特徴の1つと言えるだろう。

現代サッカーで活躍を続ける現役イタリア人監督4選!

サッリ

主な監督歴:ナポリ、チェルシー、ユベントス

今シーズン、ユベントスの監督に招へいされたマウリツィオ・サッリ監督。彼の実力で這い上がってきたともいえる経歴はあまりにも有名だろう。現役時代はイタリアのアマチュアリーグでプレーし、引退後は銀行に就職している。

31歳の時、銀行員として働きながらも9部リーグを戦うクラブで監督としてのキャリアを開始。率いたクラブを毎年のように昇格させるなどしてイタリアサッカー界で注目を集めるようになった。

そして40歳にして銀行員を辞め、サッカー監督としてのキャリアに専念。すると2年後には率いていたアマチュアチームをプロリーグであるセリエC2(4部)へと昇格させ、監督としてのキャリア12年目でプロカテゴリーを指揮することとなった。2005年にはパリ・サンジェルマンのイタリア代表MFマルコ・ベッラッティらを輩出してきたセリエBのペスカーラで監督を務めることに。

ただ、2012年にセリエBエンポリの監督に就任するまでの7年間はセリエBとセリエCのクラブを行き来するようになり、思うようなステップアップを果たすことができなかった。一度監督としての停滞期を味わったサッリ監督だったが、エンポリでのファーストシーズンではアルバニア代表DFエルセイド・ヒサイの才能を18歳にして開花させるなど、チームを昇格プレーオフまで導く活躍を見せた。

また、2シーズン目には現ユベントスのイタリア代表DFダニエレ・ルガーニやナポリのポルトガル代表DFマリオ・ルイなどといった若手選手を積極的に起用し、2位でシーズンをフィニッシュ。セリエA昇格を果たしている。

2015年にはついにナポリの監督に就任。チェルシーへと移籍するまでの3シーズンでイタリア代表MFジョルジーニョを中心としたフットボールを展開し、「世界一美しいサッカー」として賞賛を集めた。

2018年にはキャリア史上初の海外クラブ、チェルシーの監督に就任。プレミアリーグで圧倒的な記録を残したマンチェスター・シティとリバプールに続き、3位でプレミアリーグをフィニッシュ。またヨーロッパリーグを制覇したにもかかわらず、サッリボールはプレミアではあまり評価されず、1シーズンでチェルシーの監督を退任している。

サッリ監督の特徴といえば「サッリボール」といわれるパスサッカーだろう。少ないタッチ数のショートパスを多用し、相手DFのマークをずらし続けるサッカーは、アンカーを務めるイタリア代表MFジョルジーニョを中心に展開された。アンカーにマエストロといわれるパサータイプの選手を配置するのはセリエAでよくみられる1つの特徴ではあるが、チェルシーのサポーターにははあまり好まれなかったようだ。

2022年までの3年契約でユベントス監督に就任したサッリ監督。この3年間で「サッリボール」をユベントスに落とし込むことができるのだろうか。今後も注目が集まることになるだろう。

現代サッカーで活躍を続ける現役イタリア人監督4選!

ラニエリ

主な監督歴:バレンシア、チェルシー、アトレティコ・マドリード、ナポリ、インテル、ユベントス、ローマ、レスター・シティ

上記3人の監督に比べ、圧倒的な経験値を持つのがクラウディオ・ラニエリ監督と言えよう。1986年にイタリアのラメーツィアで監督キャリアをスタートさせたラニエリ監督は、1988年に就任したセリエC1(3部)のカリアリをセリエAまで昇格させ、初のトップリーグを経験する。

カリアリでの活躍が評価されたラニエリ監督は、1991年にはナポリの監督に就任。イタリアのレジェンドであるジャンフランコ・ゾラなどの才能を発掘した。1993-94シーズン、セリエBへと降格したフィオレンティーナに就任すると1シーズンで再度昇格させ、1996年にはコッパ・イタリアで優勝を果たした。

その後はバレンシアやアトレティコ・マドリード、チェルシーといった海外クラブで活躍。時にチェルシー時代には現チェルシー監督のフランク・ランパードを獲得し、元イングランド代表DFジョン・テリーを抜擢するなど多くの才能を開花させた。

2007年にはパルマの監督に就任し、イタリアへと復帰。18位に低迷していたクラブを12位まで押し上げた。

さらに同年、カルチョポリによってセリエBでのシーズンを余儀なくされたユベントスのセリエA復帰シーズンにユベントスの監督へと就任。セリエA復帰ファーストシーズンの同クラブをセリエA3位へと導き、チャンピオンズリーグ出場権を獲得した。

その後、ローマやインテルといった国内チーム、モナコとギリシャ代表監督を務めたのち、2015年にレスター・シティの監督へと就任。日本代表FW岡崎慎司やイングランド代表FWジェイミー・バーディー、現チェルシーのフランス代表MFエンゴロ・カンテらを起用し堅守速攻のサッカーを展開。クラブを創立133年目にして初のプレミアリーグ優勝へと導き、「ミラクル・レスター」の立役者となった。その後はナントやフラム、ローマの監督を務め、現在は日本代表DF吉田麻也も在籍するサンプドリアの監督を務めている。

ラニエリ監督は「アッジュスタトーレ(修理屋)」という愛称で親しまれているように、これまでいくつものクラブの立て直しに貢献してきた。そのキャリアで特に有名なのは「ミラクル・レスター」であろう。前シーズンでは残留争いを演じたクラブをうまくまとめ、クラブに初優勝をもたらした。

また、ローマでの2018-19シーズン、元イタリア代表MFダニエレ・デ・ロッシの退団試合でも指揮を執り、涙を流したシーンは記憶にも新しい。

編集部おすすめ